●前書 本論及び三編の考察は、先の二編に比べると抽象的な考察ではなく、具体的な事柄や言説に色々と言及するために、最初にどういったことに触れるのかまとめておく。本論「統合と主権」ではヨーロッパにおける中央集権化の歴史を概説し、近代国家が齎した利点を指摘する。つまり、国家なくして市民社会は近代的足り得ないことである。「主権と契約」では所謂“契約説”の論者について概説する。一括りにされやすいホッブズ、ロック、ルソーらの思想の違いを説明しつつ、その問題点について大雑把に述べておきたい。加えて“契約説”の根幹概念である“主権”において、ホッブズから今日に至るまで、論理の飛躍点があることを指摘おきたい。つまり、“人民主権”と“国民主権”の違い、“国家形成の契機”と“統治権力の正当化”の違い、それらの論理的整合性の問題などである。これらの問題から、“契約説”を超えるフィクションが必要であると考えているの