田中秀臣 『デフレ不況』 ( p.72 ) 一九九〇年代の日本においては、不況脱出のために大規模な財政出動が数度にわたって試みられました。しかしそれらの財政政策の効果は限定的なものに終わりました。 その理由をバーナンキは「リカードの等価命題」によって説明しています。 政府が赤字国債発行による財政政策を行うと、財政赤字を懸念する国民は、現在の支出増によって将来の増税を避けられないものと考える。そうなると、たとえ減税や補助金などによって名目所得が一時的に増えても、それを将来の増税に備えて貯蓄してしまい、現時点の消費に回さなくなる。 これが「リカードの等価命題」です。 いくら財政支出を増やしても、国民が財政への不安から貯蓄性向を高めてしまえば、乗数 (波及) 効果による総需要の底上げは限定されてしまい、経済全体としてはかえって消費が減って、総需要が落ちてしまう恐れさえあるのです。 日本の場合、こ