石井知章・小林英夫・米谷匡史 編著(社会評論社) 「アジア社会論」という耳慣れない言葉が気になって本書(A6版・393頁・2800円・社会評論社)を読み始めたのだが、一読してその内容の多様さと問題の奥深さに圧倒される思いを感じた。ところで『情況』の2010年4月号は、司馬遼太郎の『坂の上の雲』批判を軸に帝国主義戦争としての日露戦争の世界史的意味についての検討を行っている。私はこの特集に編集委員として関わったのだが、その際に中国の「アジア主義」研究者である李彩華氏へのインタビューを行い、日清・日露以来の近代日本の対アジア関係、さらにはそこで生まれた「アジア主義」と呼ばれる思想について李氏から多くのことを教えられた。不勉強なまま、「アジア主義」を日本帝国主義のアジア侵略正当化のための御用イデオロギーくらいにしか考えていなかった私に、李氏は、「アジア主義」が侵略イデオロギーの側面を持ちつつも同時