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英国で制作されたドキュメンタリー映画『ザ・コンテスタント』の題材となったのは、90年代後半に人気を博したバラエティー番組「進ぬ!電波少年」の企画として放映された「電波少年的懸賞生活」だ。2023年にはトロント国際映画祭で上映され、今年5月から米国のHuluで配信している。 米紙「ロサンゼルス・タイムズ」が、同作の制作の裏側を、なすび、そして監督のクレア・ティトリーへのインタビューを通じて報じている。 知らぬ間に「国中から見られている」 1998年1月、当時まだ芸人の卵だったなすび(本名は浜津智明。「なすび」という芸名は特徴的な長い顔にちなんだもの)は人気バラエティー番組「進ぬ!電波少年」への出演を決めた。 テレビプロデューサーである土屋敏男の発案で生まれた「電波少年」シリーズでは、若手タレントたちが、数々の体当たり企画に挑戦した。なすびが出演することになった企画「電波少年的懸賞生活」(以下
欧州議会選挙の投票が、6月6日から9日にかけて加盟27ヵ国でおこなわれた。 欧州議会とは? そもそも欧州議会とはEUの立法機関のことだ。加盟国の代表からなる「閣僚理事会」と共に、さまざまな政策分野の立法権を持つ。 議会の最も重要な役割は、EUにおける新しい法律を審査し承認することだ。 欧州議会選挙の仕組み 欧州議会の定数は720議席だ。EU27ヵ国の市民が、各国の代表となる議員を5年ごとに直接選挙で選ぶ。 当選した議員は出身国にかかわらず、各自の政治思想や信条に基づき、欧州議会の会派に加わって活動する。
先ごろ開催されたシャングリラ会合で、フィリピンのマルコス大統領が「Let us return to San Francisco(サンフランシスコに戻ろう)」と呼びかけた。南シナ海で領有権を争う中国を念頭にした婉曲的な表現だが、いったいどういう意味なのか? 日本も他人事ではない有事の可能性が高まっている現状について、ジャーナリストの池畑修平氏が解説する。 中国軍との数少ない対話の機会 例年、上半期にシンガポールで「アジア安全保障会議」、通称「シャングリラ会合」が開催される。理想郷での集いというわけではなく、会場がシンガポールを代表する高級ホテル、シャングリラホテルであることからそう呼ばれるようになった。 英語では「Shangrila Dialogue」。Dialogueは「対話」の意。仲間うちでおこなう「会談」や「会議」に比べて、「対話」には「普段は距離を置く者どうしが意思疎通を図る」という
2024年4月、「世界最高齢の結合双生児」として知られた米国のジョージとロリ・シャペルきょうだいが62歳で亡くなった。彼らが分離手術を望まなかった理由、結合双生児をめぐる医学的・倫理的論争の変遷に米誌が迫る。 知的障がい児の施設に入れられて ジョージ・シャペルは2007年、トランスジェンダーであることを公表し、医学的・倫理的論争の渦中にいる人々に加わった。シャペルにとっては一度通ってきた道だ。 1961年にペンシルベニア州ウェストレディングで生まれた彼は、生まれつき顔の左側と頭蓋骨の一部、脳の一部が双子のロリと結合していた。両親は医師の助言に従い、2人を知的障がい児施設に入れた。 当時、「先天性異常」の子供たちは、活動家のハリエット・マクブライド・ジョンソンが「障がい者強制収容所」と呼んだ施設に預けられるのが一般的だった。施設の目的の一つはそうした子供たちを世話すること、もう一つは世間の目
中国・電気自動車大手BYDの世界進出計画は、太陽電池モジュールから電動バス、電動トラック、電車、果ては複合的な輸送システムまで多岐にわたる。とはいえ、手を広げすぎではないだろうか、と英紙は指摘する。 大きな大きな野望 BYD(比亜迪)本社は、広東省深圳市郊外の坪山区にある。六角形をした建物の堂々とした入口に到着すると、まず訪問者を迎えるのが巨大スクリーンだ。そこには聖書を引用した質問が表示されている。「人類を救ったノアの箱舟はどこにあるのか?」 答えは「ここ」だと言いたいようだ。なにしろ、驚異的な急成長を遂げ、世界中の自動車メーカーの幹部を震え上がらせている企業の入口の目立つところに表示されているのだから。 BYDと、その創業者である王伝福(58)には、自信を見せるだけの理由がある。BYDはいまや、イーロン・マスク率いる世界最強の電動自動車(EV)メーカー、テスラと肩を並べるまでに成長した
