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『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その36 『おぜんと驢馬とこん棒』 【あらすじ(要約)】 仕立屋さんに息子三人がいて、順番に世間に送り出し、誠実な仕事を習わせようとしました。 手ぶらでは困るので、それぞれが卵焼きのお菓子と五厘銅貨を一つもらい旅に出ました。 まず長男が小びとのところへ来ました。小びとはクルミの殻の中に住んでいましたが、大金持ちでした。 小びとは「私の羊たちの番をして、山の麓で草を食べさせてくれるならいいものをあげる。でも、山の裾野の家は賑やかなので、もしその家に踏み込んだら縁切りだよ」と言いました。 長男は承知し羊の番をしますが、その家からは遠ざかっていました。 ところがある日曜日、その家から賑やかなのが聞こえ、一度くらいは数に入らないと考え、家に入り込み遊びました。 やがて外に出てみると、闇夜で羊たちはいなくなっていました。 小びとに自分のしたことを隠さずに話しました
『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その35 『おぜんや御飯のしたくと金貨をうむ驢馬と棍棒ふくろからでろ〈KHM36〉』 【あらすじ(要約)】 昔、仕立て屋がいました。息子三人と一匹のヤギがいました。山羊は乳で皆を養っていたので、良い食べ物をもらって、毎日息子たちが順番に牧草地へ連れて行きました。 あるとき、長男が見事な草の生える墓地で山羊に草を食べさせました。家に帰る時間、息子が「腹が張ったか」と訊ねました。山羊は「腹がこんなに張った。もう一枚の葉もいらないよ、メーメー」と答えました。家に帰り、小屋に繋ぎました。 父親は「やぎは餌を十分食べたか」と言いました。 「食べたとも。もう一枚も食べたがらない」と息子は答えました。 父親は自分で確かめたくて「やぎや、腹が張ったか」と聞くと、山羊は「何食って腹が張る。葉っぱは何もなかった、メーメー」と答えました。 父親は息子に「この嘘つきめ。やぎを日
【あらすじ&ひとりごと】 人生の折り返しを迎える45歳になった大人たちが、高校最後の夏の日々に思いを馳せ、これからの人生に再び向き合う物語です。 薬剤師・種村久志は、親の代から町の薬屋として薬局店を経営するが、大手ドラッグストアの進出により経営が悪化し、創業以来の危機に瀕している。 地元に残る他の同級生も迷いながらも現状を変えられず漫然と生きている。 そこにかつての同級生・山際彗子が地元へ帰ってきた。国立天文台の研究員を辞め、この秦野市の丹沢山に手作りの天文台を建てるために帰ってきたという。 久志は、28年ぶりに再会したかつての仲間たちとともに、彗子の計画に力を貸すことになる。 同級生たちは、高校最後の夏の文化祭で協力して、オオルリを描いた巨大な空き缶タペストリーを制作した日々に思いを馳せながら、手作りの天文台を建てる中、あの夏の真実がやがて明らかになっていく。 迷える中年の大人たちの思い
パンフレットの表紙 陸上自衛隊中央音楽隊 第172回定期演奏会に行ってきました。 なかなかチケットが当たらないそうですが、初めて応募して当たりました。ツイてます。 今回は、中央音楽隊総隊73周年記念という冠付きで、「日米友好」をテーマに演奏会が開演。 中央音楽隊のほか、ゲストとして横田基地の米国空軍太平洋音楽隊が共演。ジャズの演奏もあり日米友好のサウンドを楽しむことができました。 開演前の場内 パイプオルガン(左)と中央音楽隊旗 開演前にプレで米国空軍太平洋音楽隊の演奏と鶫(つぐみ) 真衣さんの歌声。開演前からとてもいい雰囲気。そして司会は元日テレアナウンサーの上重 聡さん。学生時代野球選手だっただけあってスラリとしてかっこいい。声も素敵ですね。 開演前のプレは撮影が許可されました 私はどちらかというと音楽には疎いほうですが、さすがに自衛隊音楽隊の演奏は素晴らしいですね。 オケではなく吹奏
