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中東情勢
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小曽根真のプロデュースで新鋭ピアニスト・壷阪健登がVerve/ユニバーサルミュージックからデビューした。J-POPにも関心がある人なら、石川紅奈との歌ものユニット「soraya」で彼を知っている人もいるかもしれないし、ジャズの動向を追っている人にとっては、2022年にドラマーの中村海斗が発表した『BLAQUE DAWN』で演奏しているピアニストといったほうが通じるかもしれない。 『BLAQUE DAWN』は大きなインパクトを放つアルバムだった。中村や当時まだ高校生だったサックス奏者の佐々木梨子と共にすさまじい演奏を聴かせていたのが壷阪だった。中村は「壷阪さんはどんな曲でも突き抜けていってくれるのが好きなんです。彼はフリーになれる部分としっかり弾く部分をコントロールできるんです」と語り、壷坂に絶大な信頼を置いていた。間違いなく壷阪は日本のジャズ・シーンにおける若手コミュニティのキーマンのひと
著者のイブラム・X・ケンディはクイーンズ・ジャマイカ地区出身のアフリカ系アメリカ人。現在はボストン大学アンチレイシスト・リサーチ・センター所長だそうです。いちど日本語で読んでしまえば難易度が下がるので原書でもちまちま読みましたよ。 中年ミュージシャンのNY通信。音楽メディアでは「黒いグルーヴ」みたいな表現が長らくクリシェ化してましたが、それってどうなの?というのが今回のお話。オスカー授賞式で浮上した差別疑惑の件も然り。筆者もいろいろ思うところがあるようで……。 コロナ禍2年目のこと、私は1冊の本、『アンチレイシストであるためには』と出会った。いまだに私は英語の本を読むのに日本語の100倍くらい時間がかかるし消耗するので、2020年にベストセラーになっているのは横目で眺めながら、翌21年に邦訳が出て、それでようやく読んだわけだ。 この本には、私がそれまで読んだ差別にまつわる書物とはっきり異な
RIZE:左からJESSE(Vo, Gt)、KenKen(Ba, Vo)、Rio(サポート・ギタリスト)、金子ノブアキ(Dr)(Photo by cherry chill will.) いよいよRIZEが再始動を果たす。『RIZE TOUR 2024“SOLU”』と銘打たれた全国7カ所を巡るツアーが、この6月から7月にかけて行なわれるのだ。ただ、通常こうしたニュースには大掛かりな活動計画や劇的な展開がつきものだが、このバンドの場合は相変わらず戦略めいたものとは無縁なままであるようだ。そんな彼らのリアルな現在を探ろうと、4月半ばの某日にインタビューに臨んだのだが、当日になってJESSE(Vo, Gt)が急用のため欠席となり、彼とは機会を改めて話をすることになった。この日、取材現場に現れたのは金子ノブアキ(Dr)、KenKen(Ba, Vo)、そしてサポート・ギタリストのRioだった。各々が多
インディロックが瀕死の状態にあった2010年代イギリスにおいて、ファット・ホワイト・ファミリーが幾多の若者たちを触発し、サウスロンドンのバンドシーンの発火点となったのは今や誰もが認める事実だろう。シェイムやゴート・ガールやブラック・ミディはもちろんのこと、ラスト・ディナー・パーティでさえ、彼らがいなければ存在しなかったかもしれない。現在の英国インディの活況を用意したすべての始まり、それがファット・ホワイト・ファミリーである。 2010年代前半に登場したファット・ホワイト・ファミリーとは、様式化され、産業に飲み込まれたゼロ年代英国インディに対する反動だった。少なくとも、彼らの生々しくヒリついた演奏とカオティックなライブパフォーマンスはそのように人々から受け取られた。今やサウスロンドンのバンドシーンも成熟し、ある程度の様式化(スポークンワードとポストパンクを掛け合わせた音楽性など)が進んでいる
tofubeatsの最新EP『NOBODY』がリリースされた。同作は「フロアライクなハウスミュージック」をコンセプトに、全曲AI歌声合成ソフトのSynthesizer Vを使用したボーカルで制作されたことでも話題を集めている。そんなtofubeatsが、若林恵(黒鳥社)のオフィスを訪問。2017年のアルバム『FANTASY CLUB』にライナーノーツを寄稿するなど、かねてより交流の深い同氏とさまざまなトピックを巡って語り合った。(構成:神保勇揮・若林恵) 若林 恵 平凡社『月刊太陽』編集部を経て2000年にフリー編集者として独立。以後、雑誌、書籍、展覧会の図録などの編集を多数手がける。音楽ジャーナリストとしても活動。2012年に『WIRED』日本版編集長就任、2017年退任。2018年、黒鳥社設立。著書『週刊だえん問答 コロナの迷宮』(黒鳥社)、『さよなら未来:エディターズ・クロニクル 2