「失敗の捉え方」を変えよう ──失敗を生かすための条件といったものはありますか。 第一に、失敗の否認はダメです。自分の失敗を認められなければ、失敗からは学べません。 私は哲学教師として、失敗を認められない学生を多数見てきました。哲学の試験で20点満点中6点という低い評価をつけたときのことです。学生は反抗的な態度をとり、「採点しているのがあのペパンだから、こんないい加減な採点をされたんだ」と言って、自分の答案を見返しませんでした。これが失敗の否認です。これでは失敗を生かせません。 フランスの大企業では、経営陣が会社から追い出されることになっても、高額な手当てをもらって脱出できるゴールデンパラシュートが契約に盛り込まれていることが多いです。要は経営に失敗しても、退職金をちゃんともらえる仕組みになっているわけです。これは失敗の否認が契約に盛り込まれている事例と言えます。 第二に、自分と失敗を分け
シャルル・ペパンはフランスの哲学者だ。パリ政治学院とパリ経営大学院を卒業した後、哲学の大学教授資格を取得。哲学を万人にわかりやすく解説するベストセラーを何冊も書いてきた。ベルクソンといった哲学者の言葉だけでなく、サッカー選手のズラタン・イブラヒモビッチの言葉も著作に引用するのが特徴だ。 ペパンの言葉に通底するのは、思考するきっかけを人に与え、人が物事に疑問を持ち、ときには自分の考え方自体にも疑問を持てるようにするところだ。フランスのビジネス誌「クーリエ・カードル」が、ペパンに「仕事で生きる哲学」を聞いた。 ──哲学を学ぶことは、仕事に役立ちますか。 哲学を学ぶと、自分がいまやっていることが何なのかについて考え、その意味を問えるようになります。それは必ずしも仕事にとってプラスではありませんよね。世のなかには意味を見つけるのが難しい仕事が多くありますし、その仕事をする意味を知ったら、「そんな仕
【音部さんからの回答】 最初の回に質問をお送りいただきありがとうございます。おかげで無事に企画を開始することができました。編集のみなさんと一緒によろこんでいます。 さて、新商品を導入したけれどうまくいかない、というのは耳にすることの多い話です。こうすれば必ず成功する、といった秘訣はあまり知られていませんが、これをしないと失敗しがち、といった経験則やフレームワーク、押さえるべき視点などはありそうです。経験を通して知りえたことなどお話ししたいと思います。 そもそも新商品を導入するにあたっては、既存商品では成しえないことを実現したいという企図があるのだろうと思います。それは、なにがしか新しい領域に踏み込んでいくことなので、既存商品で得られた技術的な知見は、それほど役には立たないかもしれません。 すでにサプリメント市場に参入していたとしても、個々のサプリメント市場には異なるニーズやインサイトが存在
最新のニュースに登場した時事英語を紹介するこのコーナーでは、世界のニュースに出てくるキーワードを学ぶと同時に、ビジネスの場や日常会話のなかでも役立つ単語やフレーズを取り上げていきます。1日1フレーズずつクイズ感覚で学び、英語に触れる習慣をつくっていきましょう。語彙力の向上には、日々の積み重ねが大事です。 今日の時事英語 2024年6月6日(木)の英「ガーディアン」紙に次の一文がありました。 Joe Biden has marked the 80th anniversary of the D-day landings in Normandy with an impassioned call to western allies to continue supporting Ukraine in the face of the “unending struggle between dictato
仕事に、あるいは人生に行き詰まりを感じたとき、どうしているだろうか。 私たちは新たな課題を前に悶々と考え込んでしまいがちだ。だが、「いつも相談をすることでネクストアクションが見えてくる」と株式会社トイトマ代表取締役社長の山中哲男は語る。 経営コンサルタントとして数々の、そして異業種の新規事業を成功に導いてきた山中に「相談の3つのタイプ」と実践のコツを聞く──。 「3つの相談」が事業を進展させてきた ──まず、いま「相談力」をテーマに新著『相談する力』を書かれたきっかけについて教えてください 私はこれまで、経営コンサルタントとして飲食や金融、医療などさまざまな領域で新規事業を立ち上げてきました。あるとき、こう言われたんです。「でも山中さん、医療のことは絶対に知らないでしょ」と。 そこで改めて振り返ってみると、確かに私は何も知らないジャンルであっても、とにかく相談をしながらその業界の知見を得て
