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パリ五輪
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国旗もダメ、政治的なメッセージもダメというオリンピックの決まりを自分はわきまえているとアンジェリーナ・ヤンは思っていた。ヤンは自分が留学しているフランスでの五輪に出場する同国人の選手を応援しようとワクワクしていた。 そこで台湾からの留学生であるヤンは、自分では無難だと思うポスターを作った。故郷の島をかたどり、そこに「台湾加油」(がんばれ台湾)という文字を入れた。 ところが、そのポスターを観客席で広げて、バドミントンで中国と対戦する台湾チームを応援しようとすると、すぐさま取り囲まれてしまった。ヤンは言う。 「それでもポスターを持っていると、警備の人が近くに来て無線機で同僚としゃべり続けていました。そのあと、中国人らしき男性が現れて、私の前に立ってポスターが見えないようにしたのです」 そのあと男は、ヤンの手からポスターを奪い取った。 「すごく驚きました。それと同時にすごく悲しくて腹が立ちました
SNSが未成年のメンタルヘルスに及ぼす悪影響が懸念されるなか、米国では校内でのスマートフォンの使用を禁止する学校もある。だがそうした禁止には効果があるのだろうか。ニューヨーク州で禁止措置を導入している高校を、米経済メディア「ブルームバーグ」が取材した。 離脱症状はすぐに表れはじめた。 携帯電話の使用を禁止した、米ニューヨーク州北部にある高校では、女子生徒が実在しないデバイスに絶えず手を伸ばしては、空(くう)をつかんでいた。廊下では、生徒らが鍵を壊して、自分のデバイスを取り戻そうとしていた。 ニューヨーク市のブロンクス区にある別の高校では、生徒らが抗議行動を画策した。 しかしやがて、そうした症状は消えていき、行動が変わった。 ブロンクスにある高校では、AP試験(高校在学中から大学の単位を取得できるための試験)のスコアが上がり、成績もコロナ禍前の平均に戻ったと校長のモニカ・サミュエルズは言う。
私がベッセル・ヴァン・デア・コーク(81)に取材した18世紀創業のホテル「レッド・ライオン・イン」は、非常に落ち着く場所だった。 米マサチューセッツ州の片田舎で、私はこの頑健な精神科医と数時間にわたり語り合い、明確に自分の考えを持つ人物だと悟った。 ヴァン・デア・コークは気候変動の話題に触れながら、いまだに飛行機を使っているのかと私に問い質し、「あんなもの乗るべきではありません!」と一刀両断した。精神科医のフロイトを「ちょっと自己中心的すぎます」と評し、さらにブレグジットについては「あなたたち英国人はとんでもないことをしました!」と歯に衣着せぬ論調だ。 ヴァン・デア・コークは、これまでも常に闘争的な研究者だった。彼は1980年代にベトナム戦争の帰還兵のPTSD(心的外傷ストレス障害)を初めて調査した研究者のひとりだ。 代表作『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法
米大統領選挙の民主党の副大統領候補として、カマラ・ハリスはミネソタ州のティム・ワルツ知事(60)を指名した。名前をほとんど知られていなかった彼が、約二週間のあいだにメディアやSNSで露出を増やし、副大統領候補に選ばれるに至ったのはなぜなのか。 中西部に影響力あり 副大統領候補選びにおいて重要視されるポイントの一つは、激戦州における影響力だ。 だがハリス陣営は、激戦州ではないミネソタ州知事のワルツを選んだ。ウィスコンシン州やミシガン州などの重要州で、中西部を地盤とするワルツが、白人労働者層や地方の有権者にも影響力を発揮することを期待しているのだろう。「ハリスはやや競争力のある州の出身者を選んだ」と米紙「ワシントン・ポスト」は報じている。
大企業の幹部が続々「週末出勤」 世界で多くの国が週4日勤務への移行を進めているが、逆行する国も現れはじめている。 今年に入り、ギリシャが週6日勤務を可能にすると発表。人口減少と熟練労働者の不足を受けての対策だが、国民の猛反発を招いている。 そして、日本の隣の韓国でも経営幹部たちに週6日勤務を要請する企業が出はじめ、賛否が分かれている。韓国の現行の労働法では労働時間は週52時間まで(標準労働時間は40時間で、時間外労働は12時間)と定められており、週末出勤は原則禁止とされている。 米メディア「クォーツ」によれば、サムスンでは製造販売部門の幹部たちは平日に加え、土日のいずれかに出勤しなければならなくなった。2023年の業績が悪化したことから、「危機感を注入して全力を尽くす必要がある」と、幹部の一人が語ったことが報じられている。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」もこの動きに注目している。 同紙によ
