信頼についての機能分析の本。議論の構図がさほど固まっている感じとは思えなく、論述がややバラバラな印象を受ける。分かるところは分かるのだが、全体の中でどう位置づけられているのかが不明な議論もあった。多産な人の著作にはあることなのだが。 ルーマンは信頼を、他人についての信頼と、社会のシステムについての信頼の二つに分けている。我々が生きている世界はあまりに複雑だ。単純な社会ではいざしらず、現代の社会はあまりに多くの可能性があり、起こる出来事はどれも「別様でもあったはず(contingent)」のものである。一見、科学技術の発展によって世界内の出来事は制御しうるようになったように見える。もし出来事が道具的に制御されるなら、信頼は不要である。だが実際は、科学技術は逆に様々な可能性を拓き、世界の複雑性を増大させている(p.26)。例えば、建築学について信頼していなければ、どうして高層マンションに住めよ