以前わたしは、マキシミリアン・フォートのリビア戦争についての著作を紹介した際、虚偽の情報が情報産業やソーシャル・メディアにおいて相互かつ無批判に転送されていくことで、あたかも真実であるかのようにとらえられていくという、「引用のキャッチボールを通じた疑似情報のロンダリング」が起こっていることについて述べたことがある。マネー・ロンダリングという言葉があるから、「情報ロンダリング」という表現も成立するかもしれないと使ってみたものであるが、最近では学術の世界においても似たような現象が見受けられる。情報産業やソーシャル・メディアを通じて、まがい物が大層なものとして流通していくという点では同じであるが、学術というものそれ自体が高い権威を背負っており、権威を補強する数多くの公的な賞も存在していることから、まがい物の「研究」によって虚偽が定着していくとなれば、単純な「情報ロンダリング」以上の悪影響をもたら