オーストラリアでは燃料費の高騰などを理由に、EVの売り上げが伸びている。補助金などの優遇政策もあり、BYDをはじめとした中国産EVの需要は根強い。 しかし、中国産EVが普及するにつれていくつかの問題も浮かび上がっていると海外メディアは報道している──。 BYDはテスラより人気 2022年から2024年にかけて、オーストラリア国内の月間EV販売台数は約1900台から8000台へと大幅に増加した。 普及率そのものはまだEV先進国に比べて少ないものの、屋根上太陽光発電が広く活用されているため、安価なEVが市場に出回れば瞬く間に普及するだろうと予測されている。 事実、燃料代やガソリン車の維持費が高騰し続けるオーストラリアでは、通勤のコストをEVによって節約しようとする人も多い。都心よりも郊外のほうがEVへの需要が高いとオーストラリアのオンラインメディア「ニュース・ドット・コム」は報じている。 こう
『ワーク・シフト』『LIFE SHIFT──100年時代の人生戦略』の著者リンダ・グラットンが、変化の激しい現代のワーク・ライフ・バランスを論じる連載。 「コロナ禍を機に働き方が変わった」といわれ、それをプラスにとらえすぎるあまり、若者世代は仕事や人間関係に練達する機会を充分に与えられていない可能性がある。本当に必要なことは、積極的に取り戻していく必要もあるだろう。 コロナ禍が若者から奪ったもの 私の若い友人2人は、ほとんどが在宅勤務なので、仕事仲間との社交の機会も限られている。23歳前後のかれらは、パンデミック発生時には19歳くらいだった。つまり、大学の授業もオンラインで受講させられ、大学の仲間たちとの対面交流も少なかったのだ。成人期を形成する期間の大部分を、独学や孤独な労働に費やすことになってしまったのである。 誤解しないでほしいのだが、かれらは毎晩寝室に籠りっきりでゲームをしているよ
日本は、経済成長や物質的な利益が最優先ではない 「地球は生きているかもしれない。古代人が見たような、目的と先見の明を持つ意識的な女神としてではなく、木のように生きているのだ」(リチャード・ローヴェロック) 日本で私は、1990年には人口がいまの6倍だった島々へ行き、尾道の美しい古民家が立ち並ぶ地区を訪れた。そうした家々は、修理する気があれば誰でも手に入れることができた。我が友人のサム・ホールデンはまさにそれを実践しており、彼とその友人たちは、無料で手に入れた駅近くの素敵な家で共同生活を試みている。 豊かな世界ではたいてい、家賃を支払い、同時に収益を上げる必要があるため、没個性な都市が生み出される。小売チェーンのデュアン・リードが乱立するマンハッタンや、ファーストフードチェーンのプレタ・マンジェだらけのロンドンがその例だ。 一方で、東京が手の込んだ品々を提供する個性的なブティックやレストラン
英国で移民排斥を主張する極右に扇動された暴動が拡大している。8月3~4日の週末にかけて、反移民を訴える集団が各地で難民申請者の宿泊施設などを襲撃し、150人以上が逮捕された。 暴動のきっかけとなったのは、7月29日に英北西部サウスポートで女児3人が刃物で殺害された事件だ。犯人は「ボートで英国に渡ってきた不法移民」などのデマがSNSで拡散され、反移民感情が煽られた。 デマはどうやって広がったのか? 刺殺事件の容疑者は17歳の少年だ。サウスポートのダンス教室に刃物を持って押し入り、6~9歳の女児3人を殺害した。ほかに8人の子供が切り傷を負い、うち5人は重体に陥った。 英紙「ガーディアン」によれば、事件直後から容疑者に関する虚偽の情報がXで拡散されはじめた。 まず移民やイスラム教徒への嫌悪感をあらわにするアカウントが、「犯人はムスリムとみられる」と投稿。これに極右のインフルエンサーらが飛びついて
