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アメリカ大統領選
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グーグル・ディープマインドは、設立から15 年を経て世界的なAI(人工知能)研究開発企業へと成長した。 同社の共同創業者でCEOのデミス・ハサビス(48)は、チェスの神童やカルト的な人気を誇るビデオゲーム「テーマパーク」の開発者、優れた神経科学者などの多彩な顔を持つ。 さらにハサビスは2024年10月、ノーベル化学賞の3人の共同受賞者のひとりに選ばれた。AIソフトウェアAlphaFold(アルファフォールド)の開発によって、既知のすべてのタンパク質の構造を予測するという生命科学分野の長年の課題解決に寄与した功績が認められたのだ。 「知の解明」というミッションを掲げて設立されたディープマインドは、人間の認知能力を模倣するだけでなく、それを凌駕するAIシステムの構築を目指している。 グーグルがAI開発の中枢にディープマインドを据えたのは、OpenAIの対話型生成AIツール「ChatGPT」の存
大きな目に、ちょっと不機嫌そうな表情を浮かべる女の子──そんなインパクトのある奈良美智の絵を、本の表紙やポスターなどで目にしたことがある人は多いだろう。スペイン紙「エル・パイス」の記者いわく、「世界で最もパクられる画家」である奈良は、どんな思いで創作活動に励んでいるのか。 子供の頃は内向的だった多くの人がそうであるように、アーティストの奈良美智(64)はいまではむしろ気さくな印象を与える。彼の見た目は、彼が描く険しい表情で、怒ったり、悲しんだりしている子供たちとは正反対だ。 銀髪にスポーティーなキャップをかぶり、スペインのビスカヤ県にあるサーフィンスクールのロゴが入った目の冴えるような黄色のスウェットを着ている。「こちらで買ったばかりなんです」と奈良は言う。 私たちは、ビスカヤ県ビルバオにあるグッゲンハイム美術館にいる。ここでは11月3日までスペインで初となる奈良の大規模な個展が開催された
「仮想通貨の中心地」宣言を受けて 代表的な仮想通貨で知られるビットコインが初めて7万6000ドル(約1155万円)に到達した。米国の大統領選挙でトランプが勝利を確実にしたことで、仮想通貨に追い風となると投資家が見込んだからだ。 ビットコインだけでなく、イーサリアムやドージコインなどのほかの仮想通貨もそろって上昇した。また、仮想通貨取引所のコインベースや、仮想通貨取引を提供するネット証券ロビンフッドの株価も急騰した。 トランプは以前は仮想通貨に懐疑的だったが、選挙前にその姿勢を変え、仮想通貨を支持するようになった。彼は米国を「地球上の仮想通貨の中心地」にすると宣言し、ビットコインの「戦略的備蓄」を創設することを公約に掲げている。
英国に住んでいたダニエラ・リベラーニは、鼻が詰まったような感覚と、断続的な鼻血に苦しむようになる。最初はそれほど深刻に受け止めていなかったが、ある日、鏡に映った自分の鼻の穴からぶら下がる物体を見て、思わず恐怖で後ずさる──。 鼻血が止まらない 2014年9月のことだ。私はエディンバラにある高級ホテルのフロントで働きはじめたばかりだった。当時、私は頻繁に鼻血を出していたため、シフトの時間のほとんどを、紙ナプキンを鼻の穴に押し当てながら過ごしていた。その理由はすぐに明らかになった。 数週間前、私はベトナムを旅行していた。モペッド(ペダル付きの原付きバイク)をレンタルし、それを運転しながら楽しい時間を過ごしていた。乗りはじめてすぐに衝突事故を起こしてしまったが、幸いにもヘルメットを着用していたため、頭を少しぶつけただけで済んだ。 それから数日後、右の鼻孔から断続的に血が出るようになった。私はモペ