レコーディング・エンジニア/プロデューサーとしても著名な音楽家、スティーヴ・アルビニ(Steve Albini)が死去。彼が経営するエレクトリカル・オーディオ・レコーディングのスタッフに米ローリング・ストーン誌が確認したところ、5月7日の夜に心臓発作で亡くなったという。享年61。 アルビニは1962年7月22日、米カリフォルニア州パサデナ生まれ。ビッグ・ブラックやシェラックといった自身のバンドを率いつつ、ニルヴァーナ『In Utero』、ピクシーズ『Surfer Rosa』、PJハーヴェイ『Rid of Me』など80年代後期以降のオルタナティヴ・ロック重要作に多く貢献。アナログの一発録りスタイルで知られ、多くのミュージシャンから愛されてきた。ZENI GEVA、メルト・バナナ、54-71、BORIS、MONO、GEZAN、CRYAMYなど日本のミュージシャンの作品にも携わっている。近年は
カマシ・ワシントンの最新アルバム『Fearless Movement』は、これまでの延長線上にありつつ、明らかに趣が異なる作品でもある。愛する娘が生まれ、彼女と暮らす中で感じたことがインスピレーションになっていたり、概念としての「ダンスミュージック」をテーマにしていたりするのもそうだし、過去の作品にあったスケールの大きさやフィクション的な世界観とは違い、現実(≒生活)に根を下ろした視点から生まれた等身大で身近に感じられるサウンドになったようにも感じられる。 たとえば、これまでは壮大な世界観をクワイアやオーケストラと共に表現していたが、今回はほぼ自身のレギュラー・バンドで構成しており、外から加わっているのはほとんどがボーカリストやラッパーだ(カマシはこれまで、声にまつわる表現はバンドメンバーのパトリス・クィンに任せていた)。ここでは様々な声がそれぞれのメッセージを語っているのだが、その言葉か
シャバカ・ハッチングスはUK屈指のサックス奏者として、サンズ・オブ・ケメット、コメット・イズ・カミング、シャバカ&ジ・アンセスターズといったプロジェクトで高い評価を得てきた。アメリカ由来のジャズだけでなく、彼のルーツでもあるバルバドスを含むカリブ海の島々の音楽をはじめ、アフロビート、ジャングルやグライムなどが溶け込んだシャバカの音楽は、近年のUKのジャズにおける最良の教科書のようでもあった。だからこそ彼はロンドンのシーンで「キング」と呼ばれていた。 そんなシャバカがサンズ・オブ・ケメットの2021年作『Black To The Future』あたりからバンブーフルートを演奏し始めるようになると、そこに尺八やインディアンフルートも加わり、サックスを手にする機会が減っていった。誰もが不思議がっていたころ、シャバカは前述の3つのグループの活動を休止すること、サックス奏者としての活動を停止し、フル
音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。 2024年3月の特集は、「大滝詠一」。アルバム『EACH TIME』40周年。1984年3月21日に発売されたオリジナルの40周年バージョンが3月21日に発売される。同作と既に発売になっている『大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK / NIAGARA ONDO BOOK』の2作を1カ月に渡り掘り下げていく。 田家:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター・田家秀樹です。今流れているのは大滝詠一さんのアルバ
音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。 2024年3月の特集は、「大滝詠一」。アルバム『EACH TIME』40周年。1984年3月21日に発売されたオリジナルの40周年バージョンが3月21日に発売される。同作と既に発売になっている『大滝詠一 NOVELTY SONG BOOK / NIAGARA ONDO BOOK』の2作を1カ月に渡り掘り下げていく。 田家:こんばんは。FM COCOLO 「J-POP LEGEND CAFE」マスター・田家秀樹です。今流れているのは大滝詠一さんのアル