私立ヴァンダービルト大学の2024-25年度の学費が10万ドルに迫る額であることが明らかになり、大きなニュースとなった。なぜ、それほど高額な学費が必要なのか? 毎年10万ドル近くを大学に払う価値はあるのか? 米「ニューヨーク・タイムズ」紙が分析する。 大学が「学費を年10万ドル(約1560万円)に引き上げる」と口にするのも時間の問題と思われていた。だが、今春、その兆しが初めて現れた。 ヴァンダービルト大学工学部にこの秋から入学する学生宛てに送られた書面によると、寮費、食費、個人の生活費、高性能ノートパソコン代などすべてが含まれた学費が9万8426ドル(約1530万円)になることが明らかになった。テネシー州ナッシュビルのキャンパスからロサンゼルスやロンドンに1年で3回帰省する学生の場合、その合計は実質1桁上の10万ドルといっていい。 この目が飛び出すほどの高額な学費は、異常だ。ここまで大金の
コンビニで働く外国人の姿は、いまやおなじみの光景になっている。英誌「エコノミスト」が、ミャンマー人として初めてセブンイレブンの店舗オーナーに就任した女性に取材し、コンビニを中心に広がる日本の多文化共生を考察した。 いまの日本社会を知りたいなら、東京都港区にあるセブンイレブンに行ってみるといい。 コンビニは、日本が誇る質の高いサービスを体現している場所だ。店のドアが開くたびに、店員は「いらっしゃいませ」と声を張り上げて客を迎える。 棚には季節限定のお菓子が整然と並べられ、レジ前からは揚げたてのフライドチキンの香りが漂う。 港区にあるこのコンビニも一見、どこにでもある普通の店舗だ。同店が他と違うのは、セブンイレブンで初めてミャンマー人がフランチャイズチェーン(FC)加盟店のオーナーを務めていることだろう。 オーナーのメイジンチイツを含め、スッタフは全員ミャンマー人だ。
ケイトリン・パルミエリは恋人を亡くした過去を乗り越え、ふたたび新しい愛を見つけた。しかしその相手も、結婚式当日に亡くなってしまう。二度の悲劇に見舞われた彼女は、あるインスタグラムの投稿を通じて、衝撃の真実を知ることになる。 謎に包まれたままの「元彼の死」 ニューヨークに住んでいた2018年の初め頃、私は出会い系アプリを通してエリックと知り合った。彼はハンサムで、おしゃべりで、面白い人だった。私は彼を好きになったが、彼は私について、知っておかなければならないことがあった。 2015年のことだ。当時、私はマイクという男性と付き合っており、私の30歳の誕生日に、両親が自宅でパーティーを開いてくれた。私たちはみんなで楽しい時間を過ごしていた──兄がマイクの名前を叫ぶのを聞くまでは。 物音のするほうへ走っていくと、家のプールのそばでマイクが地面に倒れていた。 彼はすべってプールに落ちたらしく、すでに
2028年までに全個体電池を量産すると発表している日産。しかし、日産は世界的な電気自動車の市場争いで後れを取っているうえ、世界で競争するための規模も不足していていて、危険な賭けにでていると英紙は指摘する。 全固体電池をめぐる日本と中国勢の見解はわかれている 日産は2028年までに全固体電池を量産すると明言している。その一方で、全固体電池の技術はまだ黎明期にあるとの声もあがる。日産の幹部は2024年4月半ばに、その全固体電池を製造する工場内で、懐疑論を唱える企業は過去にしがみついているだけだと反論した。 「電池メーカーはどこも、現在使われている液体電池でずっと儲けていきたいと考えているのです。すでに多額を投資していますから、CATLのみならず、電池メーカーはどこも、全固体電池にあまり前向きではありません」。その幹部は工場見学の最中にそう語った。 幹部がそのように言うのは、電気自動車(EV)の