【あらすじ&ひとりごと】 大阪の空堀商店街を舞台にした物語です。 祖父が遺したガラス工房を引き継ぐことになった兄妹。 兄の道(みち)は、周りと同じ行動がとれず、他人の気持ちに共感することができないが、純粋な気持ちをガラスに吹き込んでいく。一方、妹の羽衣子(ういこ)は、兄とは対照的に何事もそつなくこなすが、突出したものがなく、兄と自分を比較しながら特別な才能を求め自分を追い込む。 そんなある日、工房にガラスの骨壺が欲しいという依頼がくる。骨壷をつくりたい道と相容れない羽衣子。 ふたりは子どもの頃から互いに蟠りを持ち、それぞれを疎ましく思っていたが、祖父への思いから少しずつ互いを理解し、負の感情を溶かしていく。ガラス工房で繰り広げられる10年間の兄妹の絆の行方を描いた物語です。 兄妹が嫉妬や疎ましさを抱きながらも、それぞれが他人から傷つけられたときには、互いを思いやり、ときどき心を通わせる瞬間
ゴールデンウィークが終わりましたね。10連休という方もいたのではないでしょうか。 休み明けの出勤、いやですね。一日が長い。遊びに出掛けるのと違って。 連休中、皆さんはどこかへお出掛けされましたか? どこに行っても混んでるし、道路は渋滞、連休中は家にいるに限るという方も多いのではないでしょうか。 わたしは、4日(土)に福島県いわき市に行ってきました。小名浜は震災前と後に何度か訪れたことのある懐かしい港町。 この場所にドラム缶のような大きな鍋に蟹汁が売られていたとか、ここで海鮮丼を食べたとか懐かしく思い出しながら、あれから新たにお店や施設が増え整備されたいわき市を満喫しました。 まずは「道の駅よつくら港」へ 常磐自動車道は渋滞もなく、お昼少し前に「道の駅よつくら港」に到着。 まずは昼食。リーズナブルな海鮮丼・寿司が目当てです。 店内はお客さんで溢れかえっていて、空きテーブルもなかったのですが、
【あらすじ&ひとりごと】 佐藤厚志さんの芥川賞受賞作品『荒地の家族』を読みました。 あの3.11の東日本大震災から十年余、被災地に生きるひとりの男の悲しみや苦悩、毎日やるせない虚無感、焦燥感を淡々と描いた作品です。 宮城県亘理町が舞台で、東日本大震災とは明記されていませんが、大震災を「災厄」、津波を「海が膨張」と表現しているところに震災時のリアルさが何とも言えません。 造園業の一人親方である坂井祐治は、仕事を独立した直後に災厄に見舞われる。 仕事道具も失い苦しい日々を過ごす中、その二年後に妻も病気で亡くし、その後再婚するもうまくいかず、実家で母親とともに息子と生活する。 今までの生活が決して元通りにならないという虚無感を抱え、答えの出ない答えを探し求め、さまよう苦悩を描いています。 社会は災害が起きるたび、長い年月を経て、家を建て直し道を整備し、町を復興させます。でも、傷ついた人の心は癒さ
【あらすじ&ひとりごと】 佐藤究さんの直木賞、山本周五郎賞受賞作品『テスカトリポカ』を読みました。 暴力シーンや殺人、麻薬・臓器密売など、想像以上に凄まじかったですが、ストーリーはとても濃厚なクライムミステリでした。 しかも500頁を超える長編ですが、そんなえぐいシーンでは自分がやられているような感覚になって、自然と肩に力が入り読んでいたものの、その圧倒的な臨場感に中だるみもせずに読み終わることができました。さすがに重厚感のある作品でした。 メキシコから日本へ逃れてきた母・ルシアと、暴力団員・土方興三との間に生まれた土方コシモ。 コシモは友達もいなければ、授業にもついていけず、小学4年生になったとき教科書の入ったランドセルを川に投げ捨て不登校となる。いつも空腹で、児童公園に落ちている小枝を拾い、小刀で模様を彫ることが日課となった。 あることが原因でコシモは両親を殺してしまい、少年院へ。退院
