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春が来て暖かくなってきました。いよいよ生き物達が活動し始める季節の到来です。 さまざまな生き物を観察するのにうってつけの時期ですが、今回私は「クモの巣」ウォッチングをおすすめしたいと思います。 クモはご存じの通り、自ら糸を出して巣を作ることが知られていますが、そのクモの巣の種類にはさまざまなものがあって、実に奥深いものです。そんな知られざるクモの巣の世界を、リレー連載でご紹介します。 クモの巣とは? そもそも「クモ」についてご存じない方も多いと思います。 クモは正式には「クモ目(もく)」と呼ばれる仲間で、大きな括りとしてクモガタ綱(こう)というグループに属しています。このクモガタ綱にはクモ目以外に、サソリ目やダニ目、ザトウムシ目などが含まれています。クモは全世界に4万9000種もの種がおり、日本では1700種ほどが知られています。クモはお尻の先にある糸疣(いといぼ)からタンパク質でできた糸
世界には約1万種もの鳥類がいるのに、歯を持つ鳥は1羽もいない。なぜ鳥には歯がないのか? 化石鳥類の研究者・青塚圭一さんが、化石の記録からその謎に迫ります。 世間はバレンタインだというのに素敵な異性との出会いがないことと、歯並びを矯正すべきか否かが最近の悩みである。前者の悩みは鳥類も共感してくれるだろうが、後者の悩みなど鳥たちにとっては知る由もない。なぜなら鳥は歯を持っていないからである。え!?と驚いた方は改めて鳥の口先に注目してもらいたい。彼らはその食性に応じて個性的なクチバシを持っているが、口を開いたところで歯は1本も生えていないのである(図1)。
ウオノエ科には様々な形や色の種がいます。左から、フグノエ、ナミオウオノエ、ウオノコバン、マンマルウオノエ、ソコダラエラモグリ(※ソコダラエラモグリの色は標本固定の影響もあります)。 著者は子供の頃から昆虫や恐竜よりも魚が大好きで、それが高じて、大学で魚の生態について研究をしてきました。そんな魚少年だったはずの著者がひょんなことからはまってしまった「沼」が、魚に寄生するウオノエという生き物です。ウオノメじゃありませんよ、ウオノエです。漢字で書けば「魚之餌」。魚の口の中から見つかるので、昔の人は魚の食べ物(餌:え)だと思ったのかもしれません。ところが実際はその逆で、食べられているのは魚のほう。その上、ウオノエの仲間にはタイノエのように魚の口の中に寄生する種類だけでなく、ウオノコバンやサヨリヤドリムシなど魚の口の中以外に寄生する種類もいて、形や色も多様です。今回は、そんな「かっこよくて愛くるしい
Twitter上でたくさんの美しい生物の写真を発表しているゆうじ(@sea_slug_0509)さん。色鮮やかな海の生物撮影のコツは…なんと「白いお皿」だった!? 海の生物を見つける醍醐味と、生物を写真におさめるコツを解説していただきました! 磯にいる生きものを見つける楽しさ 大潮の日に磯のタイドプール(干潮のときに岩などのくぼみに海水がたまる場所)を覗くと、いろいろな生き物が見つかります。一見何もいないような小さな潮溜まりに転がる石を動かしてみると、小さなカニやエビ、たくさんの種類の小魚や美しいウミウシ、得体の知れないゴカイのようなウネウネとして生き物など、驚くほどさまざまな生き物が簡単に見つかります。 さらに一歩踏み出してシュノーケルを付けて少し海に潜れば、そこにはさらに見たこともないようなたくさんの生き物がいることでしょう。私の最近の趣味は海で生き物を探し、見つけた生き物を一匹一匹図
ダイビングや磯遊びで人気の生きもの、ウミウシ。 ゆっくり移動する可愛らしい動きが特徴的ですが、広い海の中でどうやって繁殖相手を見つけているのでしょうか? ウミウシ研究者の中野理枝さんに、ウミウシのユニークな戦略について解説していただきます。 ヒトは雌雄異体 最近話題になっている言葉に「LGBT」があります。LGBTとは、Lesbian(レズビアン:女性同性愛者)、Gay(ゲイ:男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル:両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー:性別越境者)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつです。LGBTはヒトの性のあり方の多様性を示していますが、生殖機能的にはオスとメスのみに明確に分かれています(例外もあります)。ヒトのような動物を雌雄異体の動物といいます。 雌雄異体動物の場合、オスには雄性生殖器、メスには
