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ヒースは卓越したバランス感覚をもつ哲学者である。彼の著書『ルールに従う』では、社会学的説明と経済学的説明という社会の本質についての伝統的に対立している二つの理論の間のごく小さい隙間に自らの社会理論を結晶させている。 社会をとらえる二つの立場を、スティーブン・ピンカーの文を引用してまとめると次のようになる(『人間の本性を考える(下)』 p.13)。 社会学の伝統: 社会は凝集性のある有機的な存在であり、個々の市民はパーツにすぎない。人びとは本質的に社会的で、超有機体の構成員として機能すると考えられている。 経済学、あるいは社会契約論の伝統: 社会とは合理的で自己本意な個々人によって交渉される取り決めである。社会は、人びとが自分の自律性の一部を犠牲にし、それと引き換えに、他者の自律性の行使による侵害を受けない保障を得ることに同意したときに発生する。 ヒースは後者の立場の説明力を広く認めている。
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