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組み始めてみると、あっと驚く彫刻やギミックが洪水のように襲ってきます。複雑なリンク機構で開閉するエンジンカバーや長大な大砲。いまとは設計製造のテクニックも全然違う時代のプラモですから、少々合いが悪いところもあります。でもそれをそのまま楽しんだっていいじゃないかと思えるようになりました。こうしてみんなが箱の中身を知って、興味を持ってくれればラッキー。オレのためのプラモだし、みんなが組んでみたいと思ってくれたら倍嬉しい。 このキット、ストレートに組み上げるとかなりお行儀の良い姿勢になります。膝や足首には関節機構が入っているけど、脚がハの字に開く機構もないから、常に「キヲツケ」の姿勢になってしまう。腕(と言っていいのかどうか)もプラスチックの軸を穴に差し込むだけの設計なので、デッカい3連ミサイルランチャーも放っておくとダランと下がって地面にぶつかります。オレが見たいのはパッケージのようにどっしり
2019年、インディアナポリス。ロールス・ロイスのオフィスのエントランスにフラフラと吸い込まれたオレとフミテシは、そこがかつてのアリソン・エンジン本社であったことを知る。数々の航空機用エンジンを作ったアリソンは1995年にロールス・ロイスに買収され、いまでは同社のコレクションホールにその痕跡を残すのみだ。 巨大なホールに横倒しに置かれた数々のエンジンのなかで、ひとつだけ垂直に屹立する巨大な洗濯槽のような物体にオレたちは圧倒された。F-35Bの短距離離陸・垂直着陸を可能にするリフトファンの上には天面が見えるように鏡が設置されていて、内部構造が分かるようカットされたプラモデルも空中に浮かんでいた。 イタレリのF-35Bは、あのカットモデルの思い出をぎゅぎゅっと小さくしたようなプラモデルだ。日本国内ではタミヤが1/72スケールのスタンダードシリーズに模様替えして流通させているため、店頭でも比較的
ミニ四駆を塗りたい。今の私はとにかくミニ四駆を塗りたいのだ。むちゃんこカッコいいフィギュア『少女発動機』を見ていたら、同じくAF_KURO氏がデザインしたレイザーバックを落ち着いたグレーと差し色のコンビネーションでカツーンと仕上げたくなってしまったのである。早速レイザーバックを買ってきたのだが、ここではたと手が止まる。さてはこの緑のパーツ、普通のプラスチックじゃないな?
イタレリのF-35Bを作っている。このキレキレのごちゃごちゃした脚収納庫や爆弾倉が最高にイカす。飛行機全体はグレーだからプラスチックのままでもいいとして、ここを実物通り白く塗りたい。アメリカのジェット戦闘機だとだいたいこういう機体の内側は白だね。白を塗るのはムズい。このギザギザしたフチに合わせてマスキング……したくないよね。大変だもん。 もしかしてマジックリンでイケるんじゃないですか、飛行機模型も。つまり「水性アクリル塗料はマジックリンで落ちる」というメソッドを応用するのである。ガンプラでは使っている人を見たことがあるけど、飛行機模型でやってる人は(俺は)まだ見たことがない。レッツチャレンジ。 とりあえずタミヤアクリルの白をエアブラシでガーッと吹く。当然爆弾倉や脚収納庫のまわりにも白がはみ出す。飛沫も飛ぶ。塗り分け失敗重大局面である。しかし私にはキッチンマジックリンがある。無敵だ。ちなみに
ゴジラというモンスターを最初にプラモデル化したのは、やはりオーロラだった。 いまとなっては奇異なことに思われるだろうが、ゴジラはフランケンシュタインやドラキュラ、狼男らと同じユニバーサル・モンスターズの人気ラインナップに、キングコングと同時に加えられた。東宝制作の『キングコング対ゴジラ』のアメリカにおける配給権をユニバーサルが持っており、オーロラとの提携関係を思えばそれは当然のなりゆきであった。オーロラがとにかくどんどん目新しいモンスターをラインナップに追加しなければならないほど、ユニバーサル・ホラー映画のモンスター・シリーズは人気があった。日に8,000個の24時間フルタイム生産は尋常ではない。 >ホビコレ ポーラライツ ゴジラゴーカート こうした一方で、アメリカのホビーはもうひとつ、いわゆるアメリカンカープラモの大人気が加速していたのだった。自動車メーカーの販売促進用モデルをパーツ状態