『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その33 『ちえ者エルゼ〈KHM34〉』 【あらすじ(要約】 ひとりの男がいて、娘がいました。娘は「ちえ者エルゼ」と言われていました。年頃になったので、父親は「結婚させよう」と言い、母親は「そうですね」と言いました。 やがて遠くからやってきた者がいました。ハンスという名前です。エルゼを嫁にほしいと言うのですが、評判どおりのちえ者ならば、という条件をつけました。「この娘なら、より糸が頭の中に入っていますよ(利口なこと)」と父親は言いました。すると母親は「この子は風が通り抜けるのが見えたり、ハエが咳をするのが聞こえたりしますよ」と言いました。 ハンスは「本当にちえ者でなければもらいません」と言いました。 みんなで食卓につき、食後母親が「地下室へ行ってビールを持ってきて」とエルゼに言いました。 エルゼは地下室へ下りると、椅子を持ってきて、樽の前に置きました。そ
『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その32 『靴はき猫』 【あらすじ(要約)】 粉ひき男が息子3人、粉ひき場、驢馬、牡猫を持っていました。 粉ひきが死ぬと財産を分けました。長男は粉ひき場、次男は驢馬、三男は牡猫。 三男は「ぼくがもらったものが一番悪い」と言いました。 「聞いてください」と牡猫が口をききました。「私に編上げの靴を一足ください」と。 三男は、猫が言うのはおかしいと思い、靴屋に猫の靴の寸法をとってもらいました。 靴が出来上がると牡猫は靴を履き、袋に麦を入れ、郊外へ出て行きました。 その頃の王様は、シャコという鳥が好物でしたが、手に入りません。森にはシャコが多くいるのですが、怖くて狩人も近寄れません。猫は自分がやろうと目論見ました。 森へ入ると猫は、麦を入れた袋の口を開け、口の内側に麦を広げ散らし、姿を隠して待ち伏せしました。 間もなくシャコがやってきて、どんどん袋の中へ入ってい
【あらすじ&ひとりごと】 芥川賞作品を久々に読みました。とは言っても、今まで数える程度しか読んだことはありません。 記憶にあるのは、『コンビニ人間』や『火花』『スクラップ・アンド・ビルド』、古い作品では、『限りなく透明に近いブルー』『海峡の光』など。正直、あまり心に残っていません。 読みとるのに難しいという印象が強くて、手を伸ばしづらいイメージが私にはあります。皆さんはどうでしょうか。 井戸川射子さんの『この世の喜びよ』を読みました。 ショッピングセンターの喪服売り場で働く主人公・「あなた」は、フードコートでいつも見かける中学生の女の子と知り合う。 そして「あなた」が、少女との語り合いから、かつての自分の子育ての日々や、これまでの生き方など、ありがちな日常を穏やかに回想していくという物語です。 表題作のほか、「マイホーム」「キャンプ」を収録した3つの作品集です。 この普通の日常生活を綴って
【あらすじ&ひとりごと】 新名 智さんの横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作『虚魚(そらざかな)』を読みました。 巻末から見てみると、新名さんの受賞の言葉と、選考委員(綾辻行人さん、有栖川有栖さん、黒川博行さん、辻村深月さん、道尾秀介さん)による最終候補に選出された4作への選評が書かれていました。 厳しいお言葉もあり、さすがに大御所作家さんだなあと思いながら本文へと入っていきました。出版された大賞作品の巻末に他の候補作の選評も載せるのですね。 体験した人間は死んでしまうという怪談を探す怪談師・丹野三咲。そして呪いか祟りで死にたいと思っているカナちゃん。二人はともに暮らし、人が死ぬというその本物の怪談を見つけ出し、三咲は両親を事故死させた男をその怪談で殺すという目的を持っている。 そんなある日、「釣りあげたら人が死んでしまう魚がいる」という噂を釣り堀でカナちゃんが耳にし、その真偽を二人は調べ始
