ベルギーの公用語は、主にオランダ語とフランス語。日本のアンソロジーなどでも、ベルギー単独で編まれるということはあまりなく、フランス文学の一部として扱われることが多いようです。とはいえ、ベルギーにも、独特の魅力を持った作家が何人もいます。今回は、そんなベルギー作家の怪奇小説を見ていきたいと思います。 ベルギーの怪奇小説作家といえば、いちばんに名前が挙がるのが、ジャン・レイ(1887~1964)です。ミステリ、SF、怪奇小説など、大衆小説のいろいろなジャンルで創作を行いました。日本でも比較的紹介に恵まれています。主な邦訳作品を挙げてみましょう。 『マルペルチュイ』(篠田知和基訳 月刊ペン社) 『新カンタベリー物語』(篠田知和基訳 創元推理文庫) 『幽霊の書』(秋山和夫訳 国書刊行会) 『ゴルフ奇譚集』(秋山和夫訳 白水社) 『ウイスキー奇譚集』(榊原晃三訳 白水社) 『怪盗クモ団』《ハリー・デ