最近のマツダ車の赤はとてもいい色だ。公道ですれ違うたびにそう思う。天気によって明るくも暗くも見えるような、深みのある上品な赤。「ソウルレッドクリスタルメタリック」という色らしい。長くてカッコいい名前だ。 マツダのblogを見るとどうやら重要なのは”研ぎ”で、下地の美しさが塗装面の美しさに直結している様子。マツダ社が様々な試行錯誤を繰り返し、量産化に成功させた「匠塗」という色の一つなのだという。 ちょうど最近、家の車を買い替えようという話になり、私は妻に「マツダ車の赤がいいです!」と進言してみた。妻は「う~ん、白がいいです!」とのこと。普段メインで使う妻の意見は尊重しなければならない。仕方ない。しかし諦めきれない。そこで私はその無念をプラモデルにぶつけることにした。受け止めてほしい、プラモデル。
1927年にドイツで生まれた映画『メトロポリス』を知らなくても、その世界観と女性型アンドロイドの造形が現在に至るまであらゆるところで大きな影響を及ぼしていることは理解できるはずだ。『スターウォーズ』のC-3POはもちろんのこと、マドンナ、QUEEN、KRAFTWERKといったアーティストがインスパイアされ、数々の作品を残しているし、階級社会の孕む矛盾、意識の在り処、人の手で作り出された実在しないアイドル……というスペキュラティブなテーマも高い普遍性を持っている。 優美な曲線で女性の身体を模したアンドロイドは、うっとりするような金色のプラスチックに分解されて収まっている。映画で使用されたプロップはすでに焼失しているし、映画のオリジナルフィルムも断片的にしか残らず、現在は不完全な形でしか観ることができない。しかし多くの人がフィルムの中に見出したマリア(の素体となるアンドロイド)の美は語り継がれ
海洋堂から発売されるARTPLAの四天王像シリーズは、大きさこそ違えど同社から過去発売された「カプセルQミュージアム 日本の至宝 仏像立体図録3 威容の四天王編」と見た感じほとんど同じ造形。その時はこの出で立ちの像は「広目天」という名前で売られていたのですが、プラモになったら名前が変わってしまっている。そういえば、今年の静岡ホビーショーで並んでいたときもこの製品のネームプレートは広目天でした。なんでいきなり名前が変わった? ▲耳が別パーツなのおもしろい! ▲頭部が前後割りで、耳の造形だけ左右方向から深くキレイに彫刻するパーツ構成なんすね! 「すわ、開発の過程で製品名がごっちゃになってしまったのか?果たしてそんなことあるのか?」なんて考えていたら、詳しい人からメッセージが。「このプラモの造形のイメージソースになっていると思しき興福寺の四天王像って、じつはここ数年で名前が入れ替わったんですよ」
このプラモの本体は説明書とは別にわざわざ入れてある『”現存古生物”恐竜論 トリケラトプス編』という12ページの冊子です。なんせ裏表紙に「これの中身はめっちゃ大事なのでインターネットに載せたらあかんで」って書いてあるんだもん。そんなプラモの説明書あんまり見たことないっすよね。 「いやいや、恐竜についての知識なんてオープンソースでしょパブリックドメインでしょ……」と思ったらさにあらず。やっぱり「恐竜がどういう生き物だったのか」という研究の成果って、時代ごとにどんどん更新されています。とくにトリケラトプスとその仲間(角竜という種類)はバリエーションがむっちゃあって、どれが同一の種類なのかもあんまり良くわかってないとか、いろんな学説の中から確からしいものが少しずつ合意されたりひっくり返されたりして、まさに「現在進行形」なんです。 読み始めたらわかるんですが、すっげえ真面目で、子供向けに簡単にしよう
▲2022年5月に開催された静岡ホビーショーでも話題となったエアテックスのウォーターカーテン式の塗装ブース「ウォーターブースNiagara」のサンプルがnippperにも届いた! 工業製品の工場などで活用されているウォーターブースを模型サイズにして世に発表したエアテックスの「ウォーターブース Niagara」。5月の静岡ホビーショーでの発表は多くの人に驚きを与え、nippperの公式ツイッターでのホビーショー速報の中でも大変盛り上がりを見せたアイテムです。
