色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 作者: 村上春樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/04/12メディア: ハードカバー クリック: 3,074回この商品を含むブログ (342件) を見る今回の「多崎つくる」の物語は、羊3部作をはじめとする「僕」の物語と構造がとてもよく似ていると思う。 例えば、私が村上春樹の小説を好きだったのは、地面と自分の間に薄紙一枚の隔たりがあるような、体中が空っぽであるような何もなさを「そういうもの」として描いていたからのように思う。そして「僕」の物語は、そのような空洞を抱える人物が最終的に何らかの巡礼の旅(もしくは羊をめぐる冒険)にでて、どこかで世界が裏返る。そのような構造の作品が多かったと思う。 初期の作品は特に、その旅の過程の描写が魅力的で、読んでいてとても楽しかった。 → しかし多崎つくるの抱える空洞は「そういうもの」ではなくとても具体的