日常に潜む邪悪を暴(あば)いた傑作。長らく品切れであったが、やっと増刷された。前半ではカウンセリングで知り得た邪悪な人々を描き、後半ではベトナム戦争のソンミ村虐殺事件を通して「邪悪に加担するメカニズム」を検証している。 本書は2月度の課題図書。原書は1983年刊。アメリカ経済が底冷えし、多くの人々が不安に駆られていた頃だ。その後、プラザ合意(1985年)を経て日本はバブル経済が崩壊(1990年)した。レーガノミックスを引き継いだクリントン大統領が情報スーパーハイウェイ構想という花火を打ち上げ、日本の金融資産はアメリカに吸い取られた。これがグローバル経済の始まりである。こうした背景を踏まえると、時代の変化に先駆けた一書といっていいだろう。人の心と経済とは密接に結びついている。景気の「気」を支えているのは「人の気力」であるからだ。 バブル崩壊後に日本語版が出て、たちまちベストセラーになった事実