ドナルド・トランプによる第一次政権時代、彼のことを最も心得ている世界のリーダーがいたとすれば、それは当時の日本の首相、安倍晋三だろう。安倍はトランプの「ゴルフ好き」、「ハンバーガー好き」、そして「お世辞好き」を利用して、トランプの懲罰本能から日本を守るのに役立てた。 2016年、トランプが当選すると、安倍は他国の首脳に先駆けてニューヨークのトランプタワーを訪ね、ゴルフクラブを贈った。就任式が終わると彼はすぐに、世界の舞台で新人を導く長老の役割を引き受け、度重なる電話にも親身になって耳を傾けた。就任から数週間後、フロリダ州マー・ア・ラゴにあるトランプの別荘を訪れ、二人は一緒にゴルフを楽しみ、お互いの夫人も交えて食事を共にした。 それだけではない。トランプが国賓として来日した際には、大相撲で「米大統領杯」を用意し、即位したばかりの天皇に会う「初めての国際的指導者」という名誉も与えるなど、もてな
「西洋世界」ではいま、人工知能(AI)の発展がさまざまな不安を呼んでいる。一方、「アラブ世界」と呼ばれる場所では、そこまでAIが問題視されていないように思える。これはいったいなぜなのだろうか。2024年、フランスの権威ある文学賞「ゴンクール賞」を受賞した、アルジェリア生まれの作家・ジャーナリストのカメル・ダウドは、その理由について「偽書や匿名文書が伝統だからではないか」と考える。 どうして「アラブ世界」と呼ばれる場所では、「人工知能(AI)」は議論の種にならないのだろうか。 湾岸諸国の輝くガラス張りの建物は、石油以後の未来を保証するものとしてAIを受け入れているが(アラブ首長国連邦は「AI国務大臣」がいる世界最初の国だ)、そこを越えてしまうとこの「機械」は遠ざけられており、この世界でAIに関する問いかけがなされることは滅多にない。 全知全能の西洋の機械が生み出した、『悪魔の詩』のような論争
2024年10月1日、世界初の高速鉄道として1964年に開業した新幹線は60周年を迎えた。そしてその時期に合わせ、北陸新幹線に乗車し東京から長野へと向かった、英国人名物記者のレオ・ルイス。新幹線にやたらと思い入れのある筆者が、日本人にとって新幹線の存在が持つ意味を考察する。 北陸新幹線は、出発予定時刻の午前6時16分の5分前に東京駅に入線した。その姿は、早朝にはまったく不釣り合いなほど美しかった。ブルーとゴールドの車体の先端はワシのくちばしのような弧を描き、何百ものオフィスの窓に反射した朝日の光のかけらがその表面でリズミカルに踊る。 エンツォ・フェラーリを手掛けた日本人デザイナー奥山 清行が監修したパールホワイトに輝く車両は、ミリ単位の精度でホームドア前に停止する。ドアが開き、私は柔らかなリクライニングシートに腰を沈めた。駅のホームで買った完璧な卵サンドの包みを開き、時速260キロで疾走す
世界中の極右主要メンバーたちが、ドナルド・トランプの米大統領選勝利を祝い、前大統領への賛辞が、リオデジャネイロから、ブダペストから続々と送られてきている。 トランプの勝利を「シャンパンボトル数本」で乾杯すると約束していたハンガリーのオルバン・ビクトル首相は、「世界が切望していた勝利だ!」と称賛した。 リバタリアンのアルゼンチン大統領ハビエル・ミレイ(「アルゼンチンのトランプ」とも呼ばれている)は、自分が支持するトランプの「選挙での圧勝」に敬意を表した。ミレイはXにこう書いている。 「さあ、メイク・アメリカ・グレート・アゲイン。アルゼンチンがご任務遂行の頼りになるのはご存じのとおりです」 .@realDonaldTrump congratulations on your formidable electoral victory. Now, Make America Great Again.
