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パリ五輪
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米スタンフォード大学の研究チームが、生物学に基づくうつ病の6つの「バイオタイプ」を明らかにし、各タイプに特有の脳活動のパターンと、行動の特徴、適切な治療法を提供できる可能性について報告している。(IMAGE BY SCIEPRO, SCIENCE PHOTO LIBRARY) うつ病を患っている人の多くは適切な診断を受けておらず、手探りの治療を受けている。うつ病と診断された人の約30%が、複数の治療を受けても症状が改善していないという推定もある。このような状況では治療は高くつき、効率が悪く、患者を失望させ、ときに有害でさえある。 米スタンフォード大学医学部の精神医学・行動科学教授であるリアン・ウィリアムズ氏の研究チームは、うつ病のタイプごとの生物学的な指標(バイオマーカー)を特定することで、このような状況を変え、標的を絞った治療を行えるようにすることを目指している。氏らは2024年6月17
古代エジプトで、ワニはスピリチュアルな存在として重要な役割を果たしていた。このワニのミイラは、エジプト南部のワニ崇拝の中心地コム・オンボで発見された。(PHOTOGRAPH BY KENNETH GARRETT, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 古代エジプトでミイラにされたナイルワニの3次元X線CTスキャンを行ったところ、ワニの最後の数時間の行動が明らかになった。胃の中の釣り針をはじめ、今回の驚くべき発見は、古代エジプト人がこの危険な爬虫類をどのように見て、どのように扱っていたかについての重要な証拠となる。論文は学術誌「Digital Applications in Archaeology and Cultural Heritage」の9月号に掲載された。 古代エジプトでは多数のワニが供物にするためにミイラにされた。「このワニは、ナイル川の漁師が偶然捕獲したものかもしれ
米カンザス州で竜巻を監視するプロのストームチェイサー(竜巻追跡人)。この州では竜巻がよく発生する。新作映画『ツイスターズ』には、このようなストームチェイサーが登場する。冒険好きな観光客を同乗させるプロもいる。(PHOTOGRAPH BY JIM REED, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 本日公開される映画『ツイスターズ』。その予告編には、登場人物たちが竜巻に向かって全速力で車を走らせたり、花火を打ち込んだり、超巨大竜巻を破壊する計画を立てたりする様子が収められている。(参考記事:「ハリケーン撃退法、珍案は核爆弾だけではなかった」) こういった危険な行為の多くは、ハリウッドの産物だ。しかし米国中部では、何十年も前から観光の目玉として竜巻などを追跡するストームチェイシングが行われている。実際に10社以上がツアーを開催しており、高いお金を払う観光客を、できる限り安全に竜巻や
最近の研究では、ソーシャルメディアに多くの時間を費やす人ほど、睡眠障害や悪夢を経験しやすいことが示されている。(PHOTOGRAPH BY ANNASTILLS, GETTY IMAGES) ソーシャルメディア(SNS)の利用と、睡眠の質が下がったり悪夢が増えたりすることとの関連を示した研究が、2024年3月に学術誌「BMC Psychology」に発表された。これまでもTikTok、Instagram、X(旧ツイッター)、FacebookなどのSNSの頻繁な利用は、うつ病、孤独感や孤立感の増加、ネットいじめや自殺のリスクの上昇など、メンタルヘルスへの気がかりな影響との関連が指摘されてきた。 「SNSが私たちの生活に深く浸透するにつれ、その影響は私たちの夢にまで及んでいる可能性があります。起きている間にSNSに多くの時間を費やす人ほど、悪夢を見やすいことが明らかになったのです」と、この論文
フランス領ポリネシアのチョープーで、波の下に潜るオーストラリア人サーファーのオリビア・オタウェイ氏。チョープーは2024年のパリオリンピックのサーフィン会場に選ばれたが、この決定により、サンゴ礁が傷ついたり、この場所特有の波が変わってしまったりする懸念を巡る議論が巻き起こった。(PHOTOGRAPH BY RYAN PIERSE, GETTY IMAGES) 世界中の一流アスリートが現在、2024年のオリンピックのためにパリに集っている。ただしサーフィンだけは、1万5000キロ以上離れたフランス領ポリネシアのタヒチ島チョープーで競技が行われる。 チョープーは世界でも有数のすばらしい波で知られている。しかし、オリンピックのために建設する審判用タワーを巡って、数カ月間にわたって激しい議論が続けられてきた。タワーが手つかずのサンゴ礁を傷つけ、波そのものにも影響を及ぼすことが懸念されたためだ。(参