もっとも大きいパーツは胴体後半部。真ん中のはDVD(12cmディスク)だが、いくらなんでも大きすぎるだろう。しかし大きいプラモを買って「大きい!」と叫んでいてもしょうがない。これから登る山の大きさが見えるのは最初だけ。歩を進めるうちに山頂は見えなくなり、登山道の小石や草花へと視界は移っていく。 上の完成見本写真はボーダーモデルfbページより拝借した。つくづく、デカい模型は損だ。なぜならこうして組み立てられ、うまく塗装され、写真に収まってしまえばサイズなど伝わらない。逆に言えば、「デカい模型のデカさ」は、手に入れた人だけが味わうことのできる体験なのだと思う。 ▲主翼の外側だけで巨大なトマホークステーキほどの大きさがある。 ここまでの写真で薄々気づいていた人も多いかもしれない。このプラモは機体表面の外板が凸凹している様子を表現している。外板を機体内部の桁に留めているリベットは凸。ほとんどの飛行
なんてことは杞憂で、タミヤのRCカーはミニ四駆化される際に名前の末尾に「Jr.」をつける慣習がある。今回発売の「スーパーアバンテJr.」も、その習わしのおかげで既存ラインナップの「スーパーアバンテ」と区別がついてめでたしめでたし……。と思いたいのだけれども、そうもいかない…まだまだ不公平だ!スーパーアバンテJr.はずるい!スーパーアバンテ(1995)がかわいそうだ! ▲ミニ四駆からRCモデルにスケールアップした、通常とは逆パターンの例「エアロアバンテ」。ミニ四駆とRCで全く同じ名前。 何がどう不公平なのかというと、もうひとつ説明を足さなければならない。先述の通りRCカーを元にミニ四駆化するマシンは末尾に「Jr.」をつける、最初からミニ四駆としてデザインされたマシンの末尾には「Jr.」はつけない。ここまでの慣習についてはもう大丈夫だね? ところが、逆にミニ四駆を元にRC化した場合に末尾に何某
▲かっこよすぎる5人組。タミヤ最新フィギュアセットです。 54年の歴史を誇るタミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ最新作に「アメリカ歩兵偵察セット」が登場。こいつはマジですごい。オレは戦車模型作らないから……とか、フィギュアは塗るのが大変だから……とか言ってる場合じゃない。上の写真を見れば分かるとおり、もうなんかリアルすぎてちょっと怖いくらいの完成度なのだ。組んでそのまま置いといてもいきなり動き出しそうである。それくらい自然で、生き生きしている。まず組んで机の上に置こう。ずーっと見ていられる。色が付いてるとか付いてないとかはこのさい脇に置いといていい。人間が小さくなっているってことが、そもそも面白すぎるのだ。 調べてみたら本シリーズで発売されたアメリカ人のチームは「アメリカ戦車兵セット (ヨーロッパ戦線)」からじつに7年ぶり。戦車兵じゃなくて歩兵で言うと「アメリカ歩兵 攻撃セット」
エアブラシといえばプラモの塗装に導入したいけど躊躇する道具の筆頭。しかし近年ではバッテリーやコンプレッサーの小型化、高性能化が進み、缶スプレーくらいの大きさですべてが一体式にまとめられたタイプの商品がモリモリと増殖し、わりと手を出しやすくなりました。今回はRAYWOODの新型機、DELTA RS-1がかなりユニークな特徴を持っているので紹介します。 USB充電式の一体型エアブラシシステムにおいて、革新的だと言えるのがこのバッテリー交換システムであります。コンプレッサー下部にちょうどバッテリーの収まる空洞があり、ここにスチャッとバッテリーを差し込めば塗装準備完了。この動き、クセになります。 また、電池残量もパーセンテージ表示がついており、動作中もLEDで残量を光ってお知らせ。連続して塗装をしたい場合に予備バッテリーを用意することもできますし、将来的に充電容量が低下しても本体ごと廃棄せずにバッ
▲2022年5月静岡ホビーショー。レーサーミニ四駆最新作(この時点で)ミニ四駆スーパーアバンテの展示。 レーサーミニ四駆シリーズの101作目「スーパーアバンテJr.」が発売されました。ミニ四駆も40周年を迎えるくらいの歴史を刻んでいるから、現役のミニ四駆ユーザーでも「アバンテ」の名前に特別さを感じない世代の方が多くなっていても不思議じゃない。今の若いミニ四駆ユーザーにも「昔、いちばん人気だったんでしょう?」ってくらいには「知識として知ってる」程度のイメージで捉えられている気がします。 自分は1988〜1990年のミニ四駆第1次ブームの世代。この世代にとってアバンテJr.は特別なマシンです。今回は自分自身の回顧を絡めて、ここ10年くらいの雑誌の記事で触れられる「当時、大人気でした」以上の解像度で初代アバンテJr.の「特別さ」を語ってみたい。 ▲「アバンテJr.30周年スペシャル」。ミニ四駆の
