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2009年11月20日 第114回 生命保険から学ぶ教訓 カテゴリ:カテゴリ未分類 個人投資家が「読んでおいて損しない本」を一冊ご紹介しよう。岩瀬大輔氏の『生命保険のカラクリ』(文春新書、2009年10月20日刊)が、いろいろな意味でためになる。著者の岩瀬氏は、1976年生まれと若いがインターネットによる保険販売を主軸とする「ネット生保」であるライフネット生命保険の代表取締役副社長だ。 ■生命保険を理解する本として 生命保険は、「(家に次ぐ)生涯で二番目に高い買い物」と言われることもあり、一生で払い込む保険料が1千万円近くになることが多い、高額の金融商品だ。しかし、一般には、その内容が正確に理解されていない。しかも、この本が批判するところでもあるが、日本の生命保険会社は長きにわたってこの情報の非対称性を利用して儲けてきた。 筆者は、過去に2回生命保険会社に勤めたことがあるが、それでも、金融
2009年11月06日 第113回 個人投資家が外国債券に投資する条件 カテゴリ:カテゴリ未分類 ■外国債券の投資商品 筆者は、これまで個人投資家が外国債券に投資することに対して不賛成だった。個人的には、「外国債券」は決して嫌いな資産クラスではない(かつてバランスファンドを運用する際にライバルよりもかなり多めに外債を組み入れたことがある。ただし、為替リスクはフルヘッジだった)。 しかし、個人が外債に投資しようとすると、個別の債券に投資することについては、 * (1)信用リスクの判断が個人には難しい(格付け会社は信用できない) * (2)基本的に業者間取引となるため市場価格が分からないので「値ざや」を抜かれやすい * (3)為替でも大きな手数料を取られることがある といった難点がある。 外国債券を組み入れる投資信託なら上記の問題の多くが解決するが、今度は、信託報酬だけで1%を超えるような商品
2009年10月16日 第112回 投資のトレーニングはどのように可能か カテゴリ:カテゴリ未分類 プロのファンドマネジャーの場合は 「投資が上手くなるには、どのようなトレーニングをすればいいのですか?」と、ある人から質問を受けた。ありふれた質問のようにも思うが、過去に記憶がない。正直なところ、適切な答えがあるなら、まず筆者自身が切実にそれを知りたい。 プロのファンドマネジャーの場合、どのようなトレーニングがあるか。 信託銀行や投信投資顧問会社のファンドマネジャーの場合、トレーニングの内容は知識の詰め込みと運用に対する慣れの二つに分類できそうだ。 株式のファンドマネジャーの場合だと、ファンドマネジャーになる以前にアナリストの経験をさせる運用会社が多い。この時期に、企業分析、経済分析、ファイナンス(金融論)の基礎、などを勉強させて、その後にファンドマネジャーに登用される。アナリストをいわばフ
2009年10月02日 第111回 長期投資は儲からないのか? カテゴリ:カテゴリ未分類 「必ず儲かる」わけではない 最近、ある編集者から「長期投資は儲からない」というタイトルで本を書かないかという提案があった。この場合、長期投資は、主に株式への長期投資を指している。証券会社の社員としては「長期投資なら(たぶん)儲かります」という一言は否定せずに取っておきたいところなので、気の進まない企画だが、本としては売れそうなインパクトのあるタイトルだと思った。 確かに、現時点までの日本の株価を見る限り「長期なら必ず儲かる」というイメージは湧きにくい。 20年前を振り返えると、1989年9月末の日経平均は3万5千円台だった。バブルのピーク近くの株価と現在の比較だから、相当に不運なケースを計測していることになりそうだ。しかし、20年というと、個人の人生にとっては相当に長い。身近なところに反例があることは
