まず柄谷行人(編)『近代日本の批評1:昭和篇(上)』には、1925年から1935年までの日本近代批評を扱った論文と討議、そして1935年から1945年までの日本近代批評を扱った論文と討議が収録されている。いずれの論文も執筆しているのは柄谷行人であり、またどちらの討議も参加しているのは浅田彰、柄谷行人、蓮實重彦、三浦雅士の四名である。 また柄谷行人(編)『近代日本の批評2:昭和篇(下)』には、1945年から1965年までの日本近代批評を扱った論文と討議、そして1965年から1989年までの日本近代批評を扱った論文と討議が掲載されている。このうち前者の論文を執筆しているのは三浦雅士、後者の論文を執筆しているのは浅田彰であり、いずれの討議も参加しているのは浅田彰、柄谷行人、蓮實重彦、三浦雅士の四名である。 柄谷によれば、1925年以降の日本近代批評には他者としての読者(=大衆)が出現していた。こ