私には特撮好きの弟がいて、先日帰省した際、久しぶりに話をして盛り上がった。映画『シン・ウルトラマン』の話だ。私も弟も子供の頃はどちらかというと無口で、会話の少ない兄弟だったのだが、アニメや特撮の話題だけはお互い饒舌になる。距離感の程よい友達のようでもある。 止め処なく話は流れていくのだが、2人の話題の中心は原典との差異だ。特に、ジェットビートルの不在はどうやらお互いにかなり気になるポイントだったようだ。それらしい理由は幾つか思いつくが、それらは憶測の域を出ず、次回作でのアンサーを待とう──、という結論で2人は議論を終え、私は実家を後にした。 2022年5月13日『シン・ウルトラマン』が公開されたわずか2週間後、映画『トップガン マーヴェリック』が満を持して公開。行った。見た。聴いた。飛び交うジェットエンジンの大轟音。肉体が耐えられるかどうかというGの表現、スピード感。孔雀の尾のように美しく
オレが写り込んでいる!もはや車のボディじゃなくて鏡面の向う側にあるカメラにピントが合っているッ!そう、これはカーモデルのボディで、なんとメッキパーツじゃない。プラスチックの地に下処理も何もせず、プシュッと吹いただけで人類はテラテラのクロームメッキみたいな質感を手に入れられるようになったのだ。その名もSHOW UPがリリースした「テラクローム」である。
構造はかんたん。タンクに水を入れて逆さまにセットするだけ。逆さまにした瞬間にタンク内の水が川を通って左の池に貯まる。大気圧によって池が満タンになると水の流れがストップする。パスカルがいなければ家が水浸しになってしまうところだった。物理学は最高。 水を排出したいときはボタンを押すと池の底にあるシリコン製の弁がわずかに下がり、スキマから水が排出される。ただそれだけなんだけど、これがめっぽう楽しい。 ▲シタデルカラーのブルーを筆塗り! ▲すかさず筆を池に突っ込んで洗う!洗濯板みたいなギザギザが筆の中の塗料を掻き出すぞ! ▲ボタンを押せば濁り水が排出され、また池が満タンになるまできれいな水がタンクから補充される! ▲あっという間に筆も水もきれいになる!最高〜! マグカップや筆洗を用意しても、少しの塗料で水はどんどん濁っていく。次の色を塗るときに少しだけ色が混ざって汚くなる……というのは小学校の図画
ツヤのある塗料からツヤを消すのは簡単だけど、ツヤ消しの塗料をツヤありにするのは難しい。 この一方通行に気づいた塗料メーカーが、最近ぞくぞくと光沢塗料を送り出している。 かつて半ツヤ・ツヤ消しと相場の決まっていた色たちも、いまガラリとその印象を変えている。 これは輝きはじめたプラモ用塗料たちの物語──。 第一夜はガイアノーツの「ダグラムカラー CB-14 ライトカーキ」である。 ▲使用シーンには「ブロックヘッドXネブラ対応型の本体(腕部、腹部、大腿部)の薄い方のカーキ色です」とある。 ミリタリーカラーを光沢で出すなんて酔狂だと思った。 今はとても反省している。 伝統的なタンニンなめしという手法で加工されたナチュラルな革の色をタン(Tan)と表現する人はそこそこいるだろうが、「オレンジ」と喝破できる人はおそらくもっと少数で、きっと画家かなにかだろう。画家はあいまいな色を、誰もが知っているわかり
タミヤのでっかいF1シリーズのなかでも鮮やかなホワイトとイエローのカラーリングで「マシンのことは知らないけれど。いつか作りたい!」と思っていたマシン、ルノーRE-20です。このたびは再販おめでとうございますそしてありがとうという気持ち。 さて、なぜ今まで「作りたい!」からの「すぐ作ろう!」にならなかったのかというと、いちばん大きなボディパーツに大胆な塗り分け指示があるから。上の写真で見える「うっすら入ったスジ彫り」を手がかりにして、曲面に対して曲線が走る塗り分けを何らかの方法で攻略する必要があります。パイセンたちのいろんな製作記を読んでみましたが、誰も具体的な方法を書いていないのでずっと悩んでた。でもやるっきゃない。やってみよう。