米ヴァージニア州リッチモンドを拠点とする、ブッチャー・ブラウン(Butcher Brown)という5人組がいる。ヒップホップ/ネオソウル以降のジャズ系バンドである彼らは、サウンドの質感への徹底的なこだわりに加えて、そのインスピレーション源やカバー曲の選曲センスも高く評価されてきた。 アナログ機材やテープでの録音は当たり前。まるでマッドリブがバンドを結成したかのように敢えて音質を落としたり、ノイズ交じりで録音したり、ジャズ系のバンドはまずやらない手法を駆使している。そのこだわりからレコードだけでなく、カセットテープでのリリースをずいぶん前から行なっていた。 さらに彼らは、トム・ブラウン「Funkin' For Jamaica」、デヴィッド・アクセルロッド「Holy Thursday 」、ボブ・ジェイムス「Nautilus」、ワンネス・オブ・ジュジュ「African Rhythms」、タリカ・
ニューアルバム『Visions』のリリースから1カ月が経過したタイミングで、ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)がZoomでインタビューに応じてくれた。 自分が聞きたかったのは、大きくふたつ。彼女はどういったサウンドを求めてヴィンテージソウル・リヴァイヴァルのキーパーソンとも言えるマルチプレイヤー/プロデューサー/エンジニアのリオン・マイケルズと再び組んだのか。それから、アルバムが久しぶりに明るさやあたたかさを感じさせるものになったことに理由はあるのか。「考えてない」「意識していなかった」という答えも多いのだけど、分析めいたことに関心がないのはいつものこと。彼女なりの考えと正直さがよく見えてくるインタビューになったんじゃないかと思う。 リオン・マイケルズとの共同作業 ―ニューアルバム『Visions』を聴き、“あなたらしさ”と“新しさ”の塩梅が絶妙なアルバムだなと感じました。“らしさ
プーマ・ブルー(Puma Blue)は突然現れた。2017年ごろに『Swum Baby EP』が静かに話題になっていったが、実に独特で、不思議な音楽だった。おぼろげに浮かんでいるようなサウンドに、ささやくように歌う声、全ての音は今にも消え入りそうに揺らめいている。その音楽は暗くて、退廃的。でも、セクシーであり、とてつもなくエモーショナルだった。DIYなやり方で制作しているのは明らかで、理想的なインディペンデント音楽であるように思えた。 しかし、同時に彼のバンドにはUKのジャズトリオVels Trioのメンバーも在籍していたこともあり、どこかパンク的なマインドさえも感じられる衝動的なサウンドであるにもかかわらず、演奏面では洗練されている部分も感じられた。実はブリット・スクールで音楽を学んでいたという話もある。粗削りであり、洗練されてもいる。エモーショナルだが、その音楽は全てがコントロールされ
通算5作目のニューアルバム『Only God Was Above Us』をリリースした、ヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)のインタビューが実現。バンドの中心人物、エズラ・クーニグが制作背景を大いに語ってくれた。 ヴァンパイア・ウィークエンドの5年ぶりのアルバムとなる『Only God Was Above Us』は、極めて自己言及的な作品だ。エズラ曰く“サイケデリックなガーシュイン”だという「Connect」ではデビュー・シングルだった「Mansard Roof」のドラム・リフが引用され、アブストラクト・ビートの始祖デヴィッド・アクセルロッドを意識したという「The Surfer」では、脱退した元メンバーのロスタム・バトマングリと共作した過去の楽曲を発展させている。オープニングを飾る「Ice Cream Piano Piano」では、エズラ・クーニグの祖母が吸血鬼
1977年にシックの一員としてデビュー、特徴的なリズムギターがヒップホップを含むその後のダンスミュージックに絶大な影響を及ぼしたナイル・ロジャース(Nile Rodgers)。ギタリストとしてのみならず、裏方としてもダイアナ・ロスやデヴィッド・ボウイ、デュラン・デュラン、マドンナなどを次々に手がけてヒットを連発した、文字通りのスーパープロデューサーだ。癌の手術で活動が停滞した時期はあったが、病を見事に克服し、ダフト・パンクの「Get Lucky」(2013年)に起用されて以降は新しいファンも獲得。現役で精力的に活動を続けている。 そのナイルのトレードマークと言えば、Hitmakerの愛称で知られるストラトキャスター(以下、ストラトキャスター)。1973年にマイアミで購入したというこのハードテイルブリッジ仕様のモデルを、ナイル自身が協力して再現したシグネチャーモデルが初めて発売されることにな