「情報は無料ではないし、無料だったためしもない」──だが、インターネットの無料ゾーンに溢れかえる、出所不明で信頼性の低い情報を前に、「2024年の大統領選挙期間中、選挙関連報道を無償化すべきだ」と、米「タイム」誌の元編集長で、オバマ政権下で国務次官を務めたリチャード・ステンゲルは米「アトランティック」誌への寄稿で訴える。 うろ覚えのニュースや、簡単には見つからない事実、ある特定の記事を探そうとパソコンの画面に向かい、やっとお目当てのページに辿り着いた直後、画面に表示された──「半年間1ドル」、「1年目は40%オフ」、「特別オファー」、「すでに購読済みですか?」の文字──何度こんなことがあっただろう。 このとき決まって直面するのが、「カネを払うか、払わないか」というジレンマだ(当誌「アトランティック」で本記事を読もうとして、同じジレンマに直面した人もきっとおられるだろう)。これは思っているほ
不安は人の心身に大きく影響し、人生を変えてしまうほどの力を持つ。不安になったら、われわれはどうすればよいのか。米メリーランド大学医療センターの精神科医・精神分析家が、米紙「ワシントン・ポスト」でわかりやすく解説する。 圧倒されるほど強烈な不安を覚えることもあるだろう。深刻な不安を抱えたある患者は私にこう言った。 「安心に感じるものは何もなく、この世界に大人はひとりも残っていないと感じるのです」 また別の患者は、誰かが自分について批判的なことを言ったと思うと、きまってひどく不安に感じるという。 誰かが自分の精神に「毒を盛った」みたいだとその患者は表現した。その言葉をたびたび反すうして、それ以外のことが何もできなくなったり、考えられなくなったりするからだ。この患者は精神が落ち着くまで、ひとりになって、仕事を休まざるをえなくなった。 こうした特定のことをきっかけに、心配とストレスが次々と押し寄せ
日本で大きな社会問題となる「カスタマーハラスメント」に英紙「フィナンシャル・タイムズ」も注目。労働力不足が慢性化するなか、「お客様は神様」だという営業方針は日本企業にとってもはや「高コスト」だと指摘する。 最近、世界的に有名なある高級ブランドが、各国直営店の状況を調査した。それぞれの地域で客を装った覆面調査員を店舗に送り込み、顧客サービスを評価させたのだ。 すると、前評判はよかったにもかかわらず、日本の直営店の評価は惨憺たるものだった。同社の担当者は、この状況を次のように説明する。 「サービスではなく、覆面調査をしたお客様に問題がありました。我々も日本の店舗のサービスは他国とは比べものにならないほど優れていると考えています。しかし私たちが調査をお願いした日本人のお客様は、他国なら誰も気がつかないようなマイナス点を目ざとく指摘されました」 このエピソードを、うらやましいと思う人は多いのではな
2024年3月に就任したフィンランドのストゥブ大統領 Photo: Maxym Marusenko / NurPhoto / Getty Images 対ロシアの「最前線」 ロシアと国境を接し、歴史的にロシアとの紛争や緊張関係を繰り返してきたフィンランド。伝統的な中立の立場を放棄し、2023年4月に北大西洋条約機構(NATO)に加盟したことで、およそ1300キロメートルにわたるNATO対ロシアの「前線」が出現した形になった。 長引くロシアとウクライナの戦争において、NATO諸国がウクライナを強力に支援しているため、業を煮やしたロシアがNATOとの直接対決に踏み切る可能性も指摘されている。 そのようななかで、2024年3月にフィンランドの新しい大統領に就任したアレクサンデル・ストゥブは、NATOとの結びつきをさらに強めていく構えだ。ストゥブの大統領としての初の外遊先は、従来の伝統だった隣国ス
最新のニュースに登場した時事英語を紹介するこのコーナーでは、世界のニュースに出てくるキーワードを学ぶと同時に、ビジネスの場や日常会話のなかでも役立つ単語やフレーズを取り上げていきます。1日1フレーズずつクイズ感覚で学び、英語に触れる習慣をつくっていきましょう。語彙力の向上には、日々の積み重ねが大事です。 今日の時事英語 2024年6月4日(火)の「BBC」に次の一文がありました。 Japan’s transport ministry raided the headquarters of motor giant Toyota on Tuesday, as a scandal over faulty safety data escalated.