日本は、都会で暮らす中国人の憧れ 「大道が行われたとき、公共の精神が天下のすべてを支配した。彼らは才能、徳、能力のある人物を選び、彼らの言葉は誠実であり、育んだものは調和であった」(『礼記』) その昔、日本は好景気に沸く中国並みに活気に満ちていた。物事のテンポが速く、米国へ留学する学生が最も多く、環境汚染がひどく、インフラ建設のために地面をコンクリートで塗り固め、借金に煽られた不動産バブルに沸いていた。 かつて日本人は、未来のギャング、犯罪、巨大都市、悪党たちを想像した。1988年に公開されたアニメ映画『AKIRA』は、汚職とテロに蝕まれた2019年の「ネオ東京」を舞台に、暴走族の少年たちを描いたディストピア作品である。 やがて、バブルは終わりを迎えた。東京が「ネオ東京」と化すことはなく、それどころか、世界で最も物価が安く住みやすい大都市の一つとなった。 バブル時代の日本人は、現在の、いや
楽園の暗い過去 南太平洋の海からテアフポオの海岸に向かって、美しく力強いうねりとともに、波が打ち寄せていく。50年前の7月もそうだった。だがそのとき、この小さな集落には、空気中の、目に見えない別の波も押し寄せていた。それはフランスが、本土から遠く離れた共和国の一部であるこの場所でおこなった核実験で生じた放射能の波だった。 ロニウ・トゥパナ・ポアレウはテアフポオで生まれた。家族が代々住む家はヤシの木とハイビスカスの茂みに囲まれている。現在、テアフポオの村長を務めている彼女は、渦を巻き泡を散らしながらサーフボードに推進力を生み出す理想的な青い波のおかげで、同地が地球の反対側のパリで開催される今年の夏季オリンピックのサーフィン競技の会場に選ばれたことを誇らしげに語る。 だが、観光パンフレットに載っている明るい海の風景の裏には、秘密が隠されていた。機密指定から解除されたフランス軍の資料によると、1
最新のニュースに登場した時事英語を紹介するこのコーナーでは、世界のニュースに出てくるキーワードを学ぶと同時に、ビジネスの場や日常会話のなかでも役立つ単語やフレーズを取り上げていきます。1日1フレーズずつクイズ感覚で学び、英語に触れる習慣をつくっていきましょう。語彙力の向上には、日々の積み重ねが大事です。 今日の時事英語 2024年8月5日(月)の「CNN」に次の一文がありました。 The index has now entered bear market territory, which is defined as a 20% pullback from recent highs.
鳥になるには、オーバーサイズのTシャツを着る。ただし、Tシャツの袖に手は通さない。両手はTシャツの裾からのぞかせて爪のように突き出し、空洞の袖は羽になる。 その爪で手すりのようなものをつかむ姿を自撮りし、キャプションをつけてSNSにアップロードするのだ。 @babelfish.asia A free, simple, and happy life. That’s what young Chinese adults want these days. But how does one get there? You do not, but you can protest by pretending to be a bird on social media. The burgeoning trend has youths tucking their bodies into an oversized
日本と韓国の若い男性たちの間で反フェミニズムが広がっていると、英誌「エコノミスト」が報じている。両国に共通しているのは、優秀な女性に対する反発、経済的見通しの暗さ、そしてネット上の煽りだという。 僕は「逆差別」の犠牲者 ソウル在住のシェフ、キム・ウソク(31)は、韓国社会における女性の地位に疑問を抱きながら育った。専業主婦の母親が気の毒でならず、自分はフェミニストなのだと思っていた。 だがこの数年でその考えは一変した。ネット上の一部の女性活動家たちが小さなペニスを嘲笑するなど、侮辱的な発言を目にしてショックを受けたのだ。 「男としての尊厳が攻撃されている気がしました」とキムは言う。2010年代以降、韓国社会は女性よりも男性を差別するようになったと彼は考えている。 キムには恋人がいるが、彼のような考えを持つ韓国人男性の多くは女性と付き合っていない。 先進国では男女間の意識の乖離が拡大しており