2009年09月04日 第109回 「アニマルスピリット」から見る運用と経済(1) カテゴリ:カテゴリ未分類 昨年、資本市場を理解するのに役立って且つ面白い読み物としてリチャード・ブックステーバーの「市場リスク 暴落は必然か」(遠藤真美訳、日経BP社)をご紹介したが、久しぶりのブックガイドとして、ジョージ・A・アカロフ、ロバート・J・シラーの「アニマルスピリット」(山形浩生訳、東洋経済新報社)をご紹介しよう。訳書のサブタイトルは「人間の心理がマクロ経済を動かす」だ。 著者のアカロフは情報の非対称性を扱った通称“レモンの経済学”などの実績でノーベル経済学賞を受賞した人で、シラーは資本市場とマクロ経済の両方に詳しく、「根拠なき熱狂」(植草一秀監訳、沢崎冬日訳、ダイヤモンド社)ではネットバブルの構造を見事に指摘した。また、サブプライム問題の発生以降、投資家が毎月注目するケース・シラー住宅価格指数
2009年08月21日 第108回 投資信託の入門(下)2 カテゴリ:カテゴリ未分類 (パターン2)国内株+外国株+新興国株 国内株式、外国株式に続く3本目のファンドとして外国債券のファンドは残念ながらあまりいい結果が想定できなかった。では、新興国のファンドはどうだろうか。 新興国株式のベンチマークとしては、MSCI-EMを使った。このインデックスにもETFで簡単に投資することができる。データの採取期間は 1999年2月から2009年7月とした。この月次データ(月末)の原数値(ドル建て)に為替レートを掛けて円建てのリターンを計算した。国内株式、外国株式もデータを揃える必要があるのでTOPIX、MSCI-KOKUSAIの二つの指数についても同期間のデータを採った。 リスクを計算すると、国内株式(TOPIX)のリスクが18.03%、外国株式(MSCI-KOKUSAI)は19.11%、新興国株式
2009年08月21日 第108回 投資信託の入門(下)1 カテゴリ:カテゴリ未分類 前回は、投資信託への投資の入門編として投資信託の意義とファンドの選び方について説明した。今回は、複数の投資信託を組み合わせることを中心に、アセット・アロケーション(資産配分)の観点から、もう一歩進んだ投資信託の使い方をご説明しよう。前回が「入門編」なら、今回は「脱入門編」というくらいの位置づけだが、投資として実際に行うことは特段難しいわけではないので、安心して読んで、考えてみて欲しい。 複数の投信を組み合わせる意味 前回の最後に、国内株式と外国株式をたとえば「4:6」で組み合わせることを考えてみて欲しいと書いた。それでは、このような組み合わせで投資すると、どのようなメリットがあるのかを具体的にご説明しよう。 (表1)国内株式40%と外国株式60% 表1は、国内株式40%と外国株式60%の組み合わせについて
2009年08月07日 第107回 投資信託の入門(上) カテゴリ:カテゴリ未分類 初心者は特別ではないが 本稿では、投資信託を全く買ったことがない人、あるいは投資信託を買ったことはあるが、これでいいのかどうもしっくり来ないという人のために、投資信託の初心者向けのアドバイスをまとめてみたい。 実は、筆者は、資産運用には「初心者向け」の特別なやり方があるわけではない、という持論を持っている。これは、初心者であってもベテランであっても同じ運用をすれば同じリスクとリターンとコストを負担することになるので、初心者も無駄なコストを払うなど、非合理的な運用をしない方がいいという意味だ。また、「初心者だから」という甘えを自分に許して、他人に(特に金融機関に)アドバイスを求めると、検討が甘くなったり、騙されたりしやすくなるから、という意味もある。 しかし、投信の見方・扱い方が分からないという人のために、一