『ワーク・シフト』『LIFE SHIFT──100年時代の人生戦略』の著者リンダ・グラットンが、変化の激しい現代のワーク・ライフ・バランスを論じる連載。 生成AIによる仕事効率アップや働き方改革の影に隠れた、「働き方」と同じくらい重要なこととは? 私たちはそれに充分に向き合えているのだろうか──。 古代ローマ人の「余暇の哲学」 ポンペイに行く人は多いが、ヘルクラネウムを訪れる人は少ない。 ローマ帝国のビーチリゾートだったこの街は、西暦79年のベスビオ山噴火によって、火山灰と火砕流に埋もれてしまった。そのため当時の様子がそのまま残っており、私たちはそこを散策することができる。じっくり遠回りするのがいいだろう。 ガイドが言うように、この街はカントリークラブの特徴をすべて備えている。壮大なプール、リラックスにもってこいの浴場施設、それにきらめく地中海の景色が楽しめるテラス。 目立つ場所には、古代
かつて「漢江の奇跡」とまで言われた韓国経済の失速が著しい。製造業への依存や財閥支配といった過去の成長モデルから脱却できないからだと、英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」が報じている。そんななか、韓国政府はAI特需を見込んでソウル郊外に巨大な半導体集積地を築こうとしてるが……。 世界最大規模の半導体クラスター ソウルから南に40キロ離れた龍仁(ヨンイン)市郊外では、韓国の大統領が世界的な「半導体戦争」と呼ぶ状況に備えて、無数の掘削機が準備を進めている。 掘削機は1日に4万立方メートルもの土砂を運びだし、山を真っ二つに切り崩しながら、新たな半導体クラスター(集積地)の土台を築いている。その一角には、世界最大規模の3階建て製造工場も建設される予定だ。 半導体メーカーのSKハイニックスが910億ドル(約14兆円)を投じて建設したこの1000エーカーの製造拠点は、サムスン電子による300兆ウォン(約
米国製と「違いは明らか」 米国の寿司レストランのなかには、魚をわざわざ日本から輸入している店もある。より美味しいものを提供したいという情熱のもと、寿司の本場から材料を仕入れているのだ。 そしていま、米国のバーまでもが「とあるもの」を日本から輸入している。どこにでも手に入りそうな、だが最高のサービスを提供したいバーテンダーたちが追い求める、最高品質の「氷」である。 「米国のカクテルバーは、日本のバーテンダーの緻密で優雅な技術に、長らく魅了されてきた。日本のスピリッツ、その他の材料や道具、技術などの特徴的な要素を自分たちのドリンクに取り入れている」 そう報じるのは、飲料に特化した米メディア「パンチ」だ。現在、こだわりが強く高級な米国のカクテルバーのなかには、日本から直接輸入した氷を使用している店も増えているのだという。 ニューヨークのカクテルバー「バー・モガ」のシンタロウ・エレアザル・トッツォ
クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 米半導体大手エヌビディアが5月22日に発表した2-4月期(第1四半期)決算は引き続き好調で、同社は大いに波に乗っている。だが、人工知能(AI)ブームの中心にある同社の立場を弱めかねない脅威が生まれつつある。 競合他社や主要顧客はエヌビディア製品との差を埋めることができる半導体チップの生産を目指している。その一方で、AI市場は変化しており、エヌビディア製品の人気を低下させる可能性がある。 AI企業は大手、中小を問わず、より小規模なモデルを構築・展開する方法を模索するようになっている。このようなモデルは特定のタスクに有効に機能し、エヌビディア製チップに頼らなければならないほどの演算処理能力を必要としない。
1972年浙江省温州市生まれで、英国オックスフォード大学の社会人類学の元教授で、現在ドイツのマックス・プランク社会人類学研究所員である項飆(シャン・ビャオ)。気鋭の人類学者である彼が、不景気のなかにある現代の中国の若者たちが何を考えているのか、また、今後の中国にどのような影響を与えるのかを語る。 ──中国の若者は景気後退にどのような影響を受けているのでしょうか? 若者たちは高齢者に比べてはるかに大きな影響を受けています。高齢者たちは過去40年間の高度成長の恩恵を受け、貯蓄や不動産を持っているような人々です。 一方、いまの新卒の若者たちは、将来に大きな期待を持って育った世代です。彼らにとって現実とのギャップは非常に厳しい。仕事もキャリアアップの機会も少ない。また、就職できたとしても、IT業界のように、企業は激しい競争を繰り広げているため、条件がより厳しくなっているのです。 もちろん、社会集団