独特のユーモアセンス、共感を呼ぶ歌詞、カテゴライズ困難なサウンドで多くのファンを魅了してきたフェイ・ウェブスター(Faye Webster)。目下の課題は、これまでとは比較にならないプレッシャーや不安への対処だ。さる3月にニューアルバム『Underdressed at the Symphony』を発表。ローリングストーンUS版の「Future 25」にも選出された彼女の最新インタビュー。 フェイ・ウェブスターはテニスが上手い。どしゃ降りの1月下旬の午後、私たちはロサンゼルスのAltadena Town & Country Clubで極めてユルい試合をしている。かなりの腕前である彼女とは対照的に、筆者はラケットを握ること自体が生まれて初めてだ。にもかかわらず、情けないほど下手な筆者のラケットが雨でぐっしょりになったボールに当たるたびに(滅多になかったが)、ウェブスターはコートのネットの向こう
はちみつぱいやムーンライダーズの中心メンバーとして、日本のロックの黎明期から最前線で活動してきた鈴木慶一。その他にも、高橋幸宏とのTHE BEATNIKS、PANTAとのP.K.O、KERAとのNo Lie-Senseなど、様々なユニットやバンドでも作品を発表。近年では映画音楽の作曲家として国際的に活躍してきた。音楽評論家の宗像明将が、その膨大な仕事の全貌を捉えた『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』が刊行された。鈴木慶一自身の言葉で人生を振り返った本書からは、日本のロックの歴史も浮かび上がってくる。どんな風に鈴木慶一は音楽と向き合ってきたのか。本の内容に触れながら話を聞いた。 『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』宗像明将・著 株式会社blueprint・刊 生い立ちと音楽の目覚め ー『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』によると、慶一さんは大家族のなかで育ったそうですね。社長をし
2022年春に1stアルバム『Growing Up』を発表し、SUMMER SONIC 2022で初来日を果たして以降もリンダ・リンダズ(The Linda Lindas)は(学業にも追われながら)精力的に活動を続けてきた。 まずは2022年末にクリスマス・ソングの「Groovy Xmas」をリリース。2023年は「Too Many Things」「Resolution/Revolution」と2つの新曲をリリースしつつ、レイ・チャールズのバージョンが有名な「Drown In My Own Tears」や、ミュージック・エクスプロージョンのバージョンが有名な「Little Bit 'O Soul」といった気の利いたカバー曲もリリース。ゴーゴーズの「Our Lips Are Sealed」とバングルスの「Manic Monday」のコピーから始まったというリンダ・リンダズのカバー・バンドとし
南アフリカ・ヨハネスブルグ出身、昨年発表の「Water」が全世界のチャートを席巻し、2024年の第66回グラミー賞で最優秀アフリカン・ミュージック・パフォーマンス賞を受賞。今夏のサマーソニック出演も決定しているタイラ(Tyla)がデビューアルバム『TYLA』をリリース。南アフリカ発祥のダンスミュージック「アマピアノ」をみずから制作し、その魅力を発信しているプロデューサー/DJ/ライターのaudiot909に本作の革新性を解説してもらった。 まさかここまでとは思わなかった。 2023年のタイラによる大ヒット曲「Water」は、アマピアノ、アフロビーツ、R&B、ヒップホップといったジャンルの垣根を越えた新時代のポップスであった。 しかし、アルバムはその音楽的挑戦をさらに昇華し、多様な要素を融合させたアフリカンミュージックの地平を広げる傑作となった。 本稿ではタイラがデビューアルバムで示した音楽
