ヒ素は水銀、カドミウムなどと同様に摂取すると生体影響が大きく、健康被害をもたらすことが多いことから、嫌われ元素の代表格と言えます。現在、ヒ素に 係わる公衆衛生上の最大の問題は、ヒ素で汚染された地下水の飲用による慢性ヒ素中毒で、インド・バングラデシュを始め、世界各地で発生しています。 この元素は地球上に広く分布しているため水やいろいろな食品を通じて微量ながら誰もが毎日摂取しています。工業的にはガリウムヒ素のような半導体として先 端技術を支える有用な元素の側面を持っています。当所ではヒ素及びその化合物の有害な面に着目して、微量レベルでの化学形態別の定量法の開発や動態把握を 目的とした研究を行ってきましたが、ここではヒ素の有害性を示す事例などをいくつか紹介したいと思います。 化学形態によって異なる生体影響(毒性) ヒ素は自然界で主に岩石や土壌中に無機ヒ素として存在します。また、魚介類には主にアル