捕食者から回避するために「死んだふり」をするアリモドキゾウムシのオスはメスの性フェロモンを感じると覚醒することを、琉球大学農学部の日室千尋協力研究員(昆虫生態学)らが明らかにした。サツマイモ害虫であるアリモドキゾウムシの駆除には人為的に不妊化して大量に放す不妊虫放飼法が使われているが、性フェロモンをうまく組み合わせることでより効率的な駆除が可能になると期待される。 アリモドキゾウムシは、体長6ミリメートルほどのゾウムシ。東南アジアやアフリカ、北米、中南米、オーストラリアなど亜熱帯地域のほか、国内でも奄美諸島、沖縄諸島、小笠原諸島に生息する。サツマイモの害虫として知られ、食い荒らされたイモは黒く変色して悪臭を放ち、苦くなって食べられなくなる。 天敵であるクモや鳥の口に挟まれるような刺激を受けると、触角を折りたたみ、脚を硬直させて動かなくなる「死んだふり」をすることを2001年に共同研究者の岡
コモドドラゴン(写真はヤギの死骸を食べるオス)はインドネシアの小スンダ列島に生息する。(PHOTOGRAPH BY STEFANO UNTERTHINER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 世界最大のトカゲである「コモドドラゴン」(コモドオオトカゲ、Varanus komodoensis)の歯はすばらしい。長くて湾曲したギザギザの歯は、獲物の肉を切り裂くのに完璧に適応している。2024年7月24日付けで学術誌「Nature Ecology & Evolution」に掲載された研究により、この見事な歯が鉄のコーティングで強化されていることが明らかになった。 「爬虫類の歯で鉄を確認したことはこれまでありません。とても興味深いです」と、米ニューヨークのダーメン大学の古生物学者で、論文の共著者でもあるドメニック・ダモーレ氏は言う。(参考記事:「辰年に新種発見 火は吐かないが現実
自閉スペクトラム症(ASD、自閉症)の「友人を記憶する能力の低下」という症状が海馬のある領域の異常に起因することが分かったと、東京大学定量生命科学研究所の奥山輝大准教授らの研究グループが発表した。ASDの神経メカニズムの理解が進み、治療法の開発につながる成果と期待される。 奥山准教授によると米疾病対策センター(CDC)が2023年に発表した調査で米国では36人に1人の割合でASDと診断され、増加傾向にある。興味が限定し、コミュニケーションや共感性に難しさを抱えるほか、友人一人一人を記憶(社会性記憶)する能力の一部が低下することが臨床研究により報告されている。 奥山准教授やジョン・ミョン助教(研究当時・大学院生)らの研究グループはこれまで記憶を司る海馬の中の「腹側CA1」と呼ばれる領域の神経細胞に「誰」という他者の記憶が貯蔵されており、複数の神経細胞の組み合わせにより特定の相手についての記憶
女性の「シャーマン」が埋葬されたのは紀元前10世紀。この頃、そこから240kmほど離れたトルコ南東部に、農耕が発達する前の重要な過渡期の狩猟採集民の複合集落あるいは宗教的施設と考えられるギョベックリ・テペ(写真)が建設された。(PHOTOGRAPH BY VINCENT J. MUSI, NAT GEO IMAGE COLLECTION) およそ1万2000年前にチグリス川の上流近くで亡くなった女性は「シャーマン」だったかもしれないと示唆する研究が、7月9日付けで学術誌「L'Anthropologie」に発表された。女性が埋葬された時代は、農耕が発達する少し前の「先土器新石器時代A期(PPNA)」(紀元前1万年~紀元前8800年頃)だ。場所は現在のトルコ南西部のチェムカ・ホユック遺跡で、女性はさまざまな動物の骨とともに埋葬されていた。 「近年のチェムカ・ホユック遺跡の発見は、PPNA期、お
コウモリはどうやって飛んでいるのか? 米ブラウン大学では、風洞を用いてコウモリの飛行の仕組みを研究している。写真はエジプトルーセットオオコウモリ。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI) 驚異の飛行能力をもち、さまざまなウイルスに感染してもなぜか病気にならないコウモリ。地球の生態系に欠かせない謎めいた動物に、科学者たちが魅せられている。 誰もがコウモリに心を奪われるわけではない。だが、好きになった人はとことんのめり込む。米ブラウン大学で生物学と工学の教授を務めるシャロン・スウォーツもその一人だ。若い頃にテナガザルを研究していたが、コウモリの翼の繊細な骨格構造と、哺乳類が飛行能力を手に入れる代わりに失ったものに興味を引かれた。そこで霊長類の研究から一時離れ、オオコウモリを研究するためにオーストラリアへ渡った。 スウォーツは、ある日の夕方に郊外のゴルフ場を訪ねたときのこと
