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コーヒー沼
blog.goo.ne.jp/geeen70
トッド・ヘインズの『キャロル』が評判のようだが、これは僕が去年に観たなかでも特に気に入った映画だった。 いまは遠い時代のラブストーリーであり、同時に一人の女性の成長物語である。女性とデパート、レコードとラジオ、カメラとフィルム、非米活動委員会と盗聴――保守と抑圧の50年代を柔らかに胸を締めつけるような緊張美で飾りつけて洗練を極め、たまらなく魅惑的だ。全編が名演技、名演出の連なりからなり、撮影、衣装、美術、音楽に至る入念な時代考証とその繊細な表現力が観る者に「現在」を忘れさせる。ヘインズは当時のフォト・ジャーナリズムを参考にし、同時にデヴィッド・リーンの『逢いびき』を引き合いに出していると語るが、これは、社会的、政治的な抑圧と困難に直面したアウトサイダーのソウルを描き続けるヘインズの新たな到達になった。心許なく華奢な身体で人の現実を凝視する才能を秘めるルーニー・マーラと孤独で誇り高くゴージャ
「クライテリオン・コレクション」と言えばアメリカのソフト・メーカーの最高峰。 正式には「THE CRITERION COLLECTION」。 昔は高品質レーザーディスク・ソフトで知られ、買い求めたものだが、いまは小さなDVDになった。 素晴らしい会社で、世界中の名作・傑作をフォローし、ここから出ると「殿堂入り」を果たした気がする。 大手メジャー作品の発売は難しいだろうが、とにかく思わず感動してしまうラインナップなのだ。 画質は保障済みで特典映像のクオリティも高い。 しかし何と言ってもパッケージのデザイン・ワークが見事なのである。 パッケージだけで欲しくなることもしばしばであり、実際それほどでなくともお気に入り作品のような気がしてくる。つまりデザインの魔法にあてられてしまうのである。 例えばこれ。 サミュエル・フラー「拾った女」 フラーの中でも上位に入る好きな作品だが、このデザインにはしびれ
ジョン・ブアマンという面白い監督がいるのだが大抵は忘れているか、最初から知らない。 スタンリー・キューブリックの友人で、なんと坂東玉三郎が好きな監督としてあげる人物である。 しかし、日本ではあまり取り上げられない映画作家の一人なのだ。 ブアマン映画は基本的に奇抜である。 二度同じ事をやらない。ハードボイルド、戦争、冒険アクション、SF、ホラー、と娯楽映画に欠かせない王道的なジャンルばかりなのだが、共通して映像感覚が変わっていて、どれもが定型から逸脱した奇矯な作品ばかりなのだ。 リー・マービン主演の「殺しの分け前/ポイントブランク」マルチェロ・マストロヤンニ主演の「最後の栄光(LEO THE LAST)」、マービンと三船敏郎の二人しか出ない「太平洋の地獄」、ジョン・ボイトとバート・レイノルズ共演の「脱出」、ショーン・コネリーの「未来惑星ザルドス」、リチャード・バートンの「エクソシスト2」、ア
北沢夏音さんに誘われて、60年代に金坂健二が撮ったアングラ・フィルムを特別に見せてもらった。内容に触れることはできないが、久々フィルムの色香を味わうことができた。なんというか「フィルムの流れ」を観ているだけで飽きることがないのである。 しかし「金坂健二」と言ってみたところで分からない人が多いに違いないのは、彼が忘れられた人物だからである。60年代に映画評論家・映画作家として前衛活動を展開。アメリカでカウンターカルチャーを至近距離で目撃し、それを迫力ある写真に収めつつ「キネマ旬報」などで現地からの実況報告を書き続け、70年代にはジャーナリスティックで尖がった映画評論家として人気を博した。 僕が金坂健二を知ったのは小学校の5年生頃だった。80年代初頭に恵比寿の駅前に「シネプラザ」という店があって通っていた。店内に「スペース50」という自主映画上映スペースを併設していて、大学の映研だろうか、よく
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