【あらすじ&ひとりごと】 森山東さんの京都を舞台に繰り広げられる、祇園の芸舞妓をめぐる雅びなホラー作品です。読み進めていくうちに、実はミステリでもありました。 怪異の正体とは、、、徐々に明かされていく驚愕の真実。 『お見世出し』で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞され、その後に『デスネイル』、そして三作目が本作品です。三作品の中でこの作品が一番おもしろかったです。 舞妓を志す恵里花は、祇園南一である老舗のお茶屋「夕月」を訪れる。女将の月春は恵里花の才能を直感し、夕月に置くことを認めるが、恵里花の周囲では不可解な霊現象が起き続ける。 それは夕月に伝わる伝説・梅姫の呪いによるものなのか、華やかな祇園の世界に巻き起こる悪夢と悲劇を描く連作短編集です。 これは祟りというよりも生きた人間の怖さですね。やはり何よりも怖いのは、生きている人間の執念なのかもしれません。 芸舞妓として生きる華やかな世界の裏には
【あらすじ&ひとりごと】 町田そのこさんの『星を掬う』を読みました。 家族、親子って、どうあるべきなのか。分かり合える正しい繋がり方って何だろう。そんなことを考えさせられる作品でした。 芳野千鶴は、小学1年の夏休みに出掛けた母親との二人旅の直後に捨てられ、父と祖母に育てられるが、二人の肉親も亡くし、ひとりとなる。 高校卒業後就職し、同じ会社の男性と結婚するが、DVで離婚。その後も元夫からは逃げられず、暴力を振るわれ続け、金を取られるという不幸な生活が続く。 しかし、賞金欲しさに「夏の思い出」をラジオ番組に投稿したことで、千鶴の人生が変化していく。 その投稿は母親との夏の旅の思い出。それを聞いて、連絡してきたのは千鶴を捨てた母の娘だと名乗る恵真だった。 そして、千鶴は母の暮らす「さざめきハイツ」を訪れ、母・聖子と再会する。 そこには、恵真のほか、娘に捨てられた彩子、それぞれ理由を抱えた人たち
【あらすじ&ひとりごと】 高校時代のスクールカーストの「いじめ」に関わった生徒たちそれぞれの思いの葛藤、苦悩を描いた小説です。 北海道の高校を卒業した3年6組のクラスメートたちに、10年前の卒業時、校庭に埋めたタイムカプセルの開封を兼ねて、同窓会の開催案内が届いた。 同窓会のSNSが立ち上がり、高校生活を懐かしむコメントに盛り上がる中、「例のタイムカプセルに遺言墨で書いたメッセージを入れた人がいますが、知っていますか」と発信元不明の書き込みがされる。 さらに「岸本李矢さんを憶えていますか」と。 そこに関わる生徒それぞれの視点で現在と過去が語られ、ある事実が明らかになっていく。そして同窓会当日を迎え、タイムカプセルを開封する。 「遺言墨」とは、書けば必ず相手に内容と真意を伝えることができるけど、それが最後のメッセージになるという都市伝説らしい。 私たちが子どもの頃は、「スクールカースト」なん
『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その27 『黄金の毛が三ぼんはえてる鬼〈KHM29〉』 【あらすじ(要約)】 昔、貧しい女が男の子を生みました。頭に福ずきんを被っていたので、14歳になるとお姫様を嫁にするという予言がありました。 王様がこの村に来て、何か変わったことはないかと村人に訊ねると、「福ずきんを被った子が生まれたので、14歳になるとお姫様を嫁にもらうだろうと予言する者もいます」と言いました。 王様は腹黒い人でその子の親のところへ行き、親切なふりをして「貧しいようだが、その子を私が面倒を見よう」と言いました。 両親は断りますが、金貨をたくさんくれると言うし運のいい子だと考え、子を王様に渡しました。 王様は子を箱に入れ、川に放り込み、思いもよらないやつに娘をやるところだったと思いました。 ところが箱は沈まず流れていき、都から離れた水車場に引っ掛かりました。 粉ひきの小僧が見つけて、
【あらすじ&ひとりごと】 人類滅亡まで五日間のカウントダウンミステリーです。 残された数日間のパニックを描いた作品は他作でもいくつかありますね。 小惑星「ダイス」が地球に接近し、衝突するかもしれないという「裁きの刻」までの残り五日間、女子大生・漆原圭子が殺された。 人類が終わりを迎えるかもしれないという恐怖に混乱する中、被害者の弟・亮(高校生)は地球が消滅する前に唯一の肉親である姉を殺した犯人を見つけ出し、復讐を決意する。 本作は医療ミステリーではありませんが、やはり作者が医師ならでは、肉親との依存関係や疾病、薬が事件の真相へと繋がっていきます。 犯人を追い詰めながらも真相は二転三転しますが、行き着くところは何となく予想した結末。 地球が滅亡するときは、亮は誰と一緒にいたいのか。圭子は誰と一緒にいたかったのか。 行き過ぎた姉弟愛、この姉弟の関係とその周囲を取り巻く人たちの異常性が事件を招い