2024年11月5日に投票がおこなわれた米大統領選で、ドナルド・トランプ前大統領が2度目のホワイトハウス入りを果たすことになった。 この勝利は、世界的な波紋を呼ぶと予想されるが、彼の支持者や前国家情報長官代理のリチャード・グレネルが言うように、トランプの外交政策は「予測不可能」だ。米国の同盟国も含め、「次に何が起こるか」、誰もが予測に苦労している。そんななか、米「ワシントン・ポスト」紙が、今後、世界が受けるであろう影響、そして各国の懸念を7つのポイントにまとめた。 ①イスラエルは中東での戦争拡大の「背中を押される」かもしれない トランプは前政権時代、在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムに移すなど、親イスラエル的な姿勢を見せている。また、プライベートでもイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフに支援を申し出ており、最近も電話で「やるべきことをやれ」と話したとされる。 ②米国からの支援
世界を騒がせ続ける男イーロン・マスクが、わが子たちとその母親たちを住まわせる屋敷を作ろうとしているようだ。それはどんな場所で、そこに住むのは誰なのか──。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が現地を取材した。 米テキサス州オースティンにある閑静な超高級住宅街の通りに、ひときわ目立つ物件がある。1300平米ほどの豪邸で、イタリアのトスカーナにある丘からそのまま引っこ抜いてきて、そこに移築した別荘のように見える。 ここに一風変わった家族屋敷の礎を築こうとしているのが、世界一の富豪にして、大統領選を戦うドナルド・トランプ前大統領のおそらく最も重要な支持者であるイーロン・マスク(53)だと、彼の計画に詳しい関係者4人は語る。 この数ヵ月のあいだでマスクは近しい人たちに、自分の子供たち(少なくとも11人いる)とその母親3人のうち2人を隣り合わせの物件に住まわせることを考えていると語っている。 そうすれば、
トランプ氏、米大統領選でどう勝ったか ドナルド・トランプ前米大統領は、彼が大統領の職に復帰するには不適格だと民主党が主張した点を逆に強調することで、ホワイトハウスへの道を切り開いた。 共和党候補のトランプ氏は選挙運動を通じ、大げさで下品、そしてしばしば事実に反する発言を繰り返した。2020年の米大統領選で勝利を奪われたと主張し、2021年1月6日の議会襲撃に関する責任を否定し、ジョー・バイデン大統領が自身に対する刑事起訴と重罪の有罪判決を仕組んだと述べた。 民主党と同党の大統領候補のカマラ・ハリス副大統領はトランプ氏の言動を強調し、同氏を米国に危険な存在と規定しようとしたが、トランプ氏の有権者に対する影響力を弱めることはできなかった。同氏の法的問題は、出馬の足かせになるどころか献金を増やした。同氏は全ての事件で不正行為を否定している。 自らの運命を変えたい米国の有権者は、国内経済を活性化し
コロナ以降、日本アニメの人気は海外で急上昇しており、10月に地上波での放送が始まった『ドラゴンボールDAIMA』はほぼリアルタイムで世界配信されている。海外ファンにとっても画期的なこの出来事を機に、日本アニメが世界市場で快進撃を続けるカギを英紙が考察している。 2018年、まだ一介の衆議院議員だった石破茂は、ピンクのボディスーツにぶかぶかのパンツ、紫のマントを着用し、地元・鳥取県のイベントに出席した。 先頃、石破が首相に就任した際、この奇抜な服装をした6年前の写真がいっとき注目を集めた。一部の国民はこの歴史に残るいで立ちを冷笑したが、これが何のコスプレかを知る人たちは大喜びした。 2018年4月に『ドラゴンボール』のキャラクター、魔人ブウに扮した石破。この頃は「党内野党」と呼ばれ、5ヵ月後におこなわれた自民党総裁選で安倍晋三元首相に敗れている 真面目なイメージの強い石破が、『ドラゴンボール