前編では、小笠原諸島での調査でツバメの飛来を確認した重原さん。後編では、本当にツバメが南から北へ渡っているかどうかを自ら調査に乗り出し明らかにします。観察記録のデータから島伝いの渡りのルートを割り出し、越冬地のヒントを求めにパラオにまで向かったその結果は……!? 私は「小笠原諸島や伊豆諸島で観察されるツバメがどこか南の越冬地から飛来するのであれば、南にある島ほど初認の日が早いはずだ」、と仮説を立てて、『小笠原諸島〜伊豆諸島 ツバメの渡り調査』を始めました。 南の島ほど初認日が早い 具体的な調査の内容は、ツバメを観察したら、いつ、どこで、だれが、何羽、どんな様子だったか、という5項目を満たした観察記録をメールで送っていただくというものです。対象地域は広い太平洋に南北に連なる島々。伊豆諸島の大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島と小笠原諸島の父島、母島の計11島です。
初夏。そろそろツバメのヒナが巣立つころですが、春先に日本各地へやってきたツバメはいったいどこからやってくるのでしょうか?その謎を解く調査について、『小笠原諸島〜伊豆諸島 ツバメの渡り調査』の代表である重原 美智子さんに解説していただきます。 春になったら南の国から渡ってきて、商店街や駅、住宅の軒先などに巣をつくり人のすぐそばで繁殖する身近な野鳥の代表格のツバメ。ツバメと名がつく鳥には、ツバメ科のコシアカツバメ、イワツバメなどのほかに、アマツバメ科のアマツバメなどもいますが、ここでは小笠原諸島や伊豆諸島でも観察される和名ツバメ(学名Hirundo rustica)がどこからやって来るのか、それを解き明す調査『小笠原諸島〜伊豆諸島 ツバメの渡り調査』についてお話しします。
はじめまして、とある魚屋で働いている泉と申します。今年は昨年よりもサンマや鮭など秋の海の幸が豊潤ですが、皆様お魚はお好きでしょうか。 ここ数年さまざまな動きのある水産業界ですが、その中でも大きかった事件の一つが2017年のアニサキス騒動です。著名な芸能人の方の被害報告から始まり、その劇的な症状とショッキングな絵面が各種メディアでそれはそれは大々的に報じられました。……結果、魚屋や一部の寿司屋界隈では売上が極端に落ち込み、苦しい年となったのでした。 自分の中で、この騒動は一般消費者の方の寄生虫に対する認知度や誤認について改めて考える契機にもなりました。というのも、魚屋にとってアニサキスをはじめとする魚類寄生虫というのは、本当に日常的に、毎日のように目にする存在なのです。だからこそ、件の騒動があそこまで直接的に売上に影響するということが衝撃でした。 野菜と違い、農薬を撒いたりできない天然の魚介
夏の夕暮れ、河川敷にあるグラウンドで僕はある生き物が現れるのを待っていた。 時間は18時ごろ。ちょうど帰宅ラッシュの最中で、近くに掛かる橋にはたくさんの車が走っている。 グラウンドに腰を下ろし、しばらくその橋の方をぼんやりと眺めていると、橋の手前の草やぶから茶色くて犬のような生き物がひょっこり顔を出した。僕が待っていた生き物、キツネだ。一匹が出て来ると続いてもう一匹のキツネが飛び出してきた。彼らは兄弟ギツネだ。 キツネは春先に巣穴を掘ってその中で子育てをするが、巣穴を使うのは子ギツネが小さい頃だけだ。河川敷を緑が覆いつくし、子ギツネが親ギツネより一回り小さいぐらいの大きさになるころには巣穴は使わなくなり、草やぶの中を寝床にする。親ギツネとは別々の草やぶで寝ていることが多いが、兄弟とは割りと近くにいることが多い。 だが、キツネは大人になると単独で活動する。夏が終わると子別れの季節がやってきて
