7月6日から7日にかけて愛知県・徳川園で行われた将棋の第65期王位戦第1局。藤井聡太王位(七冠)と挑戦者の渡辺明九段による対局は、千日手指し直しの末、想像をはるかに超える激闘となり……。“灼熱の名古屋決戦”を現地取材した記者が観戦記を寄せた。(全3回の1回目/#2、#3へ) 「ええっ、マジですか」大盤解説会で思わず漏れたホンネ 「ええっ、マジですか。驚いた……」 大盤解説会の壇上に立つ高見泰地七段は、後手番の渡辺明九段が指した72手目にそんな声をあげた。客席を意識した大袈裟なリアクションではなく、棋士としての素直な反応のように見えた。高見の驚きに、中日ホールを埋めていた約600人の将棋ファンは小さくざわめいている。 王位戦は2日制で行われる対局である。 その2日目の午後を迎えても、進行はスローペースのままだった。両者の駒がほとんどと言っていいほどぶつからず、1日目の午後に歩を一つずつ取り合