2001年にノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ(81)。長年異端とされる主張を繰り返してきた彼は、自らを「改革が必要な資本主義を支持する進歩主義者」と呼ぶ。 いまも世界で大きな発言力を持つ彼は、著書や講演会を通じ、40年間続く新自由主義による悪影響を批判し続けている。講演のためにマドリッドにやってきたスティグリッツから、スペイン紙「エル・パイス」が話を聞いた。 「トランプ現象」とはなんなのか ──2024年は世界各地で選挙がありますが、争点になっているのはどこも経済政策ではなく、スキャンダルや文化戦争です。 経済はそうしたものの背景にあります。新自由主義が40年間続き、多くの人々は大変な困難を強いられました。グローバリゼーションや技術の変化によって、脱工業化が進んだのが原因です。新自由主義において取り残された非常に多くの人々が守られず、絶望するようになりました。これは特に米
「準国民の解放」への怒り 1860年、当時オスマン帝国の統治下にあった大シリア(現在のシリアだけでなく、レバノンやヨルダン、パレスチナなどを含む地域)のレバノン山地で、イスラム教徒(ムスリム)とキリスト教徒の暴力的な衝突が発生した。 この暴動は、すぐに殺戮へと発展した。2ヵ月足らずの間に7000~1万1000人のキリスト教徒が殺され、数百の村や宗教施設が焼き払われた。欧州列強が介入しなければ、死者数はもっと増えていただろう。この虐殺は大シリアの他地域にも波及し、ダマスカスでも約5000人のキリスト教徒が殺害された。
一度不貞を働いた人間は、それを何度も繰り返すのだろうか。結婚生活が破綻した人々にインタビューをしてきた筆者は、自分の結婚を通して、その答えの片鱗を見る。 この記事は、愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」の全訳です。読者が寄稿した物語を、毎週日曜日に独占翻訳でお届けしています。 たじろぐのは、結婚を疑っているから 海辺の古い街で、きみと結婚したいと彼は言った。 かつてコンキスタドール(アメリカ大陸を侵略した人々)に侵された地、フロリダ州セントオーガスティンの道を、私たちは自転車で一日中走っていた。スペイン風の建物はいま、崩れかけながらも美しいまま海沿いに建っている。 二人でお酒を飲んでいて、それが彼に勇気を与えた。 結婚したい。そう彼は言い、それから、どのように、いつ結婚するか、私たちは落ち着いて話しあった。一緒に生きるうえで確認しておくべき話題──お金
2023年10月以来、イスラエルとハマスによる戦争が続いているが、イスラエルはガザで新たな兵器を使用しているという。イスラエルの真の狙いはどこにあるのか、カタールメディア「アルジャジーラ」が分析した。 ガザに新兵器を投入するイスラエル イスラエル軍は2023年10月22日、ある映像を公開した。一部の部隊が、ハマスに対して、「アイアン・スティング」という新しい120mm精密誘導迫撃砲弾を配備したというものだ。 この砲弾は、同軍と非常に強い関係にある、イスラエルの軍事企業エルビット・システムズが製造したものである。 イスラエル軍が導入した、新しい120mm精密誘導迫撃砲弾「アイアン・スティング」 6月にネタニヤフ首相の戦時内閣の閣僚ポストを辞任した、元イスラエル国防相のベニー・ガンツは、2021年、この新兵器について次のように語っていた。「開けた場所でも、都市でも、目標を正確に攻撃するように設
Text by Grace Dent, Chitra Ramaswamy, Fay Maschler and Leonie Cooper 米「ニューヨーク・タイムズ」紙で、12年間レストラン評論家として活動したピート・ウェルズは7月16日付の紙面で、健康の悪化を理由に仕事を離れると公表した。それはおおむね、日常的に飲食店で暴飲暴食を繰り返した副作用だという。 健康診断を受けたあと、「私のコレストロール数値、血糖値、高血圧の数値が目を疑うほど悪かった」とウェルズは書いている。「前糖尿病、脂肪肝、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)といった用語が飛び交った」。そして「病的な肥満になっていた。このままではいけないことはわかっていた」と続けた。 レストラン批評は「世界最高の仕事」ともてはやされがちだが、この仕事がもたらす健康リスクを当の批評家たちはどのように軽減させているのか。著名な女性のレ