オックスフォードのパブ、The Eagle and Child.その名の通り、ワシが看板に描かれている 鳥は色や形の美しい種が多く、モチーフとしてよく使われる。ただ、そのほとんどが「小鳥」とか「鳩」とわかる程度の表現で、メジロだのシジュウカラだのという種までは識別できないことが多い。でも鳥好きになると、ただの「小鳥」では満足しなくなり、自分が好きな特定の鳥のモチーフを探したくなる。 日本ではメジロなどの身近な鳥でも、それをモチーフにした商品や店名は滅多に見かけない。新幹線に「はやぶさ」、東京湾を走る電車に「ゆりかもめ」はあるが、野鳥のハヤブサ、ユリカモメという種に結びつくほどの、姿かたちのイメージがわかる絵は描かれていないように思う。 わたしは2010年からイギリスの大学に留学し、3年間ケンブリッジで暮らした。イギリスはバードウォッチング発祥の地と言われ、鳥類学も鳥類保護も盛んな国だ。大学
すぐ近くに棲んでいるあの子たち 2018年6月14日 愛知県岡崎市にある人間環境大学。校舎下に仕掛けた自動撮影カメラに、なにやら小さな動物が写った。
秋の深まる頃、風物詩の昆虫といえば、ミノムシ(蓑虫)を思い浮かべる人は多いと思う。私たちにとってそんな馴染み深いミノムシ、でも意外とその特徴や生活史については良く知られていないが現状ではなかろうか。 そこで本稿では、日本産ミノムシについて紹介していく。 ミノムシとは? そもそもミノムシとは、ミノガ科というグループに属する蛾の幼虫の総称で、日本で約40種類ほどが知られている。 その中でもよく見かけるのが「オオミノガ」「チャミノガ」の2種である。 蛾の仲間は、冬期の過ごし方が、卵、幼虫、蛹、成虫とさまざまであるが、日本産ミノガ科については、秋に成虫になるごく一部のミノガ(ネグロミノガ、アキノヒメミノガ)を除いてほとんどが幼虫で越冬する。 ミノムシはどのように簑を作るのか 一生を蓑の中で過ごすオオミノガの雌成虫は、蓑の中で産卵する。初齢幼虫は蓑の中で孵化し、孵化直後の幼虫は、まだ蓑をまとっていな
秋といえば、紅葉のシーズン。どうして秋になると葉の色が変わるのでしょうか? 美しい紅葉の条件、色素による葉の変化のメカニズムを、わかりやすくご紹介します。 そもそも葉が緑色に見えるのはなぜ? 葉は表面だけでなく内部も緑色。葉の断面図を見ると、葉は複数の細胞層からなり、それぞれの細胞にはだ円形の葉緑体がぎっしりと詰め込まれていることがわかる。葉緑体は光合成を行う装置で、緑色の色素であるクロロフィル※を含んでいる。このクロロフィルこそが、葉の緑色の正体だ。 ▶クロロフィル:緑色の光合成色素。光エネルギーを吸収する役割をもつ。 光合成では、太陽の光エネルギーを使って二酸化炭素と水からグルコースと酸素が作られる。このとき、光エネルギーを捕まえるアンテナのような役割を果たすのがクロロフィルである。太陽光は、葉の表面だけでなく内部まで届く。その光により、内部の細胞にある葉緑体でも光合成が行われる。 落
新たなニホンイシガメの危機、アライグマ その出来事は10年前、2008年に起こりました。異変に気がついたのは、1997年から調査を行っている千葉県のフィールドでカメの越冬期(※)の調査をしている時でした。 胴長靴を履いて小川を歩き、時には這うようにして土手の横穴や淵に手を突っ込んで探りながらカメを捕獲していると、カメの死骸が小川や土手に散在しているのが目につきました。死骸の数は、ニホンイシガメとクサガメの合計で105頭分でした。反対に、生きているカメは100頭で、死骸の数が生きているカメの数を上回るという調査開始以来の初めての記録となりました。カメの死骸の特徴は、1頭を除いて甲羅に外傷がないことが共通していました。他のほとんどのカメは、頭や尾、肢に傷があったり、あるいはそれらの一部が欠損していました。 (※温帯の淡水域に棲むカメの越冬について:カメの場合は冬の間は一部の哺乳類のように冬の間
ここ数年人気が高まっている苔テラリウム。 一目惚れで購入して、自宅や会社に飾っている人もいるのでは? しかし、コケも植物。時間が経つとどんどん生長して買ったときの姿とは違うものになってしまいがちです。 買ったときから伸び放題になってしまったコケは、どう手入れしたらいいのでしょうか? BuNa編集部が、コケ専門店「苔むすび」店主の園田純寛さんに取材してきました! 苔テラリウムをお手入れしたい! ここは、BuNa編集部の冷蔵庫の上……。ひっそりと、小さな苔テラリウムが鎮座しています。 この苔テラリウムは、BuNaの前身であるフリーペーパー『ブンイチvol.2』(※)の企画で作られたもの。製作から約1年半がすぎ、お水をあげているだけなのにモリモリと育っています。 参考:ブンイチvol.2「苔テラリウムをはじめよう! 〜意外と知らない苔の愛で方」
