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夏の料理
note.com/anon_press
◆原文紹介 ニック・ランドの「サイバーゴシック」は、1998年にJoan Broadhurst Dixon & Eric Cassidy編『Virtual Futures: Cyberotics, Technology and Posthuman Pragmatism』に掲載されたのが初出である。同書は、サイバーフェミニズム、唯物論哲学、ポストモダン・フィクション、コンピュータ・カルチャー、パフォーマンス・アートといった多様な論考を収めた、いかにも90年代らしい内容で、寄稿者にはランドと共にCCRUを立ち上げたサイバーフェミニストのセイディ・プラントやニューマテリアリズムの文脈で知られるマヌエル・デランダなどが名を連ねている。ランドの「サイバーゴシック」はその中の一編ということになる。 さて、「サイバーゴシック」は、サイバーパンクの聖典ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』に登場するAI
◆作品紹介 現行宇宙に幽霊が出る——共算主義という幽霊である。社会の構成員全体の一割程度に縮小した人類(その中には生物学的な意味での人類である同期人類と人工知能から分派/合流した人類である非同期人類が含まれる、らしい)は、その幽霊を打倒するべくもう一つの幽霊を召喚せんと試みる。そう“著作権”である。拡大し続ける宇宙の中のあらゆる情報を学習素材として扱う多元ネットワーク生命体に、人類は“著作権”を用いて打ち克つことができるのか? ——壮大な闘争の渦中で書かれた一つの中間報告書を起点に、あなたも並行宇宙の中のひとりの当事者として、ぜひとも今後の戦略をご検討いただきたい。(編・樋口恭介)
◆作品紹介 電脳空間の彼方まで広がるグリッド、それはかつてSFが夢見た風景だったが、すでに我々の日常となっている——そう、エクセルだ。エクセルがeスポーツと化した未来、ファイターたちは両手に筋を浮き立ててキーボードを叩き、純白のセルの宇宙を飛び交う。彼らが目指すものは何なのか、そして再現不可能と謳われた幻のエクセル技“センチュリー”とは。関数の血液を流し込まれ胎動するセルの群は、新たな生命となって遙かなる世界を計算カルクする。鮮烈な設定と軽妙な語り口で読者を熱狂させてきた長谷川京が描き出すエクセル・バトルの行方を、ぜひご覧いただきたい。 (編・青山新)
◆作品紹介 戦走、コーポライズされた戦手たちによる《生成変化》を駆使した超絶なレース。領土と富の獲得を目指し、北海道杯GⅢに臨む超個性的な4人の戦手たち。《イ・ミール社》のライカ・T・ニコラエヴィチ、《R.D.C》のヨルハ・スファイバー、《憂愁重工》のマー・ジン、そして、謎に包まれたベンチャー企業《タイラテック》の平ミル。ブチ狂っているレースを生き残り、勝者となるのは誰か。加速、バイオ・パンク、改造された身体、ポスト・アポカリプス、変身、暴流の如き情報量と引用、驚嘆の展開。新鋭の著者が、圧倒的初速と衝動でぶっ放した処女作に乾杯を。(編・平大典)
惑星ソラリスのラストの、びしょびしょの実家でびしょびしょの父親と抱き合うびしょびしょの主人公「ママ活」 ◆作品紹介 その奇怪な作風で読者を笑いと困惑の間で痙攣させ続ける「惑星ソラリスのラストの、びしょびしょの実家でびしょびしょの父親と抱き合うびしょびしょの主人公」。今作では、ある名作児童文学を下敷きに異界への扉が開かれる。そう、扉——河内(2017)は原作に関して、「注文」の書かれた無数の扉を開け閉めしながら進んでいくようすを、ページをめくりながら本を読み進める読者の姿に重ねて読み解いている。そう考えると、本作において部屋をゆるく繋ぐ穴や垂れ下がるベールの存在は、ページではなくスクロールによって読まれる〈anon press〉のメディア的性質に呼応しているようにも見える。もはや此岸と彼岸の境界は溶け始め、それらはあなたが不意に指を滑らせたその隙間からこちらに這い出してくるのである。(編・青
◆作品紹介 一部に熱狂的な支持を持つブログ『みそは入ってませんけど』を運営し、「一階堂洋」名義の小説作品でも注目を集めつつある著者が放つ、最新のヘビー級怪文書。いわく、日本の科学技術再興のためには、第二次戊辰戦争が肝要となる……絶え間ない悪ふざけが驚くべきアクロバットで連結されてゆく。しかし読み進めるにつれ、その露悪性の裏から一抹の悲哀が匂い立つ。語るべき痛みも快楽もないちっぽけな肉体をわずかに現実から滑空させるために、われわれは嘘を、フィクションを吐き続けるのだと──ああ、素晴らしくよく纏まった。だがいささかの暴露が許されるならば、著者の心情吐露とも読める第二章は、実は「『地下室の手記』っぽいと面白いかもと思って」加筆・改稿された箇所であった。それがただの照れ隠しなのか、それとも全てはよく仕立てられた虚構でしかないのか、それはわからない。どこまでが嘘でどこからが本当なのか、そんなことは言
◆作品紹介 十九歳を迎えた者たちは皆、そこに就職する。そう、ヤマザキホールディングスに。あらゆる二項対立を消し去るランチパック、どこまでも続く「ミミ」の道、デイリーヤマザキ天国店。柔らかい白昼夢のようなヴィジョンが発酵してむくむくと膨れあがり、わたしたちを優しく包み込む。確かにランチパックが裏返ったならば——二枚の食パンが背中合わせに重ねられたならば——それは世界をまるごと挟み込んでいると見立てられるのかもしれない。ポップなイメージの中で無限に加速し続ける資本主義的拡大再生産の車輪。その結末に広がる静かな風景をぜひ、噛み締めていただきたい。(編・青山新)
◆作品紹介 40万人の内閣総理大臣が全裸で駆け回り、無銭飲食をする…… 管理社会めいた近未来の果てに訪れるスラップスティック統治黙示録、あるいはクソデカ・ソウリ・パンク。システム上のステータスに過ぎない「内閣総理大臣」が現実を不可逆的に改変していく越境のきらめきは、まさにSFの醍醐味だろう。もちろん、管理社会や近代統治の限界への皮肉でもあるし、報告書体から醸し出されるズレたおかしみと脱力したグルーヴも楽しい一作——いや、そもそも、総理が40万人に増えたら面白いに決まっている。(編・青山新)
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