あなたを守る たったひとりの「わたし」を見抜いて。 わたしにとって 「わたし」はひとりきりだから。 あなたはあなたを 裁くことができますか。 自らのとげを 愛することができますか。 とげを愛してもらえなければ 花は花を生きられない。 ---------------------------- ばらの花 文月悠光 弱さは見世物ではないから、 花びらを重ねて花の奥に潜めていた。 「強い人だね」と讃えられる度、 わたしはうれしげにそのばらを飾った。 何かの証、勲章のように。 とげを光らせているのは、 今の居場所をうばわれぬため。 そうして誰をも寄せつけず、 帰れないほど遠くなった。 ひしめく花びらのなかに わたしは何を忘れてきたのか。 強くなることは、さみしいことだ。 (心を落としてしまったのです。「なぜ」と問われたら、理由でしかものが言えなくなるでしょう。黙って凍らせていた日々に、指を置いて呼吸