ヨコエビという生き物をご存じだろうか。名前にエビとあるのにエビにあらず。しかもヨコ!? 何ともとらえどころのない生き物だが、じつはヨコになることであらゆる環境に適応し繁栄している動物なのである。 あなたもヨコになって肩の力を抜きつつ、ユニークなヨコエビの世界をのぞいてみませんか。 深海で浮遊生活するトンガリネコゼヨコエビ。SF映画から抜け出してきたようなフォルムと真っ赤なボディーカラーが特徴的。赤い体色は茹でられたからではなく生時の色。海の中では赤色は真っ先に吸収されるため、深海では赤い色が周囲から見えにくい保護色になる。(著者撮影) ヨコエビの「ヨコ歩き」 ヨコエビの最も大きな特徴は、体をヨコにして素早く歩き回ることである。ヨコエビという名はこれに由来する。なぜ、ヨコエビはヨコになって素早く移動することができるのだろうか。 ヨコエビは多くの種類で体長5 mm〜1 cmくらいの大きさだ。ヨ
私は日本列島の湿地帯とそこに暮らす生き物が大好きである。分け隔てなく愛している。最近はドジョウにとり憑かれてドジョウの研究ばかりしているが、ドジョウと同様ににょろにょろとした底生魚であるウナギは特別に好きな部類だ。ウナギは日本中のほぼすべての人が知っている有名な魚であるものの、湿地帯(※)生物としての魅力はほとんど知られていないと感じている。昨今ウナギが激減していると散々叫ばれながら、実際のところ保全がまったくうまく進んでいかないのも、食料としてのウナギとしか捉えていない人が多いからなのではないだろうか。ウナギの本質は、かば焼きではない。生きた魚である。そこで、本稿では湿地帯生物としてのウナギという魚の魅力を、分布・形態・生態の観点から解説したいと思う。 (※なお、湿地帯とは河川、沼沢地、氾濫原、水田、ため池、用水路、干潟、水深6mより浅い沿岸域のことをいう) どこにいる?:分布 ウナギ、
みなさんは「空飛ぶ哺乳類」と聞いてなにを思い浮かべますか? コウモリ……? それとも… 今回、ここで紹介するのは「ムササビ」と「モモンガ」。どちらも空を飛ぶ日本の哺乳類です。 名前くらいは聞いたことがあると思いますが、混同されることもある両種。そんな2種の違いと野外での出会いかたについてこの記事では紹介します。 里の生きもの?ムササビ 最初に紹介するのは、ムササビ。ムササビはリス科ムササビ属の動物で、国内に棲むリスの仲間としては最も大型の哺乳類です。体重は800~1200gあり、体長と同じくらいある尾を入れると全長は約70~80cmもあります。江戸時代には、身体が大きく、まるで襖が飛んでいるみたいなので、「野ぶすま」なんて呼ばれていました。 顔の正面にある特徴的な目は、立体視に長けていて、樹上で生活するのに適していると言われています。
ウミウシの名前はどうやって付けられる? ウミウシは、巻貝・カタツムリ・ナメクジの親戚とは思えないほど軟体の色や模様が美しい。 ウミウシのあざやかな色や模様は、餌の中にあっては隠蔽的効果があり、餌から離れると警告色として機能するという。しかし、それにしても多種多様だ。中にはどう贔屓目に見ても美しいとは言い難い種もなくはないが、なぜか人間の感性に訴える美しさをもつ種が多い。ダイバーだけでなくデザイナーやイラストレーター、造形作家にファンが多いのもうなずける。ウミウシを「海の宝石」と呼ぶ人もいるくらいだ。 全体を宝石にたとえるのはよしとして、では個々のウミウシはどう呼べばいいのか。学名または和名で呼べればいいのだろうが、困ったことにウミウシには学名が提唱されていない種、つまり未記載種が多い。 2018年6月4日に出版した図鑑『ネイチャーガイド 日本のウミウシ』には1441種のウミウシを掲載したの
