8月17 恋愛論、あるいは緋色の研究 2 「恋愛とは何か。」 実に有り触れた、何の変哲もない問いである。そして悠久の時空を越えて、今なお天蓋のように人々を蔽う執拗な問いでもある。多くの人が、この問いに呼応し、答え、そして斃れた。多くの詩が編まれ、多くの音色が生まれ、多くの筆先がこの問いを彩ってきた。それらは苦悩であったり、幸福であったり、欺瞞であったり、信頼であったり、破滅であったり、哀愁であったり、困惑であり拘泥であり魅惑であり達成であり、時に悲劇でも喜劇でもあった。堆く積まれ行き場を無くした経験と感情の塊はこうして質量を纏い、僕らの眼前に立ちはだかる。 この無数の資料の中に潜り、分け入り、何処かに在るであろう「正解」を探す、それもいいだろう。事実、そのような当て所ない捜索に心血を注ぎ、文字通り身を賭して挑んでいる人々も多くいるのだ。それを否定する権利は僕にないし、そうするつもりも無い。