ちなみに当時のヨーロッパでは、貴族も庶民もベッドに入るときに寝間着を着たりしません。 裸で寝ることを宗教上の理由で禁じられていた聖職者以外は、健康な人も病人もみな丸裸でベッドに入る習慣がありました。 このため、死亡確認が遅れ、遺体が死後硬直の状態になってしまっていても、服を脱がす手間がかからなかったのですね……。 さて湯灌が終わったあと、故人は経帷子(きょうかたびら)を家族に着せてもらいます。 経帷子は、故人が元気なうちから自分で用意しておくべきものでした。中世ヨーロッパでは経帷子を持って巡礼し、各地の教会などを旅して回ることまで流行りました。 死んだ後、その経帷子に包まれている自分の姿を考えながら旅行してまわるというのは現代人にとってはなかなか想像しにくい行為ですが。 当時、さかんに教会が提唱した「死を想え(メメント・モリ)」……人間いつ死ぬかわからないのだから、はしゃぎすぎるなよ的な発