『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その25 『死神とがちょうの番人』 【あらすじ(要約)】 不幸ながちょう飼いが、白いがちょうの番をしながら大きな川の岸を歩いていました。 そのとき、死神が川を渡ってきたので、どこから来たのか、どちらにおいでなのか、がちょう飼いが聞きました。 死神は、この世の中から立ち去るものだと答えます。 がちょう飼いは、どうしたらこの世の中から立ち去ることができるのかと死神に聞くと、この川を越えて向こう岸にある新しい世の中へ行くだけだと答えました。 がちょう飼いは、この世の生活が嫌になったので、自分を川向こうへ連れて行ってほしいと頼みました。 死神は、まだそのときが来ない、今は他にしなければならない仕事があると言いました。 そこから遠くないところにケチんぼうの欲張りがいました。 この男は毎晩寝床に入ってからも、お宝をもっとたくさん集めることばかりを考えていました。 死
【あらすじ&ひとりごと】 砥上裕將さんの作品といえばデビュー作の『線は、僕を描く』。横浜流星さんの主演で映画化もされましたね。 水墨画の「線」を描くことで、悲しみを秘めて生きる主人公の「僕」が、失ったものを埋めながら救われていく。繊細な描写がとても印象的でした。 今回は『7.5グラムの奇跡』を読みました。視能訓練士の若者の物語です。 視能訓練士の資格を取ったが、なかなか就職先が決まらない大学卒業間近の野宮恭一。後がない中、面接を受けたのは北見眼科医院というまちの医院。 おおらかな院長は、恭一のしっかりとした思いを感じ取り、即採用することにする。恭一は、失敗を繰り返しながらも先輩たちに見守られ、そして患者と向き合い、ともに自らも視能訓練士として成長していきます。 5話からなる連作短編集で、繊細な器官である「目」をめぐり、どの短編もとても心温まるきれいな物語でした。 タイトルにある「7.5グラ
『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その23 『赤ずきん』<KHM26> 【あらすじ(要約)】 昔、小さな愛くるしい女の子がいました。この子を一番かわいがっていたのは、お祖母さんでした。 あるとき、お祖母さんは赤いビロードの頭巾をあげました。これがこの子にとてもよく似合って、他のものをかぶろうとしなくなったので、皆がこの子を赤ずきんと言うようになりました。 ある日、お母さんが「お菓子とぶどう酒をお祖母さんのところへ持って行ってちょうだい。病気で弱っているから、これを食べると体にいいのよ。それから外へ出たらおてんばしないで歩くこと、脇道へ入っちゃダメ。転んで瓶を割ったら、お祖母さんにあげるものがなくなるからね。部屋に入ったらあいさつをして、その前にきょろきょろ見回したりしないでね」と赤ずきんに言いました。 お祖母さんは村から30分くらいかかる森に住んでいて、赤ずきんが森にさしかかったとき、狼
『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その22 『七羽のからす』<KHM25> 【あらすじ(要約)】 昔、ある男に息子が七人いましたが、娘は一人もいないため、娘をとても欲しがっていました。 そのうちに、おかみさんに子どもが生まれると待ちに待っていた女の子でした。 男はとても喜びました。けれども、子どもは小さく、痩せこけて体が弱いため、すぐに洗礼を受けさせなければなりませんでした。 父親は、男の子の一人を泉にやって、洗礼の水を持って来させようとしました。 すると、他の子どもたちも一緒にかけていき、競争で水を汲もうとしたので、壺が泉の中に落ちてしまいました。 皆どうしていいかわからず、帰ろうとしませんでした。 父親は、いつまでも帰ってこないので、いらいらして、「また遊びに夢中になって、用事を忘れてしまったんだな」と言いました。 ぐずぐずしていると、女の子が洗礼を受けないうちに死んでしまわないかと