2024年8月、韓国・仁川のアパートの地下駐車場でメルセデス・ベンツのEVが火元とされる火災が発生した。約900台の車両が損傷を受け、23人が煙を吸い病院に搬送された。 鎮火には8時間以上を要し、炎の温度は1500度を超えたという。この火災の規模と激しさが注目を集め、韓国内ではEVの安全性に懸念が広がっている。 EVが抱えるバッテリー火災のリスクに自動車メーカーや政府はどのように対応していくべきなのか? バッテリー充電のリスクに懸念 韓国で人気の中古車販売プラットフォーム「K Car」では、今回の火災後にEVを売却しようとするオーナーによる出品がほぼ3倍に増加したと発表している。 ソウルに住む会社員は、「EVは環境に優しい選択かもしれないが、火災が怖い」と述べ、仁川の火災を見てさらに恐怖を感じたと語っている。
韓国人作家のハン・ガンが、今年のノーベル文学賞を受賞した。韓国の文学界はこれをどう受け止めているのか? 彼女の作品を読むなら、まずはどれから手をつけるべきか? 米紙「ロサンゼルス・タイムズ」が報じた。 2024年、世界最高の文学賞であるノーベル文学賞をハン・ガン(韓江)が受賞することを予想していた人物はほとんどいなかっただろう。 韓国の小説家であるハンは、国際的に権威ある賞をすでに数多く受賞しており、広く読まれている。だが彼女は53歳だ。この賞は伝統的に、キャリアの黄昏時にある作家を優遇するものだ。 文芸評論家であり、ハンの母校である延世大学の元教授、チョン・グァリはこう語る。「最有力候補と目されてきた韓国の作家のほとんどは、70〜80代なのです」 「過去のトラウマに立ち向かい、人間の命のもろさを浮き彫りにする強烈な詩的散文」によってスウェーデン・アカデミーから評価されたハンは、123年の
抜粋で充分? ボストンとニューヨークの学校で20年にわたり教師および校長を務めてきたマイク・スコルカは、生徒たちのレベルにかかわらず、本の抜粋が本そのものに取って代わったと語る。 「彼らのレベルを測るすべはありません。座ってトルストイを読めるかどうか、それに尽きます」とスコルカは言う。学生たちの読書スキルを測ることができない以上、教師や教育委員会も彼らを教えることに苦戦している。 文学研究者のキャロル・イアーゴは、アメリカ各地をまわって教師たちにカリキュラム作成の助言をしてきた。そこで出会った教師たちはイアーゴに、『マイ・アントニーア』や『大いなる遺産』のような長きにわたり敬愛されてきた名作文学を教えることをやめたと語ったそうだ。パンデミックにより対面授業からオンライン授業に移行したことも、文学離れを加速させることとなった。 3年生から8年生(中学2年生)を担当する約300人の教師を対象に
経産省のクールジャパン政策課と戦略デザインファームBIOTOPEが協働で実施したリサーチ『海外都市から見た日本ブランドの今と今後の可能性』が2024年5月に発表された。 本連載では同リサーチに参加した現地リサーチャーたちと共に、海外のそれぞれの都市で日本はどのように評価されているのか、さらに解像度を上げて考察していきたい。 今回はロンドンからの視点を、現地の情報に詳しいリサーチャーの田房夏波が紹介する。ロンドンで見えてきた「伝統とモダンカルチャーが共存する」日本のユニークさとは? 日本に「圧倒的にポジティブ」なイメージ 「日本に対してこれだけ良いイメージがすでに広がっているというのに、なぜそんな調査をする必要があるのか?」 経産省のクールジャパン政策課と取り組んだリサーチ「海外都市から見た日本ブランドの今と今後の可能性」に対する、ロンドンの友人たちの反応だ。 海外経験のある読者のなかには、