海上コンテナ大好きマンです。側面のナミナミした板も好きですが、一番セクシーなのはトビラを閉まった状態で固定してくれる4本の棒、ロックロッドだね。ガチャンとハンドルを上げてグルリと引っ張ると中身が御開帳〜ってなもんですが、このハンドルがぜんぶ外向きだったり内外が互い違いだったり、案外個性があるもんです。コイツは外/外タイプだね。 で、問題はこの鉄でできたロックロッドがトビラと一体になっているこのプラモをどうやって塗り分けるんじゃという話。筆で塗るにしてもなんかヨボヨボしたりはみ出したりしたら悲しいし、エアブラシやスプレーで吹くにはマスキング……つまり塗りたくないところを全部テープで覆わなければいけない。ほんとうに? やるしかないんです。やらなきゃいけないときもあるんですよ。 よく「マスキングのコツはありますか?」という質問を受けるんですが、そんなもんはない。おそらく「楽してこまかいもんを塗り
2022年3月一杯でホンダの2足歩行ロボット「ASIMO」の運用が終了しちゃいました。ロボット技術開発自体は継続すると発表されましたが「ASIMO」に至るまでの一大プロジェクトはここで一つの時代が終わったと言えます。 今回はそんなこんなにかこつけて「実在するロボットのプラモデル」のことをちょっと振り返りたいんですよね。 ASIMOにつながるプロジェクトは1996年に「P2」で初めて広く公開されました。ウェーブ社がプラモデル化を決めて、世界初の「実在する二足歩行ロボットのプラモデル」となります。この頃の同社のプラモデルは価格も仕様もバンダイのガンプラに追いつけ追い越せといった気概にあふれたもので、このP2も接着剤不要、多色成形、フル可動、¥1500(当時)という意欲的なものでした。 ▲実物が絶対にしないポーズで遊べる。 当時ガレージキットを仕入れるようなお店での取り扱いが中心だったウェーブ社
▲全力で「プラモ初めて層」にアピールするぜ!という気概に溢れたヨドバシカメラAKIBAの展示。 2021年に颯爽と現れ、そのかわいさとユーモアセンスで子供から大人まで幅広いファンを獲得した『PUI PUI モルカー』。放送開始後に企画されたハズなのに1年待たずに店頭にプラモデルが並んじゃう人気っぷり。 人気キャラクターのプラモデルって広い客層を想定できるから「プラモデルを作ったことが無い層」にも訴求しようとメーカーも考える。だから「カンタン組み立て」とか「初めてでも安心!」とか「怖がらなくていいよ、君にもできるよ」と細心の注意を払った言葉で語りかけるんだ。 ▲ランナーに分割配置された部品を見て「プラモデルじゃん!」って喜ぶ。 それでも箱を開ければまごうことなくプラモデル。ランナーについた部品の広がる景色が拝める。ぬいぐるみとか「柔らかい素材」で表現されるのが普通だと思えるモルカーが「バラバ
夕飯を食べ終えて、柿ピーをアテにビールで晩酌……。そういうテンションでプラモに向き合えると、案外楽しい。というか、最近はダイニングテーブルでさらっと組み上げられるのが嬉しいなと思うようになった。一日の締めくくりに、秩序のある小さな充足感を味わえる。たとえば1/35の兵隊フィギュアは、人型のものがカタチになるから「完成」の満足感をしっかりと受け止められるのがいい。 ニッパーでパーツを切る。カチンと音がして、鋭い断面が生まれる。アルファベットと数字を探しているのはひたすら受動的な時間だから、一日ヒートアップしていた脳を少しだけ休ませることができる。こういう作業って、やったことがない人からするとめんどくさそうに見えるかもしれないのだけど、わりと「癒し」に近い。 パーツとパーツを指で挟んだら、合わせ目に「タミヤセメント(流し込みタイプ)速乾」をごく少量、チョンと置く。見えない隙間に接着剤が流れ込ん
さる3月26日、48年にわたって続いた長寿番組、『おかずのクッキング』が最終回を迎えた。土井善晴は父の勝からバトンを受け継ぎ、時間に追われる現代人のために料理の真髄を軽妙な口調で、じつに30年以上も語り続けた。その副読本として売られているテキストの最終巻を買って読み、私はあまりの内容に絶句し、風呂場でKindleを握りしめたまま、ちょっと泣いた。 これは全日本人が読むべき「暮らしのなかに組み込むための料理のバイブル」であると同時に、忙しい自分と心豊かに暮らす自分を両立させるための……つまり、プラモを作るときのテキストとしても最高に役に立つ一冊なのだ。 土井先生の考え方はこうだ。人間は食事を作っている「暇」なんかそもそもない。毎日生きるのに必死な中で料理をするのだから、そのベースにまずは一汁一菜の考え方を取り入れるべきである。米を炊いている間に味噌汁を仕立て、そこに手近なものを入れて食べれば
