サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
アメリカ大統領選
bungeikan.jp
一 ギルフイラン、ラヂオ商会の飾窓(シヨウウインドウ)の飾りを終へて、――金を受取つて、いつもの様に曾我(そが)たちと、彼等の仕事場で落合ふために、上野行の電車へ僕が飛乗つたのは、かれこれ九時を廻つた時分だつた。暮れがた暫く振りで快よい夕立が東京の半天を襲うて、それがわづかの間だつたが、銀座の甃路(ペエブメント)をも掠めたので、夜に入つてから、そこらはすつかり不透明な昼間の蒸暑さを消散させてしまつた。停留所で電車を待合はせて居る間、ちよいと気にして空を仰いでみると、乱雲がものものしくまだ頭の上にどよめいて、時々未練がましい電光が隅の方から神経的な光を走らせて居た。それが、――もしかするともう一雨ぐらゐは沫(しぶ)かせない限りもないと、さう威嚇して居るかの様でもあつた。 わづかな雲きれが空に浮游して居ても、時にはそれが、――曾我たちの口調を借りれば、――心あつてするかの様に、しつこく仕事の邪
序に代えて 太陽が照れば塵(ちり)も輝く。 (「格言と反省」から) * 考える人間の最も美しい幸福は、究め得るものを究めてしまい、究め得ないものを静かに崇(あが)めることである。 (「格言と反省」から) * 人間のあやまちこそ人間をほんとうに愛すべきものにする。 (「格言と反省」から) * 鉄の忍耐、石の辛抱。 (一七八〇年五月末の日記から) * 真理に対する愛は、至る処(ところ)に善いものを見いだし、これを貴ぶことを知るという点に現れる。 (「格言と反省」から) 人間と人間性について 人間こそ、人間にとって最も興味あるものであり、おそらくはまた人間だけが人間に興味を感じさせるものであろう。 (「ヴィルヘルムマイスターの修業時代」第二巻第四章から) * 各個人に、彼をひきつけ、彼を喜ばせ、有用だと思われることに従事する自由が残されているがよい。しかし、人類の本来の研究対象は人間であ
1 いにしえ、東方の民が<双神の時間>と名づけた早朝の一時期——暗黒と光明、絶望と期待の陰陽交錯する薄明のゆらぎ、明暗定かならぬ夜と曙のせめぎあいこそ、不安な人間存在の物語の発端であった、といわれる。それはタナトスとエロスの相互循環であり、また、一切の苦痛、一切の快楽も一緒に肯定すべき<運命の愛>と呼ばれる真理なのでもあろうか。 思うに、その双神の運命とは、逃れえぬ闇の深奥でおびえつづけなければならぬ人間の精神と現実の構造的な内実を意味している。いや、それにしても、双神のもたらす息をつめたような一条の明かりは、朝の清々しい黎明を意味するものだったか。逆に、暗愁にくぐもる黄昏の輝きであったのか。 幻視の惑乱と煩悶にとまどいつつ、だが、それは誰も追証しようとしなかった。はたして、希望とは虚無そのものなのだろうか。 「私は妄想するのだが・・・・」と高橋和巳はいう。 そのうす明りは、背後から姿をあ
「そのとき炎の音楽家は私の上に崩れ落ちてきた」 指揮台で本番中に逝った指揮者は3人いる。 1911年、フェーリクス・モットル、 1968年、ヨーゼフ・カイルベルト、 そして、ジュゼッペ・シノーポリ。 2001年4月20日、ベルリン・ドイツ・オペラ(DOB)座にて『アイーダ』演奏中の出来事だった。彼の死を目の当たりにしたヴァイオリン奏者、イリス・メンツェル氏が、あの日を初めて振り返る―― 譜面に記された小さな十字架。 指揮者が演奏中に亡くなると、共に演奏したものがその死を悼み、倒れた個所に記すという。これは音楽家の間での習慣である。 オペラ『アイーダ』の本番中にシノーポリが壮絶な死を遂げたのは、2001年4月20日のことだった。 あの日、第2ヴァイオリン首席を務めたイリス・メンツェル(36歳)は、その一部始終を目前で見たひとりである。半年経って初めて、そのときの全貌を語ってくれた。 その日の
美しい夜であった もう 二度と 誰も あんな夜に会う ことは ないのではないか 空は よくみがいたガラスのように 透きとおっていた 空気は なにかが焼けているような 香ばしいにおいがしていた どの家も どの建物も つけられるだけの電灯をつけていた それが 焼け跡をとおして 一面にちりばめられていた 昭和20年8月15日 あの夜 もう空襲はなかった もう戦争は すんだ まるで うそみたいだった なんだか ばかみたいだった へらへらとわらうと 涙がでてきた どの夜も 着のみ着のままで眠った 枕許には 靴と 雑のうと 防空頭巾を 並べておいた 靴は 底がへって 雨がふると水がしみ こんだが ほかに靴はなかった 雑のうの中には すこしのいり豆と 三角巾とヨードチンキが入っていた 夜が明けると 靴をはいて 雑のうを 肩からかけて 出かけた そのうち 電車も汽車も 動かなくなっ た 何時間も歩いて 職
コラム 活動を通しての出逢いと気付き 飯塚 裕子 2019/03/09 講談師・神田松鯉先生にご紹介いただき、ペンクラブに入会。そしてAmazonで電子書籍を出版していたことで、入会とほぼ同時に電子文藝館委員会にも入らせていただきました。群馬でイラストレーターをしておりますが、突然自分に寄せてきた文学の大波にめちゃくちゃ戸惑いました。電子文藝館委員に承認された会議後、帰りの高崎線の中で、「地方の広告畑にいる自分が ... 瞳 湖 神山 暁美 2019/01/12 東海道新幹線を米原から北陸本線に乗り換え、しばらく行くと、左側に小さな湖が見えてくる。余呉湖である。水上勉は小説「湖の琴」を、ここから書きはじめている。――余呉の湖は滋賀県伊香郡余呉村にある。琵琶湖の北端にそびえる賤ヶ岳を越えて ... 英国議会見学記 結城 文 2018/11/03 BBCなどを視聴していると、Brexitを半年
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『bungeikan.jp』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く