12歳から女優としてのキャリアを積んでいるナタリー・ポートマンが、初めてのドラマシリーズに挑んだ。そこで彼女が演じるのは、1960年代のバルチモアで専業主婦から報道記者になったユダヤ人女性だ。イスラエル出身のポートマンが、自身の家族のルーツから女優としてのキャリアまでを語る。 感謝祭のブリスケ(肉料理)を前に、20年の結婚生活が終わる。マディ・シュワルツは、新しいキッチンを備えたバルチモアの家から出て行き、自由な女性になる。7話からなるドラマシリーズ『レディ・イン・ザ・レイク』で、ナタリー・ポートマン(43)演じるマディは、それまでの生活を投げ捨てると、子供時代に抱いていた調査報道記者になるという野望を解き放ち、地元紙「バルチモア・スター」に入り込むことに成功する。 30年にわたるポートマンのキャリアのなかで、これが事実上初のドラマ進出となる。12歳でデビューした『レオン』から、バレエ・ダ
米国ロサンゼルスにある高級スーパー「エレウォン」がカルト的な人気を得ている。一杯3000円のスムージーを買う客も列が絶えない。その大きな人気を得ている背景にはビジネス上の戦略があった。 噂は本当だった。絶大な人気を誇るロサンゼルスの超高級オーガニックスーパー「エレウォン」で買い物している客は皆モデルのようにおしゃれで美しい。 その美しい客たちはハイリー・ビーバーやケンダル・ジェンナーがデザインした20ドル(約3000円)のスムージー、エレウォンのロゴが付いたトートバッグを買うために次々とやってくる。まるで客はみな、芸能人やTikToker、ニポベイビー(親のコネクションでセレブの名声を得た人たち)のようだ。
銃を持った監視員もいなければ、塔も塀ない。代わりにあるのは、菜園と工房、鶏小屋。モアイ像で有名なチリ、イースター島で、12人の囚人たちが暮らす「世界の果ての刑務所」を訪れた。 島の人々は、そこを「大人のための幼稚園だ」と言う。あるいは「ホテル」、または「農場」。だが、「刑務所だ」と言う人はいない。 南太平洋に浮かぶ、チリ領イースター島。この、世界でもっとも孤立した有人島の一つで、一握りの犯罪者たちが刑に服している。見張り小屋もなければ、銃を携帯した看守もいない。さらには刑務所の内外を分ける明確な塀も見当たらない(その役割は太平洋が果たしている)。 いっぽう、そこにあるものといえば、民芸品を作る工房だ。受刑者たちはその工房で丸ノコやチェーンソー、ノミなどを使って木製のモアイ像を作る。ヤスリをかけ、ニスを塗ったら、店の棚にきれいに並べる。そこへ観光客が、土産物を物色しに訪れる。店員も受刑者で、
開幕から一週間足らずで、すでに数々のドラマを生んでいるパリ五輪。7月30日(現地時間)には、開催国フランス代表を相手に、バスケットボール男子日本代表が激戦を繰り広げた。 延長戦の末、日本が僅差で敗れたこの試合に熱狂したのは、スタジアムにいた観戦者や日本から見守ったファンだけではなく、現地メディアも同じだった。各紙がそのドラマチックすぎる展開を、日本代表への評価、特に「取り憑かれたような」河村勇輝への高い評価とともに伝えている。
北半球は夏本番、海や川や湖で人々が水遊びする光景を各地で目にすることだろう。そうした光景は現代ならインスタグラムなどでシェアされるが、長らくは絵画やフィルム写真で表現されてきた。それらの芸術作品に反映されたさまざまな「眼差し」を、美術史の専門家が読み解く。 昔の絵画または写真で、海や川や湖などに入っている人を捉えたものがあるとする。そこには何が見えるだろうか。 まず十中八九、誰かがそこで泳いだり、水浴びしたりしているだろう。しかしよくよく見てみるとこうしたイメージは、その社会の人体に対する見方、西洋や「新世界」に対する認識、政治的な優位性など多くを語っているかもしれない。 手始めに、裸体の問題がある。芸術家は人体をどれくらい、また何のために露出させたいかを決める必要があるからだ。 人前で半裸や全裸になるのは現代的な現象だとわれわれは考えがちだが、中世・近世の西ヨーロッパでは生活の一部だった