▲エアブラシから恐竜まで。 「理想の模型店」の話をすると、オジサンたち……とくにプラモデルが流行っていた頃の景気のいい時代を知っている世代はだいたいこんなようなコトを言うんだよ。 「昭和の風情を残す老舗でありながら当然のように新製品を揃え、それでいて奥の棚には埃を被っている古のキットも当時価格のまま鎮座。さらにはエアブラシからコンプレッサー、片刃ニッパーをはじめとする最新の工具まで取り揃えていて、話を振れば過去のスーパーカーやガンプラ、ミニ四駆ブームの事なんかも聞かせてくれる……」 過去への郷愁と同時に今も現役のプラモデルユーザーとしての自分にも応えて欲しいという贅沢な欲求を言葉にするとこうなる「理想の模型店」。そんな絵に描いた餅のような店があるのか?我々はAmazonを閉じて荒川を下った……。 ▲屏風から出てきた餅、京葉模型店である。 東京・江戸川区にある京葉模型店はそんな都合のいい幻想
「だってオレが欲しいんだもん」というのは、商品企画において最も強力な動機だ。どんなものも「市場にニーズはあるか」「競合する製品はないか」「過去の実績はどうだったか」なんて上司にツメられ、マーケティングと称した形式ばかりのリサーチを書面に落とし込み、ハンコをもらってようようGOサインが出る。もしそれが正しければ、世の中の製品なんて全部大ヒット間違いなしだ。 そういうのを全部ぶっ飛ばして、「オレが欲しいから、作る」という独りよがりは時としてとんでもないパワーを持つ。本当に企画者本人しか要らなかった……という場合もあれば、その情熱に共鳴したオーディエンスが大歓声を持って受け入れ、そのブランドの価値を極限まで高めることもある。 チェコにジリ・シルハネークという男がいて、彼は模型メーカー「スペシャルホビー」のボスだ。世界中の飛行機をプラモデルにして送り出し、40人ほどのスタッフに給料を出している。決
突然ですが、皆さんは踏切を持っていますか?私は(その一部を)持っています。上は軽い気持ちで買った「踏切警報燈」であります。信じられないくらい重いし、直径が40cmくらいあります。脂汗を垂らしながらビニール袋に入れた踏切を持って突然帰宅すると、おうちの人に激しく怒られます。外で見る踏切と家にある踏切は大きさが全く違います。気をつけましょう。案外安いよ。 思ってたのの3倍でかい踏切も、プラモデルならば小さくて軽いため脂汗を垂らさなくても入手できることが知られています。見てくださいこのパーツ。黒と黄色が最初から塗られている……のではなく、なんとひとつのパーツに黒いプラスチックと黄色いプラスチックが共存して踏切の色をほぼ完璧に再現しているのです。なんということ! 裏返してみましょう。表面は黒いランナー、裏面が黄色いランナーになっていて、それぞれからゲート(パーツと枠が繋がっているところ)が伸びてい
リック・サルヴィーノは、模型メーカーになることにした。 自分が欲しくて仕方なかったキットが、あの日、どこからも出なかったからだ。 すべてはオイルショックが原因だった。時のカーター大統領の演説ではないが、石油エネルギーの危機は、プラモデルを愛好するモデラーにとってこそ自由の危機だった。第2次世界大戦終結後、戦勝ムードとそれに伴うベビーブーム、大量生産・大量消費社会の到来によって生まれたアメリカ車のプラモデルは、自動車メーカーと手に手を取り合い、ひとつ車軸の両輪としてお互いの事業を拡大しあってきたのだが、かつてビッグ3が述べた「わが社の未来の顧客のために、最高の模型を作ってくれないか」という熱っぽい愛の言葉は「わが社の看板で商売をするのだから、わが社に相応の対価を支払うのが筋だろう」という冷たい言葉に変わった。1977年のことだ。 続く1980年代は、アメリカのカープラモにとって厳寒の冬だった
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