『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その21 『ホレのおばさん』<KHM24> 【あらすじ(要約)】 ある寡婦(ごけ)さんに二人の娘がいました。 その一人は美しくて働き者で、もう一人は器量が悪く怠け者でした。 けれども、母親は器量が悪い怠け者の娘が本当の娘なのでずっとかわいがり、もう一人の娘は、家中の仕事を一人で引き受け、灰だらけになって働かなければなりませんでした。 かわいそうにこの娘は、井戸のそばに座らせられて、指から血が出るほどたくさんの糸を紡がなければなりませんでした。 ある時、糸巻きが血だらけになったので、井戸にかがみ、糸巻きを洗おうとしたら、井戸の中に落としてしまいました。 娘は泣きながら継母に話すと、継母は叱りつけ、糸巻きを拾ってくるように言いました。 娘は井戸端へ引き返し、どうしていいのかわからず、井戸の中へ飛び込みました。娘は気を失いましたが、気が付くときれいな草原にいま
鳴子ホテル 6月30日(金)、7月1日(土)で宮城県大崎市にある名湯鳴子温泉に行ってきました。湯色がさまざまな色に変化するという鳴子温泉。 そして、「こけし」が伝統工芸品として有名ですね。温泉街のお店にはかわいらしいこけしがたくさんありました。 以前から一度訪れてみたい温泉地でしたので、少し遠かったですが泉質、宿とも大満足でした。 「回転鮨 清次郎(仙台泉店)」で昼食 「バナナマンのせっかくグルメ」で日村さんが訪れていたとは知りませんでした 宿泊先に向かいながら、まずはお目当ての「回転鮨 清次郎」にて昼食。 ネタが新鮮だと、こうも味が違うとは。魚の臭みがなく甘味がすごい。北関東の海なし県では考えられないですね。 ランチ鮨11貫が2,200円(税別)なんて安い。あら汁も別注(鮭、鱈) 宿泊先の「鳴子ホテル」に到着! お風呂と食事会場(HPからお借りしました) 到着してまず感じるのが硫黄の香り
【あらすじ&ひとりごと】 『クスノキの番人』を読みました。 いつもの東野さんらしいミステリーではなく、むしろファンタジーというか、スピリチュアルでとても神秘的な物語でした。 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』のようなやさしく、人が生きて行くことに希望を持てる物語。 不当に職場を解雇され、その腹いせに会社に忍び込み、窃盗未遂で逮捕された直井玲斗のもとに突然弁護士が現れた。 依頼人は明かされず、心当たりもないが、その依頼人の「命令」を聞くなら釈放されるよう動くと言う弁護士に、今後に考えをめぐらすが玲斗は従うことにする。 釈放され、依頼人の待つ場所へ行くと、柳澤千舟と名乗る年配の女性は、それは伯母であった。玲斗は早くに親を亡くし、祖母に育てられるが、千舟は玲斗の母親の腹違いの姉という。 そして、その「命令」とは、「クスノキの番人」になること。祈れば願いが叶うというクスノキを訪れ祈念する人々と、番人を任された
【あらすじ&ひとりごと】 ストーリーの続編ではないですけど、『ひと』『まち』『いえ』の3シリーズとなっている『まち』を読みました。 『ひと』も自分の心の中にするっと入ってくるような、淡々としていてやさしい雰囲気が伝わる作品でしたが、今作も同様の気持ちになりました。 尾瀬ヶ原の広がる群馬県片品村で歩荷(ぼっか)をする祖父に育てられた江藤瞬一。 歩荷とは、食料や燃料などを麓から山小屋へと運ぶ仕事のこと。数十キロもの荷物を背負い、十数キロの山道を登り、ときには二往復することもあるという。この「歩荷」という言葉を私は知りませんでした。 瞬一は、高校卒業後、祖父の勧めで上京し一人暮らしを始める。祖父から、「人に頼られるような人間、人を守れる人間になれ」との教えを胸に都会へ出ていき、人と交わりながら、強くやさしく成長していく若者の物語です。 小野寺さんの作品は、『ひと』、『まち』、『ライフ』、『縁』な