料理で世界的に名声を博し、かつ気候変動を意識したオリンピックの開催にも注力するパリは、最高のパフォーマンスを求める大勢の選手たちに何を食べさせるのか。 ケータリング業者が1日に4万食を準備するパリ五輪の選手村では、そうしたさまざまな思惑のバランスを取ることが難度の高い課題となっている。 そのメニューの考案にはミシュランシェフらが関わった。またパリ五輪の組織委員会は、野菜中心でしかも地元産の食べ物を提供して、今大会のカーボンフットプリントを最低限に抑えると強調してきた。 選手村の大食堂内やその周辺で提供されているものとしては、アーティチョークとトリュフのツイストクロワッサン、レンズ豆のカレー、牛肉抜きのブルゴーニュ風煮込みなどがある。 だが、もっと肉を欲しがる選手もいるのだ。 最も声高な不満は英国の選手団から… 選手村や競技会場の多くにケータリングする地元企業「ソデクソ・ライブ」は7月29日
米フロリダで、タクシーの車内でカラオケをしている動画がTikTokに投稿され話題になっていると、米メディア「ニューヨーク・ポスト」が報じている。 動画にはタクシーの中でマイクを持った乗客たちが楽しそうに歌を熱唱している様子が映っている。このタクシーでは、客がSpotifyのプレイリストから曲を選べるようにし、後部座席には歌詞を表示するタブレットを設置しているという。 タクシー運転手の女性は「客が私の車に乗ったとき、宗教や政治については意見が合わないけれど、音楽は人々を団結させるものであり、すべての人の魂に触れるのだと気づいた」と語っている。 このタクシーでは乗客のおよそ80%がカラオケに参加しているといい、運転手の女性は「喜びを広げていきたい」と話している。彼女は、バス停で見かけた子供や年配者には無料で乗車させるなど慈善活動も行っているそうだ。 動画を観た人たちからは「これは史上最高のUb
数多のコンテンツのなかから、いま見るべき映画・海外ドラマを紹介する連載「いまこの作品を観るべき理由」。今月のおすすめは、名門ピクサーの第28作にして同社史上最大のヒットとなっている『インサイド・ヘッド2』だ。 世界中で大ヒットしているピクサー・アニメーション・スタジオの最新作『インサイド・ヘッド2』がようやく日本で公開される。今回は、『アナと雪の女王2』を超えてアニメ史上歴代ナンバーワンのヒットとなった理由を分析したい。 アカデミー賞受賞作の続編 まずは、前作の『インサイド・ヘッド』から振り返ってみよう。この映画の主人公ライリーは11歳の女の子。都会に引っ越してきて、新しい生活に馴染めずにいる。同時に、彼女の頭のなかの指令部では、「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」という5つの感情が奮闘していた、というイマジネーション溢れる作品だ。エンタメとして機能しながらも、感情の理
かつて他社を寄せつけなかったテスラだが、いま同社の売り上げがEV市場全体の50%以下に落ち込んでいることが明らかになった。テスラ失速の原因を米紙「ニューヨーク・タイムズ」が分析する。 米国ではシェアが50%以下に 研究機関コックス・オートモティーヴによれば、4~6月までのテスラのEV売り上げはいまだ市場全体の49.7%を占めている。だが、前年の59.3%に比べると、大幅な減少だ。テスラはいま、ゼネラルモーターズ(GM)やフォード、ヒュンダイ、起亜などの競合他社にその地位を脅かされている。 コックスによると、テスラのシェアが3ヵ月間で50%以下まで下落したのは初めてだ。2012年にモデルSセダンを売り出し、EV市場の覇権を握ったテスラ。しかし今回の調査結果は、もはやテスラがその地位を失いつつあることを示している。 モデルS以前、米国内でのEV販売数はきわめて少なかった。だが米国全体で見るとE
幼少期に誘拐されたメキシコ系米国人のアントニオ・サラサール=ホブソン(69)はその後、小児性愛者の餌食となり、悪夢のような少年時代を送る。現在は著名な人権弁護士として活躍する彼が、60年以上前に我が身に起きたおぞましい経験と、逆境を克服して成功をつかむまでの軌跡を英紙「ガーディアン」に語った。 いまも消えない「恐怖の記憶」 アントニオ・サラサール=ホブソン(69)は、4歳で誘拐された日のことをいまでも克明に覚えている。 1960年のあの暑い日曜日の午後、彼は米アリゾナ州フェニックスの郊外にある自宅で、きょうだいたちと一緒に赤い土ぼこりの舞う裏庭に立っていた。 家の前の道路には、エンジンをかけたままの車が1台停まっていた。白人の男が窓から身を乗り出し、アイスクリームを食べにこないかと誘う。アントニオは、その男と助手席にいる女が怖かった。 きょうだいたちも身構えた。農場に働きに出ている両親から
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