「1976年のアントニオ猪木」ほか、クッソ面白い数々の著作で知られる柳澤健さんの新作「1984年のUWF」を読んだ。 1984年のUWF 作者:健, 柳澤文藝春秋Amazon 自分は雑誌「Number」での連載は断片的に数えるほどしか読めておらず、今回の単行本でまとめて読んだ。寺田克也画伯の装画がメッチャカッコいい。だがズバリ言って、「ああ、いい本を読んだなあ」という満足感は皆無だ。これはそんなに単純な、簡単な話ではないのである。読み終えた時の自分の表情は険しかったと思う。様々な感情が去来してウーン、ウーンと唸りをあげるばかりだった。要するに動揺し、狼狽したのだ。 2年ほど前、柳澤さんの次回作のネタがUWFであると聞いた時、オレはギクリとしたのだ。実は早くもイヤなイヤあな予感があったのだ。UWFという現象、思想、共同体、運動体、道場、興行、報道、文学、あれやこれやそれらには様々な「史観」が