今年も蛾週間(ガを愛でる週)がやってきた! 毎年7月下旬、2024年は20日(土)から28日(日)となっている。この連載の100回目「「嫌われ者」の蛾に対するぼくの思い」でも触れているので、ガを愛でる参考にしてみてくださいね。 ここはコスタリカの熱帯雲霧林、いつもながらぼくが飼育研究&学習している昆虫たちの半分以上がガとチョウで占められている。チョウもガも同じ仲間で、コレ! といった決め手になる見分け方の特徴はなく、系統体系によってガの部類に入るもののほうがめちゃくちゃ多種多様なのが現状だ。ぼくは、チョウよりもガのほうが専門で、とくに前翅の長さが5ミリ(開帳1センチほど)以下の小さなガで、虫こぶを形成したり(第26回で紹介)、葉に潜ったりする絵描き虫(第11回)を好んで研究している。ほか、気になった「ヘン」なものも飼育しているのだが(笑)。 今回の蛾週間の寄稿に伴い、山ほどある写真と無数の
ウランゲリ島に生息していた最後のケナガマンモス(イラスト)は、約4000年前に絶滅した。これまで、近親交配により有害な遺伝子変異が蓄積して数が減っていき、絶滅に至ったと考えられていたが、最新のDNA分析により、もっと複雑な物語が見えてきた。(ILLUSTRATION BY BETH ZAIKEN) 地球最後のケナガマンモス(Mammuthus primigenius)は、約4000年前までシベリアの沖、北極海のウランゲリ島に生息していた。ケナガマンモスは1万年ほど前の温暖化による海面上昇の際にこの島に取り残され、本土に生息していた仲間たちが絶滅した後も、東西の長さが150kmほどしかないこの小さな島で6000年間生き延びた。 科学者たちはウランゲリ島のマンモスが絶滅した原因を探っているが、まだ解明には至っていない。だがスウェーデン、ストックホルム大学の遺伝学者で、ナショナル ジオグラフィッ
タンポンに含まれる金属を測定した初の研究で、ヒ素や鉛などが含まれていることが示された。(PHOTOGRAPH BY HANNAH WHITAKER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 「毒の王」の呼び名で知られるヒ素や、ファン・ゴッホの精神疾患の原因ともいわれる鉛にさらされると、命の危険につながることもある。そんなヒ素や鉛などの重金属がタンポンに含まれているという論文が2024年7月3日付けで学術誌「Environment International」に発表され、米国のソーシャルメディア上には不安が広がっている。しかし実際のところ、われわれはどの程度心配するべきなのだろうか。 この新たな研究では、米国とヨーロッパ(ギリシャと英国)で購入した14ブランド、24製品の計30個のタンポンに、16種類の金属がどの程度含まれているかを分析した。その結果、研究者らは、毒性のあるものを
ツボカビに感染したキンスジアメガエル(Litoria aurea)は、太陽光で暖まったブロックの中で休むと回復できることが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY ANTHONY WADDLE) 仕組みはとても簡単だ。10個の穴を開けたレンガのブロックを直射日光が当たる場所に置くだけ。すると、暖かい場所を好むオーストラリアのキンスジアメガエル(Litoria aurea)は、蒸し風呂のようになった穴の中に飛びこみ、三角形の頭だけを出してくつろぎはじめる。カエルたちは知らないだろうが、この「カエルサウナ」が彼らの命を救えるという論文が学術誌「ネイチャー」に6月26日付けで発表された。 カエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis、Bdとも)という脅威の病原菌は、世界中で90種を超える両生類を絶滅させ、500種を減らしている。この真菌は涼しい場所を好むため、