ヤドカリの「宿」の中はどうなっている? ヤドカリは貝を背負う姿や色彩だけでなく、体の構造も興味深い生物です。そもそも、ヤドカリは空になった巻貝の中に入りますが、貝とは違う分類の生きものです(貝は軟体動物、ヤドカリはエビやカニの仲間の甲殻類)。意外と知られていませんが、世界の巻貝の99%以上は右巻きで、ヤドカリの腹部は貝の中にあるため普段は見えないものの、多くのヤドカリの腹部も右巻きになっていると言われています。 ヤドカリの標本を作製するときはヤドカリの入っている貝(=宿貝)を壊しますが、このときに正面から見ただけではわからない左右非対称な体構造を観察することができます。その際、隠れていた前甲や腹部を主に観察します。外から見えている部分と同じように、隠れている部分の形態ももちろん種類ごとで異なっているからです。例えば、ベニワモンヤドカリは外から見えている派手な模様が腹部にまで続いていますが、
前編では、街中で異彩を放つアロエやサボテン、ツタといった身近な植物たちの暴れっぷりを紹介した。 今回の後編の主役はズバリ、不可思議な姿をした「街中の樹木」だ。 ありふれたはずの樹々が「奇景」になるその理由とは?! 街の環境をしたたかに生きぬいた結果、独特の存在感を放つ「奇景植物」。 第2回目の今回は、驚きの見た目をした街中の樹木を取り上げる。 樹木は人間とは生き方が全然違って、とてもユニークだ。 人間の場合、いま住んでいる場所が気に入らなかったり手狭になれば、別の場所に引っ越すことができる。しかし樹木の場合、生えている場所から自らの意志で動くことはできないので、体の形を変幻自在に変えて周辺環境への適応をはかる。たとえば強風が吹く場所だと風が当たる部分は成長点が潰れるため、風の吹く方向に幹がねじれたり、雪の多い場所では雪に押され根が曲がったりする。 写真のカイヅカイブキのように、樹木のいまあ
街かどで肩を並べる植木鉢。道路のすみっこから生える植物。 日々誰もが目にしているはずだけど、とりたてて注目されることがない存在かもしれない。 私はそういった、路上で行われる園芸活動や、路上で育ってしまった植物が妙に気になり、「路上園芸」と勝手に呼びひっそり愛で鑑賞している。 「植物」というと、物言わず、可愛らしく、見ていると癒されるといったイメージをもたれがちのように思う。確かにそういう一面もある。しかし油断してはならない。街中には時として、とんでもない姿の植物たちが紛れ込んでいる。 この記事では、街の環境をしたたかに生きぬいた結果、独特の存在感を放ち、街の景観にちょっとしたスパイスを与える植物たちを、親しみと愛情を込め「奇景植物」と呼び、2回に分けてその姿形の謎に迫りたい。1回目は、街で見かける身近な植物を取り上げる。 街かどの暴れん坊・アロエ 最初の街かど奇景植物は、路上でおなじみのア
【後編】ただの図鑑とは言わせない!! フリーターになってまで作った『ハエトリグモハンドブック』のハンパないこだわり 前編では、悪戦苦闘のハエトリグモ撮影と飼育秘話を語っていただいた。 後編は、新種発見にかける情熱と採集への飽くなき執念に迫ります。 さて、前編ではいかに魅力的にハエトリグモを撮影するか、その異常なまでのこだわりについて書いたが、後編では採集の話を書いていこう。私はこの「採集」という行為が何よりも好きだ。前編にもあるように、『ハエトリグモハンドブック』は日本産のハエトリグモの全種を掲載することを目標に制作していたので、国内の色々な場所を採集で訪れた。その目的のためにフリーターになってしまった私を、ある知人は「くものプーさん」と称した。じつに言いえて妙だと思う。 日本からは100種以上のハエトリグモが記録されているが、それらは種によって分布や生息環境の好みが違う。森を好む種と草地
【前編】ただの図鑑とは言わせない!! フリーターになってまで作った『ハエトリグモハンドブック』のハンパないこだわり 2017年6月、足かけ5年の制作期間を費やした『ハエトリグモハンドブック』がついに出版された。日本から確かな記録のある105種のうち103種を掲載し、私のハエトリグモへの愛をこれでもかと注ぎ込んだ、入魂の一冊である。今回、制作の舞台裏について書く機会をいただいたので、その狂気と称されるほどのこだわりを紹介したい。(筆者:須黒 達巳) まず、本書のコンセプトは「野外で生きているハエトリグモを相手に、種名をつきとめる図鑑」である。 そのために、「可能な限り日本産の全種を」「生きた状態の写真で」載せることにした。しかし、生きているということは、動き回るということだ。つまり、それだけ撮影には手間がかかる。ならば、標本を写真に撮るのではだめなのだろうか? だめなのだ。 クモは標本を作る
