1.はじめに 本稿は、「離婚後の共同親権とは何か」という書籍の批判的書評である。しかしながら、単に批判的書評にとどめず、本書の内容をできるだけ正確に紹介しつつ、その論理や思考方法にどのような問題があるのかを、できるだけ分かりやすく書いたつもりである。 離婚後の共同親権導入に賛成する人も、また、反対する人にとっても、その思考の一助となれば幸いである。 (なお、本書からの引用は「」で括って表記し、要旨を私がまとめたものについては【】で括って表記した。なお、引用部以外では、敬称はすべて省略した。) 2.「第1章 共同親権は何を引き起こすのか? ―映画『ジュリアン』を手掛かりにして 千田有紀」 千田は、冒頭で「共同親権が法制審議会入りするかもしれないという。欧米ではたしかに共同親権の制度をとっている国も多い。しかし、1980年代多くの国で共同親権が導入された結果、離婚後の暴力や虐待にどう対応すべき