女性の手の方が男性の手よりも冷えていることを示す画像。研究では、女性は男性よりも寒さに敏感であることが示唆されているが、これは性別よりもむしろ体のつくりに大きく関係する問題だ。(PHOTOGRAPH BY TYRONE TURNER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 屋外の気温が上がり続ける中、セーターや毛布を重ねて防寒対策をしているオフィスワーカーも少なくない。冷房の効き過ぎた職場では、大勢の職員(その多くが女性)が、暑いはずの夏に寒さに凍えており、これを「女性の冬」と表現する人もいる。 女性の方がより寒さに敏感であることを示す研究はあるが、そう単純な話でもない。2024年4月29日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された研究によると、どの時点で寒さを感じ始めるかには、性別よりも体の大きさと身体組成(体脂肪、骨、それ以外の割合)の方が大きく関わっ
新種の恐竜フォナ・ヘルゾガエ(Fona herzogae)の復元図。その化石から、彼らが多くの時間を穴の中で過ごしていたことが分かる。(ILLUSTRATION BY JORGE GONZALEZ/NORTH CAROLINA MUSEUM OF NATURAL SCIENCES) 米国ユタ州東部の砂漠にある9900万年前の岩石からは恐竜の化石が見つかることがあるが、そのほとんどが太陽の光にさらされて風化して砕け、小さな破片になっている。けれども、今回発見された新種の恐竜フォナ・ヘルゾガエ(Fona herzogae)の化石は違った。白亜紀の小さな植物食恐竜は地面に掘った穴で半ば暮らしていたため、ときどき運悪く生き埋めになるものがいて、同時代のほかの恐竜よりも多くの化石が残っていたのだ。論文は2024年7月9日付けで学術誌「The Anatomical Record」に発表された。 フォナ
東京で日傘をさす人々がミストシャワーの下で涼んでいる。この日は非常に暑く、日本の環境省は熱中症警戒アラートを発表した。日傘や雨傘の使用で体感温度は下げられると専門家は言う。(PHOTOGRAPH BY ISSEI KATO, REUTERS / REDUX) 焼けつく。うだる。溶ける。暑さを表す表現はさまざまだが、「暑い」という事実に変わりはなく、世界各地で暑さを乗り切る方法が模索されている。涼しい家の中に閉じこもっていられれば、それに越したことはないだろう。しかし、そういうわけにはいかない人にとっても、暑さをしのぐ方法はある。 まずはあくせくせず、無理を避けよう。そして汗をかいて体温を下げる体に備わった自然の冷却システム(生理的なクーラー)を有効に保つために、水分を十分に取ることだが、やれることは他にもある。(参考記事:「熱帯夜の安眠のポイントは体の「熱冷まし」にあり、方法は?」) 猛暑
米フロリダ大学で脳深部刺激療法(DBS)のための手術を受けるパーキンソン病患者。DBSは運動を制御する脳領域に電極を埋め込み、電気刺激で症状を和らげる治療法で、一部の患者では症状の大幅な改善が見られる。(PHOTOGRAPH BY ERIKA LARSEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 1817年、英国の外科医ジェームズ・パーキンソンが、「振戦麻痺(しんせんまひ)」と呼ぶ疾患の症例を報告した。それは高齢者の進行性の疾患で、振戦(ふるえ)、筋力低下、体の動きを制御できないなどの症状を特徴としていた。原因を特定できなかった彼は、科学者たちによるさらなる研究を期待して、論文を締めくくった。 それから2世紀以上が過ぎた今、私たちは「パーキンソン病」と呼ばれるようになったこの病気について何を知っているのだろうか? 治療の望みはあるのだろうか? 以下では、今はパーキンソン病研究
蚊に覆われた足。米アラスカ州ノーススロープ郡で撮影。磁石のように蚊を引き寄せる人もいるが、専門家によれば、科学によって裏付けられた対策がいくつかあるという。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 本格的な夏が到来し、この季節のあらゆるものに勇敢に立ち向かうときが来た――おなかをすかせた蚊も例外ではない。 耳障りな羽音を立て、刺されるとかゆい蚊は、夏の最も恐ろしい脅威のひとつでもある。通常、蚊に刺されても不快なだけだが、この悪名高い昆虫はマラリアやジカ熱、デング熱など、命に関わる病気を媒介する可能性がある。炎症やじんましん、吐き気などの深刻な症状を引き起こす場合もある。(参考記事:「ナチス、マラリア蚊の兵器使用を計画?」) しかも、人の活動やそれに起因する気候変動の結果、新たな地域に進出している蚊もいる。このため、蚊との接
