1.はじめに 今回の『すずめの戸締まり』の物語は、入場時に配られた薄い「新海誠本」で記載されてたように、三つの物語のラインで組み立てられ、次のようになっている。 1つは、2011年の震災で母をなくしたヒロイン・スズメの成長物語 2つめは、椅子にされてしまった草太と、彼を元の姿に戻そうとするスズメの、コミカルで切実なラブストーリー 3つめは、日本各地で起きる災害(地震)を、『後ろ戸』というドアを閉めることで防いでいく「戸締まり」の物語。 これらの3つの要素を、九州から東京、東北へと旅を続けるロードムービーとして描いていく。 すずめの成長と、恋愛、そして日本列島における災害対する態度の問題というそれぞれ独立した3つの物語ラインを、最終的に旅の終点である宮城――東日本大震災の被災地――において、一挙に解決させる新海誠の仕事ぶりには感服するしかない。殆どの観客は、このような華麗な解決を目の当たりし