はじめに わたしは、この三月、大阪市立盲学校での仕事を全て終えることができました。約三十年にわたる社会科教員としての生活でした。わたし自身が全盲と両手切断という二重の障害をもっての勤務でしたから、さまざまな苦労がつきまとったことは言うまでもありませんが、多くの人に支えられながら、トータルに言えば大変楽しく働くことが出来、心から感謝しています。 わたしが盲学校で働いた期間は、一九七二年から二〇〇二年までの三十年間ですが、障害者の人権や福祉が、その当事者をはじめ、家族・関係者によって主張され、具体的に実現していった時代に当っています。戦後、新しい憲法が制定され、平和や民主主義を社会のバックボーンにしようとする努力が、障害者の生活の上にもやっと具体的に実現され始めた、丁度そういう時期に当っていたとも言えるでしょう。その意味で、わたしは時代に恵まれたと思います。 それから、もうひとつは、周りの人た