太平洋深くで見つかったハナガサクラゲ(Olindias formosa)。半透明な傘とカラフルな触手を使って泳ぎ、刺胞を使って小魚やプランクトンを捕獲する。(PHOTOGRAPH BY TONY WU / NATURE PICTURE LIBRARY) 人は昔から海の生物に魅了されてきた。その点は、甲殻類や軟体動物をパピルスの巻物にスケッチしていたアリストテレスも、クラウドソーシングや遺伝子検査を駆使して新種のマンボウを見つけた現代の研究者も変わらない。 海の生きものについて多くの著書があるエリック・ホイト氏は、「海は未知の世界です」と話す。「海を見わたせば、イルカやクジラは見えるかもしれません。しかし、その下で何が起きているのかまでは見えません。私たちが知っているのは、海中にいる動物たちのごく一部だけなのです」 そこには、驚くような外見の動物たちも、生き延びるために苛酷な戦いを続ける動物
無害な緑色の着色剤を使って可視化した沖に流れる離岸流。世界の海水浴場における最大の脅威の1つだ。米国の海水浴場では、毎年100人前後が離岸流のせいで溺死している。(PHOTOGRAPH BY NOAA/AP) 海水浴に行く人はサメやエイやクラゲの心配をするかもしれないが、世界のどの地域の海岸にも、もっと危険なものがある。離岸流だ。海岸から沖に向かって流れる離岸流は、私たちを沖へ運んでゆく。沖に流されてパニックになり、強い流れに逆らおうとして体力を消耗すると、溺れてしまうことがある。 米国ではライフガードによる救助の80%以上、英国では王立救命艇協会(RNLI)のライフガードによる救助の60%、日本では海水浴場での溺水事故の約50%(日本ライフセービング協会調べ)が離岸流に関連したものになっている。米フロリダのあるビーチでは、2024年6月の4日間に5人の観光客が離岸流に流されて溺死した。
デンマーク中部にある泥炭地。このような北欧の泥炭地では、保存状態の良い人骨が多数発見されている。水温が低く、ミズゴケのような植物が繁茂し、酸素濃度が低いため、人の組織を何千年も保存するのに理想的な条件となっている。(PHOTOGRAPH BY LARS S. MADSEN/ALAMY) 1915年にデンマーク北部のビットルプ村で泥炭を掘っていたとき、砕けた頭骨を含む人骨と(この人物の殺害に使ったと思われる)こん棒、ウシの骨、器が見つかった。この人骨は「ビットルプマン」と呼ばれ、デンマークの先史時代に関する遺伝学的な研究の対象となった。2014年の研究は、ビットルプマンが別の場所で生まれ育ったことを示唆していたが、2024年2月に発表された新たな論文により、彼の人生が驚くほど詳しく明らかになるとともに、農業が始まったころの北欧の状況も垣間見えた。 「骨の主がどんな人物かが見えてきました。根本
日差しを楽しむ米カリフォルニア州マリン郡の女性。大半の白髪は加齢によるものだが、喫煙、紫外線、甲状腺疾患などが原因となっている場合もある。(PHOTOGRAPH BY KEENPRESS) いまだに科学はあらゆる老化現象に効く方法を発見できておらず、無情な時の流れに対抗する手段として、白髪染めを手に取る人は少なくない。 白髪隠しは世界で巨額のビジネスになっている。それにしても、髪はそもそもなぜ白くなるのだろうか。科学はいつの日か、これを元に戻す方法を見つけられるだろうか。 その答えはどうやら、われわれの毛包の中にある可能性が高い。毛包は髪に色素が付く場所であり、また多くの人にとって、色素の減少が始まる場所でもある。白髪に関わる「メラノサイト」という細胞は、髪や肌、目の色素であるメラニンを作る役割も担っている。 「メラノサイトの唯一の機能は色素を作ることであり、髪が成長する過程で、毛幹に色素
ツバルのフナフティ環礁に浮かぶフォンガファレ島の、最も狭い地点をバイクで通過するカップル。写真の左側は太平洋、右側は礁湖になっている。(PHOTOGRAPH BY SEAN GALLAGHER) ハワイとオーストラリアの中間に位置するツバルは、人口1万2000人にも満たない小さな島国だ。平均海抜は3メートル以下で、気候変動による海面上昇の危機にさらされている。全国民の半分以上が住む首都フナフティは、2050年までに潮位の上昇により50%の土地が浸水すると予測されている。 いずれ世界のほかの沿岸国も、同じ問題に直面することになる。そうなったとき何が起こるのかを示す例として、ツバルは多くの人々の注目を集めている。世界銀行が2021年9月に発表した報告書は、2050年までに世界で2億1600万人以上が気候変動によって国内移住を余儀なくされると予測している。(参考記事:「海面上昇が加速、2050年