2009年06月19日 第104回 退職後の個人のお金の運用の要点(上) カテゴリ:カテゴリ未分類 今回は、退職後のお金の運用に関して、主な注意をまとめてみたい。読者ご自身が退職者あるいは退職予定者である場合にお役に立つものにすることはもちろん、読者の親・兄妹・親戚・友人などにプリントアウトして配りたくなるような「退職後のお金の運用の覚え書き」となるような内容を目指す。 まず、はじめに原則を列挙しよう。原則は10原則プラス番外1個にまとめたが、今回は前半の5個の原則をご紹介する。次回に、後半の5原則と、「番外」の心得を説明する。 前半は「考え方」的なものが多く、後半に直裁で具体的な原則が多い。 <退職後のお金の運用のための10原則(前半の5個)> (1)基本は普通の運用と同じ。退職後だからといって特別な方法はない (2)追加的な稼ぎに制約があることが唯一の特徴 (3)退職金が振り込まれた銀
2009年06月05日 第103回 正しい運用判断のための5原則 カテゴリ:カテゴリ未分類 先日、筆者は主に年金基金に向けた講演を行う機会があった。年金基金(特に日本の)は、正直なところ何とも微妙な存在で、資産運用を専門に行う組織であり、運用のプロであることは間違いないのだが、運用会社から見ると「同業のプロ」というよりは、大口の顧客、つまり「お客さん」だ。この“お客さん” は、数千億円、場合によっては1兆円を超える金額を運用しているのだが、困ったことに、個人投資家がよく陥るのとあまり変わらない質的レベルの運用上の間違いを犯しがちだ。 講演では、年金基金が陥りやすい幾つかの間違いを指摘したのだが、この際に、「正しい判断のための5原則」と題した、判断の原理集を掲げてみた。個人投資家にも参考になるかと思う面があるので、今回は、これをご紹介する。 「人のふり見て、我がふり直せ」的な読み方をしていた
2009年05月15日 第百二回 10年単位で投資を考えることの功罪 カテゴリ: 「ホンネの投資教室」 ■就職に関するよくある質問 筆者の場合、投資関係よりも就職・転職関係の取材でよく訊かれる質問に「10年後に元気な会社の見分け方を教えて下さい」というものがある(決して自慢にはならないが、筆者はこれまでに12回転職した)。 この質問に直接答えるとすると、「10年後の高収益企業など分からない」というのが正解だ。投資の成功話として、あるいは一つの運用スタイルとして、成長株への長期投資が挙げられるが、この種の話の多くは「後付け」であって、投資を開始するとき、あるいは投資している最中に、投資対象企業の将来の具体的な成長像が描ける訳ではない。 企業の将来像を具体的な数字を伴って想定できるのは、筆者の実感としては、情報が豊富だとしてもせいぜい2年先、将来の曖昧さをたくましい想像力で補うとしても3年先く
2009年04月17日 第百回 アクティブファンドに関する事実の確認 カテゴリ:カテゴリ未分類 ■「日本経済新聞」(2009年4月12日)の記事 4月12日(日曜日)の「日本経済新聞」(第13面)の「SUNDAY NIKKEI」に「今さら聞けない投資の基礎(中)」として、主に投資信託の保有コストに関するデータと説明が載っていた(執筆者は田村正之編集委員)。日曜日の同紙は長年、投資に関する説明を載せているが、今回の記事の内容は特に重要であり、資料性が高い。読者には切り抜き保存をお勧めしたい。 お手元に「日本経済新聞」がない方もいらっしゃるだろうから、今回は、記事が取り上げたデータを紹介しつつ、ポイントを整理しよう。 記事は、主にデータから、(1)ファンドの保有コストが利回りに与える影響、(2)投信のタイプ別の保有コスト、(3)TOPIXを上回ったアクティブファンドの比率、(4)保有コストと投