本を読んだ経験がない コロンビア大学教授のニコラス・デイムスは、1998年から名作文学を読む人文学講義を担当している。デイムスは仕事を愛しているが、状況は変わってしまったという。 この10年ほどで、学生たちが読書に疲れてしまう傾向が見られるようになった。もちろん大学生というものは、もともと課題図書のすべてを読んでくるわけではないが、今回は事情が違う。 現在デイムスが受け持っている学生たちは、一学期に複数の本を読まなければならないことに戸惑っている。デイムスの同僚たちも、同じ問題に直面していた。もはや名門大学の学生でさえ、大学で本を読むという認識がない。 2022年の秋学期、ある1年生がデイムスのオフィスアワーにやってきて、課題図書を読むのに苦労していると相談した。 コロンビア大の人文学部は、多くの課題図書を出す。ときにはきわめて分厚い超大作を一週間で読ませることもある。 しかし、この学生は
iPhoneを手放し、ガラケーに乗り換えてから半年。不便なこともあるけれど、それ以上に筆者の人生はより豊かに、よりロマンチックになったという。 アプリを極限まで削除 iPhoneの使いすぎで虚しさと苛立ちを感じていた私は、この5年間、スマホの機能を基本的なアプリだけに削ぎ落としてきた。 真っ先に削除したのはSNSだ。続いてEメール、ニュースアプリ、果てはウェブブラウザまで……。 機能を減らすたびに解放感が増し、スマホをチェックしたいという飽くなき衝動も徐々に薄れていった。それでも完全に消えたわけではない。 1日に少なくとも15回は天気アプリをチェックしていた。それがスマホに残された数少ないアプリの一つだったからだ。ほとんど空っぽのスマホでも、その存在は無視しがたい。 前々からガラケーに乗り替えたいと思いつつ、いつも口実を見つけて踏み切れずにいた。最終的に背中を押してくれたのは、私の2人の生
日本で#MeToo運動を主導してきた伊藤詩織。その半生を描いた映画『ブラック・ボックス・ダイアリー』が、米国で公開された(日本公開は未定)。彼女が映画を作り終えて米紙に語ったこととは──。 「この次は何をしますか?」 これは伊藤詩織が嫌いな質問だ。 35歳の伊藤はジャーナリストで、9年前に東京のホテルの一室で著名なテレビ局の特派員にレイプされたと告発し、日本における#MeToo運動の顔となった。伊藤はのちに、その男性を相手取った民事訴訟で勝訴した。 いま、彼女の初監督作品である映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』が米国と英国で公開されている。映画は、日本の男尊女卑と闘い続けた彼女の体験を記録したドキュメンタリーで、観る者に勇気を与えてくれる。 伊藤は、性犯罪に対してこれからどう闘っていくのかという質問に疲れてしまったという。「政治家になる予定は? 性犯罪とどう向き合うつもりですか?」と
2024年10月にオープンした「ニンテンドーミュージアム」は、「任天堂」が単なるゲームソフト・ゲーム機器メーカーではなく、世界的なエンタメ・ブランドの地位を確立したことを証明しているかのようだ。米「ニューヨーク・タイムズ」紙の記者が同施設を訪れて任天堂の歴史を辿り、宮本茂に今後の展望を聞いた。 宮本茂(71)が任天堂の全新入社員に向かって要求することは、少なくともここ30年間変わっていない。 「スーパーマリオに関するものすべてが好きなら、3000万本は売れそうなゲームを作ってください」 15億ドル(約2240億円)を超える大ヒット商品を作れという壮大な要求も、宮本の口から出るのであれば致し方あるまい。眉を吊り上げて微笑むこの70代の人物は、ウォルト・ディズニーも顔を赤らめるほど万人から愛されるゲームカルチャーを次々と送り出してきたのだ。 任天堂社内における宮本は、新規顧客層に対する任天堂ブ
