吉田正太郎先生(1912年9月1日-2015年7月30日)。日本の天文学者、光学設計者。大学、研究機関、メーカー等の団体が抱えていた光学機器(カメラ、望遠鏡、双眼鏡のレンズ・プリズム)の知識・技術を広く一般に広め、後進の育成に励まれた。学舎や同好会で直接師事した生徒よりも、先生の書籍を通し、実体験に根付いたその知識体系に触れ、学んだ人の方が多かったのではないだろうか。 先生の書籍に出会ったのは10歳の頃。科学クラブの部長だった私は、月次の実験・観測テーマ作成のため、放課後の理科準備室に入り浸り、警備員の夜間巡回をやり過ごし、校門をよじ登って帰る日々を過ごしていた。準備室には、前担任の趣味で公費購入したと思われる天体写真集や専門書が残されており、その中に吉田先生の書籍も複数存在した。表紙での記憶だと、『天文アマチュアのための望遠鏡光学』から『大望遠鏡の時代・星の話』までの書籍は網羅していたよ