その日は朝から予定があって、昼過ぎにはそれをすませて帰路の電車に乗っていた。 新宿から中央線に乗り換えて、僕が空いている席に座ってすぐ年配の男性が隣に座った。僕は最寄りの駅までの間、SNSでニュースでも見ていようとスマートフォンを取り出した。 電車が出発して一駅がすぎた頃 「ちょっと、お兄さん、ちょっと。」 と隣に座っていた年配の男性が肩をたたいてきた。イヤホンをしていたから声にすぐ気づけずに、何か失礼なことでもしてしまったかとイヤホンをとって男性の方に顔を向けた。 「お兄さんはそんな小さな字が読めてるの?さっきから見てたけど、もう私には何を見てるのかさっぱりわからなくてね。」 と、男性はSNSのタイムラインが流れる僕のスマートフォンを指差して言った。笑っていたので、どうやら単純に興味本意で話しかけてくれたのだろうと安心した。 「見えてますよ、僕も目は良い方ではないんですが、コンタクトレン