2009年04月03日 弟九十九回 市場の効率性と伝統ファイナンス・行動ファイナンス カテゴリ:カテゴリ未分類 ■「ウォール街のランダム・ウォーカー」の功罪 最近、筆者は「ウォール街のランダム・ウォーカー」(バートン・マルキール著、井手正介訳、日本経済新聞出版社)をよく参照する。この本は1970年代から定評のある投資の解説書で、現在の翻訳は2007年に出た原書の第9版がもとだ。一つには、同書のような個人投資家向けの投資の理論・実践両面の読み応えのある解説書を作りたいと思うから読むのだが、もう一つの理由は、運用の世界でよく聞くけれども、よく考えると違和感のある話のいくつかについて、この本が影響しているのではないかと気がついたからだ。 詳しくは別途書こうと思うが、運用期間が長くなるとリスクが縮小するという記述(翻訳書394ページ以下)はファイナンスの議論としては誤りなのだが(注1)、困ったこと
2009年03月20日 第九十八回 アセットアロケーションを計算する(下) カテゴリ:カテゴリ未分類 今回は、前々回、前回の補足として、期待リターンの変化とアセットアロケーションの関係を取り上げる。 ■期待リターン1%変化の影響 まず、前回取り上げたアセットアロケーションを一つ再掲載する。リスクの前提(標準偏差と相関係数)は引き続き GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によるものだ。期待リターンは国内株式=外国株式=6%、国内債券=外国債券=1%、短期資金=0.5%だ。国内株式の比率を外国株式よりも大きく保つような余計な仮定(詳しくは前回参照)は制約条件にしていない。 それでは、ここで国内株式だけ期待リターンを1%上げてみよう。(表2)が最適化計算の結果だが、国内株式の比率は、19.95%に4.55%ほど増加している。 この変化に対して、外国株が1.43%減るなど、他の資産のウェイト
2009年03月06日 第九十七回 アセットアロケーションを計算する(中) テーマ:株式投資でお小遣いを増やそう(68044) カテゴリ: 「ホンネの投資教室」 前回、実務的には最も使われている「平均・分散アプローチ」に基づくアセットアロケーションの計算方法をご紹介した。今回は、同様の計算フレームワークの中で、前提となるリスクに対する態度が変わると、結果がどのように変わるのかについて、具体的な数値例を見ながら、考えてみたい。 また、個人向けのアセットアロケーションを考えるときにもしばしば使われる、国内資産(特にリスク資産)を海外資産よりも大きなウェイトで組み入れようとする制約条件が、どのような影響を与えるかを検討してみたい。 率直にいって、個人向けに提唱されている「アセットアロケーション」には、十分な根拠のないものが多かったり、年金基金向けのようなアセットアロケーションの一例を流用しただけ
2009年02月20日 第九十六回 アセットアロケーションを計算する(上) カテゴリ:カテゴリ未分類 金融市場は昨年に引き続き荒れた状態にある。長期的なリスクとリターンを考えて、アセットアロケーション(資産配分)を計算してみようという気にはならないかも知れないが、今回は、敢えて、年金基金の運用計画を考える場合のような、教科書的なアセットアロケーションを検討してみたい。 ■大まかなフレームワーク アセットアロケーションを検討するフレームワークとして最もポピュラーなのは、平均分散アプローチだ。 マルコビッツが開発した、リターンの期待値(平均値)に注目し、リターンの分散(標準偏差の二乗)をリスクとして扱う枠組みである。 リスクの定義の仕方には複数のやり方があるし、静的な最適化だけではなく、動的な(異時点にわたる)最適化を考えるなど、方法はいろいろあるのだが、 (1)平均分散アプローチは直観的に分
2009年02月06日 第九十五回 ポートフォリオとしての日経平均 カテゴリ:カテゴリ未分類 株式投資は、自分の投資を「ポートフォリオ」全体として把握できるようになると、楽しみが拡がるように思う(筆者が思うだけかも知れないが)。もちろん、プロのファンドマネジャーの場合は、そのような把握ができなければ職業人失格だ。 ポートフォリオ把握の一つのサンプルとして、日経平均を取り上げる。日経平均は日本経済新聞社が選んだ225銘柄を基本的には50円額面換算で1単位ずつ保有するポートフォリオだ。日本経済新聞社独特の「みなし額面」(詳しくは日本経済新聞社の説明を参照されたい。)が使われているので、銘柄によっては、1000株ではなく、2000株や3000株といった単位で保有していると見なされるケースが出てきたが、大まかな性格は、TOPIXのような時価総額ウェイトではなく、株価ウェイトのポートフォリオだ。従っ
