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1.樽の聖者 高校時代に英語の教科書で「ディオゲネス」というギリシャの哲人のことを知った。以来、この風変わりなギリシャの哲人は私の心の中に住み続けている。これまでもディオゲネスについては何度も書いているのだが、すぐにまた書いてみたくなる。それだけ好きだと言うことだろう。 ディオゲネス(BC410〜BC323))はアテネ郊外に住んでいた。樽の中に住んでいて、その樽を転がして好きな場所に移動した。樽の他に彼はこれという持ち物は何もなかった。いわばシンプルライフ、スローライフの先駆者のような存在である。 彼は「美しい人」と呼ばれた。外貌ではなく「魂において美しい人」という意味である。彼はただ樽の中に住んでいただけで、何事かを為したわけではない。天気のよい日は樽から抜け出して、河原でひなたぼっこをしていたという。 まったくの無為徒食である。説教をするでもない。著作をするでもない。書物はひとつ
1.波止場の哲人 今から50年ほど前、サンフランシスコの波止場に、風変わりな日雇いの港湾労働者がいた。彼の名前はエリック・ホッファー(1902〜1983)で、仕事の合間にじっと思索にふけったり、本を読んだり、書き物をしていた。仲間達は彼を親しみと敬意をこめて、「プロフェッサー」と呼んだ。 彼は1902年にドイツ系移民の子供としてニューヨークに生まれている。7歳で母親と死別し、その年に視力を失った。盲目生活は15歳まで8年間も続いたという。当然、彼は正規の教育を受けずに育った。 18歳の時父親が死に、彼はひとりぼっちになった。彼はバスでロサンジェルスに行き、そこの貧民窟に棲みついた。そして職業紹介所でいろいろな職業を見つけ、そのその日暮らしの生活をしていたが、28歳の時そこを去った。きっかけは自殺に失敗したからだという。 その後、農業従事者としてカルフォルニアの農園を渡り歩いた。炭坑夫
1.角栄の夢みたこと 政治は二つの側面を持っている。ひとつは、国のあるべき進路を決め、そのために意志決定をするということ。これを政治の公的側面と呼ぶ。もう一つは、構成員のあいだの利害の調整である。これを政治の私的側面と呼ぼう。 田中角栄はこの両面において、よきにつけ悪しきにつけ傑出た政治家だった。そこで、今日は彼の政治家としての歩みを、公的側面から見てみよう。角栄は政治家として、どんな理念をもち、どんな政策を持っていたか。また、そうした理念や政策や、政治家としての信念はどこから生まれたかということである。そのためには、彼がどんな生い立ちを持ち、どういう経緯で政治家を志したかを見ておかなければならない。 田中角栄は大正7年5月4日に、新潟県刈羽郡二田村の古い農家に生まれている。高等小学校を卒業した昭和8年ころは不景気まっさかりで、適当な仕事がなかった。そこで、土方になる。収入は一日50銭
1.点と線の不思議 ギリシャ人は一風変わったことを考えることが好きだった。たとえば、物質をどこまでもこまかく分けていくとどうなるのか、などということを考えた。デモクリトスという人は、こうして「アトム」という観念にたどりついた。物質はすべてアトムから成り立っているというのである。しかし、だれもアトムを見た人はなかった。 どうように、「線分は点が集まって出来ている」という。私たちは学校でそう習い、これを当然の認識として受け入れているが、よく考えてみると、これもなかなかに謎をふくんだ文章だということがわかる。 たとえば「点」とはなんだろう。ユークリッド(前330〜前275)によれば、それは位置のみを持ち、面積をもたない図形だそうだ。もちろんそんなものがこの世の中にあるわけがない。たしかにそれらしいものを私たちは紙の上に書くことはできるが、それでも面積を0にはできない。 そもそももし面積が0
金子みすヾ/本名金子テル。(写真は大正12年5月3日撮影) 明治36年(1903年)山口県大津郡仙崎村(今の長門市)に生まれる。大正末期、すぐれた作品を発表し、西條八十に『若き童謡詩人の巨星』とまで称賛されながら、昭和5年(1930年)26歳の若さで世を去った。没後その作品は散逸し、幻の童謡詩人と語り継がれるばかりとなったが、童謡詩人・矢崎節夫の長年の努力により遺稿集が見つかり、出版された。その優しさに貫かれた詩句の数々は、今確実に人々の心に広がり始めている。 酒井大岳著『金子みすヾの詩を生きる』から (以下の文章中に引用されている詩の出典は『金子みすゞ全集』(JULA出版局)です。なお、詩は、金子みすゞ著作保存会の了解を得て掲載しています。転載する場合は、金子みすゞ著作保存会の許可を得てください。なお、次のサイトや文献も参考にさせていただきました) 金子みすヾの世界(山口県長門市
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