ネクタイを締め、自宅のパソコンの前に座る。開始まで30分もあるのに、プレッシャーでめまいがした。 2023年12月。九州大の大学院修士課程の1年目に在籍していた時元康貴さん(27)は、初めての就職面接に臨んでいた。 画面の向こうに面接担当の男性が現れた。 「……」「……」「……わたしは」 言葉が出るまでに5秒ほどかかった。吃音(きつおん)の一種、「難発」の症状だ。その後も、「……現在」「……大学院で」など文節ごとに数秒の間が空いた。 面接担当者の驚いた表情。30分間、どう思われているか、気になって仕方なかった。 母音が特に言いづらい。御社の「お」を避けるため「○○(会社名)さん」と言い換えた。一般的ではない言い方は、失礼と思われただろうか。 翌朝、選考不通過の通知が届いた。 発表が苦手 吃音「隠して」やり過ごした幼少期 3歳ごろから吃音の症状がある。はじめは「ぼぼぼくは」と音が連続する「連