2009年01月23日 第九十四回 2009年と日本のバブル崩壊後の比較 カテゴリ:カテゴリ未分類 (1)2009年はかつての日本の1998年、1999年に対応する? (2)相違点は何か? 筆者は「歴史は繰り返す」とか「経済それ自体が循環する」とは思っていないが、経済やマーケットには時点が変わっても共通の原理が働くことが多いと思うので、過去の経済とマーケットを参照して、現在及び将来の市場について考えることはある。 最近よく考えているのは、「金融危機」といわれる現在のマーケットの状況と、日本のバブル崩壊後の経済とマーケットの推移だ。 詳しくは1月31日の楽天証券新春講演会でお話ししたいと思っているが、大まかにいうと、アメリカを中心とする世界経済のサブプライム問題発生(2007年夏)以降の推移は、1990年代の日本経済をVTRの早廻しで見ているようだ、と思っている。 (1)2009年はかつての
2009年01月09日 第九十三回 インデックス投資に関連して思うこと カテゴリ:カテゴリ未分類 (Q1)あなたにとってインデックス投資とは何か? (Q2)現在イチオシの投資法は何か? (Q3)投資の初心者は最初に何をすればよいか? (Q4)投資にあって「これだけは、やってはいけない」ということは何か? 今月某日、筆者は、あるインデックス投資の愛好家が主催するイベントの、パネルディスカッションに出演することになった。主催者と打ち合わせたところ、パネルディスカッションで取り上げる質問をあらかじめ4つほど提示していただいた。今回は、これらの4つの質問に答えてみよう。 質問は以下の4つだ。 (Q1)あなたにとってインデックス投資とは何か? (Q2)現在イチオシの投資法は何か? (Q3)投資の初心者は最初に何をすればよいか? (Q4)投資にあって「これだけは、やってはいけない」ということは何か?
2007年09月07日 第六十二回 投資に役立つ? 10大理論(5)-2 カテゴリ: 「ホンネの投資教室」 << その8.「行動ファイナンス」(1)へ ところで、行動ファイナンスや、後で述べるニューロ・ファイナンスの研究を見ていると、「合理性」とはいったい何なのか、訳が分からなくなりそうな気持ちになることがある。伝統的なファイナンスが仮定していたような合理性(たとえば期待効用最大化と一貫した効用関数)は、人間の脳の使い方からして、いかにも不自然に思えるし、「感情」が喜ぶような状態こそが、その人間にとって、「合理的」なのではないか、という気がしてくる。しかし、直観的に考えて、こうした「感情」に沿った原理で行動すると、取引の上では損をするし、同様の取引を繰り返すと、富を失うことになる。 つまり、取引にあって物質的・金銭的に損をしないような合理性、いわば「ゲーム論的合理性」がマーケットの世界では
2006年01月09日 第十九回 PER・PBR・Qレシオ、株価の尺度はどれがいい? カテゴリ: 「ホンネの投資教室」 2005年11月18日 ■Qレシオが復活するのか? 最近、ある投資顧問会社の社長さんから、「Qレシオが復活することはないだろうか?」と質問された。その読み筋は、ここのところ不動産価格の上昇が目立つし、村上ファンドのような投資家は企業の含み資産に注目して投資するだろうから、かつてのQレシオが復活してもおかしくないのではないか、ということらしい。 理由は順を追って説明するが、筆者の意見は「どちらかと言えばノー」だ。 「Qレシオ」をご存じない方も多いだろう。教科書に載るような正式な用語ではないから、知らなくても問題はないのだが、一言でいえば、資産を時価で評価して計算したPBR(株価純資産倍率)のことだ。PBRでは、まさに「(プライス・トゥー・)ブック・バリュー」というがごとく帳