『完訳グリム童話集(一)金田鬼一訳』その20 『はつかねずみと小鳥と腸づめの話』〈KHM23〉 【あらすじ(要約)】 昔、はつかねずみ、小鳥、腸づめが友達になって所帯をもち、仲良く豊かに暮らしていました。 小鳥の仕事は、毎日森で薪を取ってくること。はつかねずみは水を汲み火をおこしてお膳立て、腸づめは料理をする役でした。 幸せ過ぎる者は、何か違ったことをしてみたいと思うものです。 ある日、小鳥は別の鳥に会い、「 おまえが骨折って働いてる間に、あとの二人は楽をしているぞ 」と言われます。 確かに、はつかねずみは火をおこし、水を汲んでしまえば自分の部屋に引っ込んで、お膳立てまで休んでいられるし、腸づめは鍋のそばにいて料理をするだけでいい。ご飯どきになると、腸づめは野菜シチューの中に自分をすべりこませ、脂肪を加え、塩味を付け出来上がり。 そこへ小鳥が重たい木を運んでくると、皆で食事をし、それから朝
【あらすじ&ひとりごと】 初めて読んだ伊与原 新さんの作品が『八月の銀の雪』。一話一話の短編集がどれも心地よくて、今回も期待して『月まで三キロ』を読みました。 本作品は、同様に六篇からなる短編集で、伊与原さんが大学で専攻されていた地球惑星科学の知識を織り交ぜながら、人との触れ合いをさらりと描いた、心の奥の琴線に触れる優しい物語でした。 どれも一話が40頁程度なので空いた時間に一編を読むことができます。 『八月の銀の雪』も短編ゆえのさらっと心を流れていく切なさや暖かさが短く綴られていたのですが、本作も気持ちが穏やかになる素敵な物語でした。 六遍の中の表題作『月まで三キロ』では、死に場所を探してタクシーに乗る男性と、その運転手とのエピソード。 運転手は、「月に一番近い場所」へと誘い、「月は一年に3.8センチずつ、地球から離れていってるんですよ」と男性に話します。 各編に織り交ぜられた、そんな科
とても暑くなってきましたね。私は毎朝90分ほど散歩していますが、朝とはいえ気温は上がっていてそろそろ暑さがしんどくなってきました。 いつも河川敷の土手沿いを橋から橋へ一周してくるのですが、最近よく鳴き声や姿を見かけるのがキジです。 私が住んでいるところは田舎なので、カラス(都会でもいるかな)やサギ(シロ、アオ)、カワウの群れはふつうによく見かけます。 でも、河畔林にキジも見かけて国鳥とはいえここではそれほど珍しくありません。(種類はわかりませんが) きょうは、キジを4羽見かけました。(鳴き声はそれ以上です) すべてオスで「ケーン、ケーン」というか金属を擦ったような甲高い鳴き声です。そのとき力をこめるように少し羽を持ち上げます。 今がちょうど繁殖期らしく、鳴いてオスが縄張りを主張しているそうですね。そして、人の気配を感じると飛んで逃げずに歩いて逃げます。それがとても速いのです。早送りしたよう
人生とは誰かに与えられるものではなく、自ら選択するものであり、自分がどう生きるかを選ぶのは自分なのです。 『嫌われる勇気』を読みました。 今回は【読書】というよりは【ひとりごと】です。 私は自己啓発本というものをあまり読んだことがないのですが、はてなブログでも多くの方が紹介されているので、たまたま中古本が目に留まり購入しました。 哲人と青年の対話構成になっていて、議論にハラハラしますが、それが問題を掘り下げられていてとてもわかりやすかったです。 これは、ソクラテス哲学の伝統を踏まえているわけなんですね。 それはさておき、アドラーの考えにはとても共感することができました。人生の問いに対してとてもシンプルな答え。 この考えを正しく理解するには十分な年月が必要とのことでしたが、身近なことにおいて少しずつ実践していきたいと思います。 「すべての悩みは対人関係の悩み」とは、尤もですね。 今までを振り
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