第二次世界大戦中、ナチスの強制収容所には女性の看守たちがいた。しかし戦後、彼女たちは女性でありながら強いサディズムを持つ「怪物」として扱われ、その後の歴史研究においても論争を引き起こした。彼女たちは実際にはどんな人物だったのか。その語られ方の変遷とともに、英国の研究者が伝えている。 囚人たちを蹴り殺す「雌馬」 1939年から1945年にかけて、ナチスによる強制収容所の看守の約1割は女性だった。だが、こうした女性看守たちは、ホロコーストにまつわる歴史や文学のなかではほとんど取り上げられていない。稀に言及される場合は、過度に男性化されたサディストとして描かれることが多いのだが、その現実はもっとずっと複雑なものだ。 筆者がはじめて女性看守に興味を持ったのは、「ニューヨーク・タイムズ」のある記事を読んだことがきっかけだった。 それは元ナチスの戦争犯罪人としてはじめて米国から本国に送還された人物、ヘ
養子に迎えたゲイの筆者。愛娘と男性のパートナー、3人で家族になるが、「普通」とは違うそのあり方を理解することは、当事者であっても難しかった。 この記事は、愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」の全訳です。読者が寄稿した物語を、毎週日曜日に独占翻訳でお届けしています。 娘との関係を疑われているのか ゲイで白人の僕は、人種が異なる両親の間に生まれた女の子を養子に迎えた。 そんな僕は、娘の水着を選ぶ段になると、途方に暮れた。母がコットンの糸でかぎ針編みした、赤いツーピースの水着を娘に着せてみたが、スタイリッシュなその水着は、水に濡れるとまったく実用的でないことが判明したのだった。 4歳になった年、娘が「パパ、プールパークに行ける?」と聞いてきた。 「すぐに行こう」と答えてから、僕は後悔した。その準備ができていなかったからだ。娘はぐんぐん成長していて、新しい水着
自民党が衆院選で大敗し、過半数を維持できなかったことで、これまで投資家を惹きつけてきた日本の政策の安定性に疑問が生じている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、今後の見通しについてエコノミストらに取材した。 「安定したマクロ環境が必要」 過去2年間の日本経済とビジネス環境の堅調ぶりは、大量の投資を呼び込むことにつながった。しかし、今回の衆院選に起因する政治的混乱から悪影響を受けるかもしれない。 日本経済は急速に成長しているわけではないものの、パンデミックによる混乱から少しずつ回復してきている。待望のインフレにより、日銀には約20年ぶりに利上げの余地が与えられた。 2023年には、ウォーレン・バフェットが日本の5大商社株を買い増ししたことを受け、投資家らは経済的・地政学的なリスクを抱える中国から、日本に資金を移しつつある。 日本の企業収益は堅調に推移しており、買収提案を真摯に検討するよう求める
10月27日におこなわれた衆議院選挙で自民党が敗北を喫し、早くも首相の座が危うくなった石破茂。しかし、「オタク」として知られる石破が日本のトップであり続けるとするならば、日本のポップカルチャー外交はどう変わるのか? 『新ジャポニズム産業史1945-2020』の著者であり、日本文化に詳しい米国人ジャーナリストが分析する。 叩き上げ政治家の石破茂が数度の挑戦を経て、日本の自民党総裁の座を手にした。海外マスコミでは、自民党に関してはリベラルでもなければ民主主義的でもなく、芯まで腐りきっているというのが大方の見方だが、そのたぐいの扇情的トピックについて話すのは、またの機会にしよう。 事実をありていに書けば、自民党は1955年の結党以来、ほぼ一貫して政権与党として実権を握ってきた。ちなみにポップカルチャーに目がない人のためにいうと、1955年は映画『ゴジラ』第1作封切りの次の年だ。日本の議会政治制度
すっかりコスチュームパーティーが定着した「ハロウィン」だが、もともとは死者が戻ってくる日。そのとき一緒にやってくる悪霊や魔物から身を守るため、仮面を被ったのがはじまりだとされている。 そんなハロウィン本来の、ゾクッとするような気分を味わわせてくれる日本の漫画を、フランス誌「ル・ポワン」が厳選。同誌が選んだ「不気味で、幻想的で、官能的な」5本を紹介しよう。ハロウィンが終わっても、秋の夜長に楽しみたい。 服部未定 『スマイリー』(日本文芸社) 妻に家を出ていかれて以来、鬱屈した日々を送るフリーライターの友司。ある日、二人の女性が現れ、宗教団体「心笑会」の素晴らしさを説く。明らかにカルト教団のメンバーである彼女たちを退けようとした瞬間、彼女らは元妻が載ったチラシを差し出した。いつも笑顔を絶やさぬ信者たちと殺人事件との関係が明らかになり……。 ル・ポワンは、「息もつかせぬスリラー。闇深いカルトへの