2008年11月21日 第九十回 成功報酬について考える-その2- カテゴリ:カテゴリ未分類 (1)成功報酬のリスク拡大効果 (2)サブプライム問題と成功報酬 (3)成功報酬と「期間のミスマッチ」 (4)時価評価は正確な評価か 主にファンドの成功報酬についてだが、成功報酬という仕組みについては、本連載の第二十八回目「成功報酬について考える」で一度検討した。 この時の主な結論は、(1)成功報酬はファンドの価値(或いは本人の稼ぎ)を原資産としたコールオプションのようなものであり、オプション価格理論を使ってフラットなフィー(たとえば年率何%といった手数料)に換算できる、(2)このフィー水準は概して高い、(3)フラットなフィーのベースを計算できない投資家は成功報酬のファンドを買うべきでない、(4)成功報酬の運用側にとっての有利さは独立系の運用会社の経営が軌道に乗るきっかけになった点で運用業界として
2008年11月07日 第八十九回 株価水準の大雑把な判断方法 カテゴリ:カテゴリ未分類 (1)株価の「レベル」は大まかになら判断できる (2)計算方法 (3)リスク・プレミアムに関する補足 (4)応用を考えるとすれば (1)株価の「レベル」は大まかになら判断できる 株価が次に上がるか下がるか。また、仮に上がる(下がる)として、それは「いつ」なのか。これらの判断は、筆者が改めていうまでもなく、極めて難しい。しかし、正確とは言えないが、株価の場合「いくら」なら「高いか・安いか」については、大まかに判断できるはずだと筆者は考えている。 もっとも適正の範囲内と思える株価の上下の差は、場合によっては2倍近くになるが、ここから外れるような割安・割高のケースでは、投資家として、ある程度投資行動に強弱を付けてもいいのではないかと考えている。 今回は、筆者がしばしば使っている株式市場の平均的な株価の割安・
2008年10月17日 第八十八回 個人の資産運用における人的資本とライアビリティ カテゴリ:”マネー運用感覚”速習入門講座 (1)人的資本 (2)ライアビリティ (3)総合的に考えると 個人が資産運用を考える場合に、現在、明白に持っている財産と負債の他に、資産・負債それぞれの潜在的な可能性について考えることが重要だ。今回は、この問題を考えるために有用な「人的資本」と「ライアビリティ」の二つの概念について考えてみたい。 (1)人的資本 人的資本とは、厳密に測ることができるものではないが、将来獲得可能な収入を現在価値で評価したもので、「自分の株価」のような概念だ。「サラリーマンはカラダが元手だ」などとよく言われるが、たいていの人は何らかの人的資本を持っている。 たとえば、150万円の普通預金と300万円のETFとを持った30歳のサラリーマンは、本人の仕事や能力にもよるが、たとえば1億円を超え
2008年09月19日 第八十六回 ビジネスモデルとしての投資銀行の終焉 カテゴリ: 「ホンネの投資教室」 (1)なぜリーマンブラザーズは救済されなかったか (2)投資銀行ビジネスモデルの弱点 (3)ユニバーサルバンクは大丈夫なのか 9月15日に米国のリーマンブラザーズが米破産法第11条を申請し、破綻した。相前後して、バンク・オブ・アメリカによるメリルリンチ買収の合意と保険大手AIGの経営危機が報じられた。これを受けて内外の株価が大幅な下落を演じるなど、混乱が発生し、本稿執筆時点でも収まっていない。 昨年夏に本格的に表面化したサブプライム問題から引き続く一連の状況は、今後に対する示唆に富む多くの教訓を含んでいると思うが、今回は「投資銀行」という業態に焦点を当てて、気づいたことをいくつかメモ的に書いてみたい。 今年に入って、ベアー・スターンズ(米国第5位)、リーマンブラザーズ(同第4位)、メ
