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ドラクエ3
blog.livedoor.jp/nishina0
2011年11月22日01:52 カテゴリ エチュード ひらひらとしたゴスロリ風のメイド服を着た妹が、ベッド脇の丸椅子に座り、ぼんやりと窓の外を眺めていた。猫耳をつけていた。ツインテールではなかったが、それはたぶん、そこまでするとやり過ぎだからだろう。 天井はうっすらクリーム色がかった白で、暖かい印象にしてあるようだった。シーツや枕カバーは真っ白で、清潔で、逆に少し冷たい感じがした。病室っぽいなと思いつつ、仰向けに寝たまま目だけ動かして辺りを見渡す。白い壁。縦長の殺風景な部屋。頭の方向に窓。足のほうにドア。ベッドと壁に挟まれるようにある何かの機器。やはり病室のようだ。そういうドラマや舞台のセットとかじゃなければ。生活感のない白い部屋。病院独特のにおい。 肘をついて身を起こしかけると、微かな衣擦れの音がした。部屋には僕と妹しかおらず、音楽もなく、だから相対的にその微かな音だけが響いた。妹が僕
2008年10月30日01:19 カテゴリ 鼻血 素数を数える。いや数えない。大した意味はない。カラカラとトイレットペーパーを片手で巻き取る。千切るときは指を使う。今は片手しか自由にならない。もう片方の手は血にまみれて、わたしはすでに後戻りはできない。だからせめてあなただけでも……と、そこにない架空の人物に架空の言葉で投げかけたところで状況を整理することにした。 女子トイレの個室の中で一人の美少女高校生が尿を垂らしたのちにトイレットペーパーで然るべき部位を擦り上げ雫を拭き取りパンツをずり上げたそのとき鼻血が噴き出し薄汚れたタイルを強かに赤く濡らしたのであった。鼻の粘膜は元々弱かったのであった。以上。流れよわが鼻血、とわたしは言った。いや言わない。話が進まない。自分で美少女とか言うやつは人格に問題があると思われる。大変遺憾なことだと受け止めております。わたしは鼻を押さえているトイレットペーパ
2008年10月12日21:12 カテゴリ 水妖 青みがかったその肌は、月に照らされた湖にとてもよく映えた。彼女は仰向けになり、夜空を見上げている。湖の上で、身体の裏側を水に沈め、濡れた顔や、柔らかな曲線を描く胸や、しなやかな太ももを外気に晒している。ちゃぽんと魚が跳ねる。空に雲はなく、月は呆れるほど明るく、そのせいで星の光が薄められていて、それでも満天と言っていいような星空に、彼女は懐かしむような笑みを浮かべる。遠い空。遠い記憶。真っ黒な瞳に映った月が瞼に隠され、一瞬よりも少しだけ長い時間をかけてまた現れる。 魚に腕をつつかれ、彼女は身体の向きを変えた。頭と肩だけが水の上に浮かぶ。濡れた髪から滴った水の粒が頬を滑り、顎の先に辿り着き、ほんの数瞬だけ躊躇ったあと、また湖に戻っていく。波紋。水の中で彼女の手と魚が遊ぶ。くすぐるようにいやらしく動く彼女の指を、鮮やかな青の魚がからかうように啄ば
2008年08月16日14:47 カテゴリ 涎 ギチギチガガギュワゥギギギ……、と歩道の真ん中でのたうちながら鳴き声を上げている蝉。僕はそれを避けるように大回りして通り過ぎた。鳴き声が止まったので、ふと振り向くと、蝉はふらふらとよろけながら車道を横切り、ここではないどこかへ飛んでいこうとしていた。蝉の命は地上では一週間程度だと聞いたことがある。それは別の虫の話だったかな、いや蝉で合ってたかな、と考えながら日陰を選んで歩いていく。 朝九時半過ぎの人気のない正門をくぐり、校舎の中には入らず、横に伸びているコンクリートの廊下を進み、裏門があるほうに向かう。夏休み中は正門以外開けていないので面倒くさい。もちろんそれには防犯対策的なものがあるのだろうけど。 裏門のすぐ横には購買部があり、向かい合う形に靴箱ルーム、そこから十メートルほど先に部室棟がある。 購買部の自販機前に奈月先輩がいた。日に焼けた肌
2007年02月16日20:19 カテゴリ セントラルパーク いらなくなった女の子は、中央公園の東側に捨てられる。いらなくなった男の子は西側、いらなくなった男のひとは北側、いらなくなった女のひとは南側に捨てられる。実際はもっと細かく分けられているけれど、大まかに言えばそんな感じだった。 前はヤクザのひととか変態のひととかが、ずっと幼い女の子や男の子を勝手に攫っていったりしたけれど、一度テレビのひとに騒がれて、それから警備が厳しくなった。外側の金網が高くなって、見回りも一人ずつから二人ずつに増えた。 そのことを愚痴る子もいる。攫われたほうが今よりいいずっと暮らしができるんじゃないかって。そう言われるとわたしは、「かもしれないね」って頷くけれど、本当のところはわからない。いい暮らしをできた子もいるんだろうし、もっとひどいことになった子もいるんだろう。 今の季節、夜、わたし達は折り重なるように眠
2012年07月14日01:09 カテゴリ ゆずのこと 白い網の真ん中に貼りつけてある丸いプレートには、崩した文字で「YZ」と書かれていた。水色の涼やかな文字だ。おそらくは社名の頭文字からとったロゴなのだろう。彼女は「YZ」の文字を頭に思い浮かべながら、ゆず、と小さく呟いた。まるで親しい女の子の名前を呼ぶかのように。 そのゆずは去年の秋口から押し入れに仕舞われていた。カバーもなく、半年以上も眠っていたので、埃が被っており、薄汚れた印象が強い。彼女はゆずを引っ張り出し、まずは板張りの廊下に置いた。それからいそいそと、水を張った洗面器とタオルを用意する。廊下に膝をついて、タオルを濡らし、キュッと絞った。 正面の網を拭いていく。すすすと網の線をなぞり、細い溝に挟まった埃も、タオルの端をこよりのようにしてこそいでいく。綺麗にしたあとの線に指を滑らせ、少し濡れた、つるりとした感触を味わう。彼女は気分
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