2023年4月から、スーダン政府軍(SAF)と準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」による内戦がスーダンで続いている。国民の約3割に当たる1400万人以上が家を追われているいま、同国では世界最大の避難危機が起きている。 性暴力という兵器 戦闘に巻き込まれ、飢餓や病気で命を落とす市民が増え続けるなか、国連は「スーダンの人口の半分以上にあたる約2500万人が、今年末までに、深刻な飢餓に直面する可能性がある」と警告している。 そんななか、大きな問題のひとつとなっているのが、女性や女児を標的にした性暴力の激化だ。国連の独立国際事実調査団がまとめた報告を、カタールメディア「アルジャジーラ」が次のように報じている。
イスラエル最大の精子バンクは、テルアビブのスーラスキー医療センター内にあり、5万3000以上の精子サンプルを保存している。 英紙「フィナンシャル・タイムズ」の詳細な取材記事によれば、そのなかには、「死亡したイスラエル軍兵士たちの遺体から採取された」精子もあり、それが遺族に「死後の生の可能性」を提供しているという。 イスラエル軍は2023年10月11日以降、兵士の遺体から「迅速に」精子採取する選択肢を遺族に提供している。2023年10月7日のハマスによる未曾有の攻撃後9ヵ月間で、死亡した兵士160名と民間人15名の遺体から生きた精子サンプルが採取されたとイスラエル保健省は報告している。
豚肉を食べないユダヤ人だが、豚とは切っても切れない関係にあるらしい。その3000年におよぶ歴史をたどった新著を、米ユダヤ系メディア「フォワード」が“美味しいとこどり”する。 この記事は米大手ユダヤ系報道機関「フォワード」で最初に掲載されたものです。フォワードの無料ニュースレター登録はこちら。 豚肉がコーシャ(ユダヤ教の食規定で認められた食物)でないことは、誰もが知っている。ではなぜ、ユダヤ人はそんなに豚に執着しているのか。 ユダヤ人のほぼ全歴史を通じて、豚は回避できないものだった。古代ローマ時代、支配者たちはユダヤ人に豚肉を食べろとけしかけて、帝国への忠誠を試した。 何世紀にもわたり、反ユダヤ的な彫刻や絵画、装身具には、雌豚の乳を吸ったり、豚に乗ったりするユダヤ人が描かれてきた。ユダヤ人が豚として描かれてきたことさえある。 ユダヤ人も、ときにはこの関連づけを受け入れてきた。そのなかでおそら
米「ニューヨーク・タイムズ」の調査報道ジャーナリスト、アニー・ジェイコブセンは、数々の米政府高官へのインタビューをもとに、「核抑止が破綻したとき、何が起こるか」を、著書『核戦争:一つのシナリオ』で示した。映画『デューン 砂の惑星』シリーズの監督、ドゥニ・ヴィルヌーヴによって映画化も決まっている同作で描かれた、「核戦争」のリアルすぎるシナリオ──それを裏付ける根拠を、仏誌「レクスプレス」がジェイコブセン本人に聞いた。 人類が核戦争の惨禍を免れてきた要因の一つに、「幸運」がある。決定的な瞬間に誰も悪い選択をしなかったこと、過ちや失敗への反省が手遅れにならなかったこと……。これは核軍縮に関する国連のレポートのなかの言葉である。 ピューリッツァー賞の最終選考に残ったこともある米国人ジャーナリスト、アニー・ジェイコブセンは、新著『核戦争:一つのシナリオ』(未邦訳)のなかで「その幸運が失われたとき」を
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