世紀の大発見!? 昨年(2017年)、対馬でカワウソが発見されたとの一報が入りました。 カワウソ学者の誰も予想していないことが起こったうえ、そのカワウソは健康そのものに見え、筆者は絶句しました。さらに、発見の一報を受けた筑紫女学園大学の佐々木浩教授らによる現地調査によって糞が採取され、足跡も発見されたことから確実にカワウソが生きていることがわかり、本当に驚きました。 なにがそんなに衝撃的なのかと言うと、日本に棲んでいたカワウソ、つまり「ニホンカワウソ」は1979年に高知県で目撃されたのを最後に我々の前からは姿を消し、2012年には環境省が絶滅を宣言している動物なのです。 ではなぜ、ニホンカワウソは絶滅したのでしょうか? その理由としては明治から昭和初期にかけて、毛皮の利用だけでなくカワウソの肝が結核に効くとされ、国内消費のために乱獲され数を大きく減らし、さらに戦後の農薬の誤った利用・廃棄が
新緑の季節となりました! 自然が大好きな皆さんの中にはブナ林へ森林浴に出かける方も多いことでしょう。どっしりとしたブナの幹の表面のモザイク模様を眺めて見上げていくと、萌黄色の若葉が青空に映えています。そして息を大きく吸い込み目を閉じ、ゆっくりと息をはきます……。あぁ、やっぱり森のなかは街なかよりもいいなあと、心の中でつぶやいて、なんとも贅沢な至福の時間を噛み締めるのです。 私は地衣類研究者。日頃の「地衣類の地位向上」活動によってジワジワと認知されてきているようになったものの、未だに「地衣類って何ですか?」、「ああコケの仲間でしょ」のように言われてしまいます。実は、冒頭の本文の中にすでに「地衣類」を織り込んだのですが、お気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんし、そうでない方もいらっしゃるかもしれません。「ブナの幹の表面のモザイク模様」。そう、これが地衣類の正体なのです。「え、モザイクは
近年、各地のクマ出没ニュースを目にすることが増えた。「人がクマのすみかを奪ったからだ」「山が荒れているせいだ」という声をよく聞くが、果たしてどうなのだろう? 理由はその逆のようだ。クマは全国的に増えてきていて、分布域も広がっている。本州・四国に生息しているツキノワグマに関して言えば、1970年ころは各地で個体数が減少し、分布域も小さくなっていた。そのため、絶滅を懸念して、狩猟や駆除の自粛ないし禁止措置がとられていた。しかし、2000年に入ったあたりから各地で出没が相次ぐようになった。いわば、絶滅を回避するための保護策が成功し、むしろ増えすぎてしまったとすら言える。 分布域が広がっている理由としてよく言われるのは、中山間地域における里山の放棄と耕作放棄地の増加である。かつては山菜や薪などの経済価値をもたらしていた里山も、近年の生活環境の変化に伴いその価値を失い、放棄される地域が増えてきた。こ
生きものの意外な姿や、知られていない生き様についてご紹介する連載「あなたの知らない○○ワールド」がスタート。 第1回は「ウニの世界」。食べるだけではなく、美しい模様の殻が隠されているウニ。 ふだん食用のウニ以外を見ることはそうそうないが、ウニ自体よりももっとレアな存在のウニ研究者、田中颯さんにウニについて紹介していただこう。 最近人気の「ウニ殻」とは 最近、「ウニ殻」への世間の注目の高まりを感じる。ナチュラル系ショップなどでは海外の極彩色のウニ殻が装飾品として売り出されているし、花屋ではエアプランツのかわいい活着剤としても売り出されている。100円均一ショップでも、リゾート気分に浸れるインテリアとして貝殻と同様に扱われているのを目にするようになった。さらにこの夏は、ウニ殻がモデルとなったマグネットやキーホルダーがガチャガチャで発売されるらしい。 そもそもウニ殻とは、ウニが死亡したあとに棘が
魚に恋や愛は存在するか? ダイバーが見た魚たちの愛の流儀 筆者:阿部 秀樹(あべ ひでき) 人間以外の生きものにも、恋や愛は存在するのでしょうか? 長年ダイビングで海の魚たちの様子を見てきた阿部秀樹さんは、...
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