チュニジア、カルタゴ近郊のシディ・グリブ遺跡で発見されたモザイク画。ビーナス姿の高貴な女性と、そばで着替えや髪の手入れを手伝う2人の召使いが描かれている。古代ローマで使われていた身だしなみを整える道具は、かつてローマ帝国だった場所のいたるところで発見されている。(PHOTOGRAPH BY BRIDGEMAN IMAGES) 古代の洗面用具、50個以上の毛抜き、1500年以上前のネイルケア道具。英国で発掘されたこれらの品は、いずれもブリテン島がローマ帝国の一部だった時代のものだ。 西暦43年のローマ帝国の侵攻に始まり5世紀に終わるこの時代、古代ローマの文化がブリテン島に持ち込まれた。特に注目すべきは入浴施設と身づくろいの習慣で、ローマ帝国が征服した他の地域にも広まっていた。 「公衆大浴場が帝国内に広がるのに伴って、身づくろいの習慣も広がったのです」と、英国の歴史的建造物保護機関「イングリッ
ガラパゴス島で、ピンタゾウガメの最後の生き残り「エンドリング」となった「ロンサム・ジョージ」。100年生きたとされている。(PHOTOGRAPH BY JAD DAVENPORT, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 「エンドリング」という言葉をご存じだろうか。主に人間の活動により絶滅の瀬戸際に追い詰められた動物種のうち、知られる限り最後の生き残りとなった個体のことだ。例えば、1914年に死んだリョコウバトの最後の1羽だった「マーサ」。2018年に死んだキタシロサイの最後のオスだった「スーダン」もあてはまる。エンドリングは、自身が気づいていようといまいと、たった1匹で絶滅の重荷を背負わなければならない。(参考記事:「キタシロサイのスーダンほか、ナショジオ過去10年のベスト写真15」) 「最後の生き残り」という表現に人々が惹きつけられるのは、これをテーマにした様々な創作物が数
米カリフォルニア州にあるマリブの丘陵地帯の山道を裸足で走る男性。裸足やミニマリストシューズは足を丈夫にし、バランスの向上や歩き方の改善にもよいという研究結果がある。ただし、裸足生活に変える際は、「けが予防のため、徐々に変えていくことが必要」と専門家は注意を呼びかける。(PHOTOGRAPH BY JOSH HUMBERT, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 「自然な足の動き方であれば、けがが減り、足がもっと強くなるのでは」という考え方は長年、ランニングやウオーキングをする人を魅了してきた。メキシコの裸足の長距離ランナーたちを描いた本『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”』が出版され(編注:米国で2009年5月、日本語翻訳版は2010年2月に発刊)、裸足で暮らすミニマリストのライフスタイルが世界的に大きな関心を呼んだとき、こ
オーストラリアに生息するキバハリアリの仲間Myrmecia midas。夜間に樹液などを集めるが、フェロモンを使わなくても巣に戻れる謎が最新の研究で明らかになった。(PHOTOGRAPH BY AJAY NARENDRA) オーストラリア、シドニーの郊外で日が沈むと、キバハリアリの仲間であるMyrmecia midasが巣から木に向かって行進する。木に到着したアリたちはほかの生きものを攻撃し、樹液などを集め、夜明け前にそれぞれが戦利品とともに巣に戻る。ほかの多くのアリと異なり、彼らは道しるべフェロモンのにおいを使わないようだ。 そこで興味深い疑問が生じる。夜行性のキバハリアリたちは暗闇でどのように帰り道を見つけるのだろう? 「ずっと謎でした」と語るオーストラリア、マッコーリー大学の神経動物行動学者コディー・フリース氏らの研究チームが、6月11日付けで学術誌「eLife」にその答えを発表した
スイス、ジュネーブの国際連合で働く中国語の通訳。英語話者にとって、中国語は最も習得が難しい言語の一つだ。スペイン語やフランス語は24〜30週間で習得できるのに対し、中国語は集中的に訓練しても88週間かかると言われている。(PHOTOGRAPH BY MARK HENLEY, PANOS PICTURES/REDUX) 新しい言語の習得は、特に大人にとって、気が遠くなるようなことに感じられるかもしれない。新しいスキルは、学び始めるのが早いほど習得しやすいというのが定説だ。年齢が言語を学ぶ能力に大きな影響を与えるという説は、かつて幼児期が第二言語の習得に最適な時期と考えられていた理由の一つだ。しかし、それが真実かどうかは、科学界で激しく議論されてきた。 こうした考え方は、残念なことに、年配者は新しい文法や構文、言葉の意味に素早く適応できないのではないかという疑問を固定化し、多くのポリグロット(
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