2008年09月05日 クオンツ運用の弱点と原因 カテゴリ: 「ホンネの投資教室」 (1)よく指摘される弱点 (2)「基準化」で失われる情報 (3)ファンド選択の系統的間違い クオンツ運用とは数量的な分析に基づく運用のことで、運用業界の慣用的な表現だ。通常、コンピューターで大量のデータを処理し、あらかじめ決められたプログラムに基づいてポートフォリオを動かすような運用を指す。俗に「システム運用」などと呼ばれることがある。データ処理が「数量的」であることと、運用が「プログラムされている」こととは、本質的には別々の性質だが、統計的に抽出した何らかの性質をそのまま運用に生かそうとするアプローチの性質上、両者が一致していることが多い。 同時に統計的な性質をポートフォリオに反映させようとするアプローチの性質上、株式運用の場合、数十銘柄から数百銘柄に及ぶ銘柄数を保有することが多く、アプローチとしては機関
2008年08月15日 第八十四回 バブルの発生メカニズムを整理する<その1> カテゴリ: 「ホンネの投資教室」 昨年の夏から本格的に顕在化した米国の「サブプライム問題」は、その後丸1年が経過したが、まだ沈静化の兆しがない。プライム層向けの住宅ローンの焦げ付き発生や、消費者信用に関わるデフォルトの発生や関連損失の計上など、サブプライム・ローン関連にとどまらない問題の拡がりを見せている。 サブプライム問題の背景には、米国の住宅及び住宅金融ビジネスのバブル的な拡大とその崩壊があったことは衆目の一致するところだろう。在任中のグリーンスパンFRB議長は、米国の住宅市場について「バブル」という言葉を使うことを慎重に避けて、「フロス」(細かな泡のこと)という単語を使ったりもしたが、今や、規模が大きくてたちの悪いバブルが存在したことについて反対する人はほとんどいないだろう。ヘッジファンドの破綻や金融機関
2008年08月01日 第八十三回 株価とマクロ経済を巡る三つの雑談 カテゴリ: 「ホンネの投資教室」 ■第一話 ピーター・リンチの15分 ■第二話 1500兆の1%のリターンの源泉 ■第三話 名目GDP下方修正の衝撃 今回は株価とマクロ経済の関係について、筆者の頭に浮かぶ話を三つご紹介する。 ■第一話 ピーター・リンチの15分 運用会社では、マクロ経済を話題にすることが多い。先ず、社内の運用方針に関する会議はマクロ経済の現状分析と見通しから議論が展開されることが多く、運用会社内のエコノミストばかりでなく、運用に関係する社員の大半がマクロ経済の話題に参加することが多い。また、顧客に対して、運用方針や、運用の結果について説明(あるいは「言い訳」)するときにも、マクロの経済環境から話を始めるのが定石だ。 経済に対する大まかな把握や見通しがあって、これを前提としてアセット・アロケーション(資産配
2008年06月23日 第八十回 インデックス・ファンドの評価方法<その1> カテゴリ: 「ホンネの投資教室」 (1)トラッキング・エラー実績だけでいいか? (2)バイアス・リターンの評価 インデックス・ファンドにも運用成績評価の必要性が存在する。アクティブ・ファンドの運用と較べるとベンチマークに対する勝ち負けは小さいが、全く ないわけではないし、それが安定的なものも、そうでないものもある。 通常の投資信託を選ぶ場合も、ETFを選ぶ場合も、過去の運用評価を、ファンド選択に反映させる必要があるだろう。ところが、インデックス・ファンドの運用評価をどうしたらいいのかについては、投資の教科書や解説書にもはっきりした記載がないことが多いし、筆者の知る限り、満足の行く「定説」がない。 今回から何度かに分けて、投資家のファンド選択を意識しつつ、インデックス・ファンドの運用評価を中心とした、評価の方法を考
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