2024年3月、東京から加賀温泉駅まで新幹線1本で行けるようになった。そこで、加賀に魅せられて山中に住居を構えた米国人記者が、旅行者の視点で3つの温泉街をまわってみた。 加賀市は、日本海に突き出す緑豊かな石川県の南西端にある。市を構成する各町には現代アートや建築と並び、伝統工芸が盛んだ。 そのうち、片山津、山代、山中の3つの町は温泉が有名だ。数百年前、僧侶や廻船商人らはこうした温泉を巡礼して心身を癒やした。17世紀(江戸時代前期)の俳句の師、松尾芭蕉もこの地を訪れて2句を詠んでいる。 毎年秋、日本人の観光客は燃えるような紅葉とズワイガニ目当てに加賀の三温泉郷にやってくる。しかし東京から容易に行ける旅行先ではなかったため、当地を訪問する外国人観光客はほとんどいなかった。 それもいまは昔の話だ。2024年3月に北陸新幹線が延伸し、加賀温泉駅にも停車するようになった。いまは東京-加賀間が新幹線1
日中戦争のさなかに中国共産党軍の捕虜となった日本人兵士のなかには、現地での反戦活動にのめり込んだ人もいたという。彼らを反帝国主義に駆り立てたものは何だったのか。『後期日中戦争 華北戦線 太平洋戦争下の中国戦線Ⅱ』から抜粋して紹介する。 捕虜となった日本兵は反戦運動を始めた 「後期日中戦争」のなかでは、龐炳勲(ほうへいくん)のように日本軍に帰順して傀儡軍となる部隊もあれば、最後まで戦い抜いて敗れたり、戦場から逃げ遅れたりして捕虜となる中国兵も数多くいた。 立川京一(防衛省防衛研究所)「日本の捕虜取扱いの背景と方針」(『太平洋戦争の新視点─戦争指導・軍政・捕虜』、2008年3月所収)によると、太平洋戦争開戦前までに成立していた捕虜の取り扱いに関する国際条約は、前述のハーグ陸戦条約と、1929年7月にジュネーブで調印された、「俘虜(ふりょ)待遇条約」だ。 日本は両条約に署名しているが、後者は批准
この記事は、ベストセラーとなった『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者で、ニューヨーク大学スターン経営大学院の経営学者であるスコット・ギャロウェイによる連載「デジタル経済の先にあるもの」です。月に4回お届けしています。 どんな生き物でも、存続するためには2つの事柄に報酬を見出さねばならない。「セックス」と「闘争」だ。性欲の重要性は自明だが、もし人類に闘争への欲求がなければ、繁殖しなかった生き物と同じ運命をたどることになる。 進化とは資源を巡る競争であり、争いは避けられない。生態系はフェアプレーなどお構いなしだ。あらゆる生き物は誰かの餌食となり、資源、配偶者、縄張り、そしてプライドを巡って争いが起こる。戦うべきか否かを賢明に判断できる報酬系を発達させなければ、それを得意とする他の種の餌食になるしかない。 人間も例外ではない。人よりも強く、速く、鋭い鉤爪を持つ生き物がサバ
佐藤オオキが2002年に設立した「nendo」は現在ミラノにも拠点を構え、いまや彼は世界中で引っ張りだこのデザイナーとなった。そんな彼が「師匠」と呼ぶ三宅一生とドラえもんから、複数のプロジェクトを同時にこなすことを可能にする彼のルーティン、そしてAIについてまで、スペイン「エル・パイス・セマナル」誌に語った。 「日本の卓越したミニマリストデザインの権化」と専門家に称されるデザインオフィス「nendo」の創設者、佐藤オオキ(46)。彼は、自分には2人のメンターがいると言う。伝統とテクノロジーを融合させて20 世紀のテキスタイルに革命をもたらしたファッションデザイナーの三宅一生と、50年以上にわたって日本の子供たちを楽しませてきたドラえもんだ。 三宅は、佐藤のキャリアに決定的な影響を与えることになる椅子の制作を依頼する。のちに「cabbage chair」と名付けられるその椅子の制作を通して佐
若い女性客に高額な売掛金(ツケ)を不当に背負わせる悪質商法が問題視されているホストクラブ。日本特有のこの現象はなぜ起こってしまうのか、英誌「エコノミスト」が考察した。 日本特有のホストクラブ 東京の歓楽街、歌舞伎町で女性記者を取り囲むのは、4人の若い男たちだ。柊咲恋(25)は髪をブリーチして明るくし、黒のタンクトップ、シルバーのネックレスを身につけている。彼はシャンデリアの下でピンクのアイシャドウをきらめかせながら、温かくおしゃべりし、魅惑的な視線を送る。 彼の3人のアシスタントは、記者の焼酎グラスにお酒を注ぎ続け、彼女の容姿を褒めつづけている。彼女はそれらの言葉が本心からではないと理解しながらも、不思議と喜んでいる。1時間半後に受け取った会計は、3万円だった。 日本ではホストクラブがブームになっている。K-POPスターのようなメイクアップをし、着飾った約2万1000人の若い男性が、ホスト
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