今年1月に活動終了を発表したCHAIのラストライブとなった、全国ツアー「CHAI JAPAN TOUR 2024『We The CHAI Tour!』」のファイナル公演が3月12日に六本木EX THEATER ROPPONGIにて開催された(当日の模様とドキュメンタリー映像を収録した映像商品『We The CHAI Tour! FINAL ~NEO KAWAII IS FOREVER♡~』が7月3日にリリースされる)。デビュー当初から4人を取材してきた音楽ライター/編集者・矢島由佳子は、最後の勇姿をどのように受け止めたのか。 【写真ギャラリー】CHAIライブ写真(全25点) 3月12日をもって、“ニュー・エキサイト・オンナバンド”CHAIが解散した。 解散について、CHAIは次のように発表した――「このたびCHAIは次のツアーを最後に「NEOかわいいをフォーエバー」(=かいさん)することに
ジュリアン・ラージ(Julian Lage)はギターの化身みたいな存在だ。ペダルを使わずに、指先のコントロールだけでカラフルな音色を奏でてしまう驚異的なテクニックで世界を驚かせてきた。そのうえでジャズやブルース、ブルーグラスやカントリーをはじめとする幅広いギター音楽について熟知していて、それらを巧みに織り交ぜながら、独自の音楽を奏でている。ここまでギターに深く向き合っているギタリストもなかなかいないだろう。 だからこそ、ジュリアンは自身のギターを中心にした編成で音楽を奏で、それを録音してきた。ベースとドラムを交えたトリオでの録音が多いが、ギタリストとのデュオやソロギターのアルバムも発表している。これまでに自身の名義で録音した14作のアルバムとEP の多くはギターが軸の小編成だった。例外は2009年のデビュー作『Sounding Point』と2011年の2作目『Gladwell』。今、改め
キム・ゴードン(Kim Gordon)はまだノイズを出し終えていない。挑戦的なソロ2作目『The Collective』を3月8日にリリースし、フジロック出演も決定している元ソニック・ユースのメンバーが、最新アルバムや過去にまつわる話、時事的なトピックなどへの見解を率直に語った。本記事の翻訳は、回顧録『GIRL IN A BAND キム・ゴードン自伝』(DU BOOKS刊・2015年)の訳者・野中モモ。 キム・ゴードンはソニック・ユースでの30年に及ぶ活動で、ロックの可能性を広げるのに貢献した。たとえばその不安を掻き立てる声と地下鉄が響かせる重低音の如きベース演奏から、自身のフェミニズムとアートスクール教育のバックグラウンドをバンドの歌詞と精神に組み込む手法に至るまで。現在、ソニック・ユース解散後2枚目のソロアルバム『The Collective』を引っ提げてのツアーを準備中のゴードンは、
キーファー(Kiefer)が6月4日(火)に大阪、6月5日(水)に東京のビルボードライブで来日公演を行なう。アンダーソン・パークやドレイク、ケイトラナダの作品に貢献し、WONKとのコラボ曲「Fleeting Fantasy」でも話題を呼んだLAシーンの重要人物に柳樂光隆がインタビュー。 キーファーを初めて生で観たのは2017年のビルボードライブ東京で、彼はテラス・マーティンが率いるバンドの一員としてピアノを弾いていた。そのときのキーファーはどこからどう見てもジャズミュージシャンだったが、一般的にはビートメイカー/プロデューサーとしてのイメージのほうが強いだろう。今ではそのふたつの側面を両立させているアーティストも少なくないが、ここまでスムースな融合を実践しているアーティストはなかなかいない。そんな彼が、Stones Throwに所属しているのは非常にしっくりくるものがある。 別の言い方をす
ディープ・フォレスト(Deep Forest)がビルボードライブ東京に初登場。活動30周年記念の特別公演「BURNING TOUR 2024 – 30th Anniversary」が4月8日(月)・9日(火)に開催される。世界各地の民族音楽とダンス・ビートを掛け合わせ、日本でも90年代に一世を風靡したフランス発エレクトロ・グループを今こそ再発見すべき理由とは? 音楽評論家の柴崎祐二に解説してもらった。 ※追記:ディープ・フォレスト来日公演のチケットプレゼントを実施中、詳細は記事末尾にて。 今から約4年前の2020年6月、過去に発表された重要アルバムを徹底解説する米音楽メディア・Pitchforkの名物企画「Sunday Review」で、とあるコンピレーション・アルバムが紹介された。1994年、『Pure Moods』というタイトルの元、Virginからリリースされたそのアルバムは、ヒーリ
スクエアプッシャー(Squarepusher)が最新アルバム『Dostrotime』を3月1日(金)に世界同時リリースする。電子音楽/IDMシーンの先鋭に立ち続ける鬼才の歩みと最新モードを、和田信一郎(s.h.i.)に解説してもらった。 スクエアプッシャーの最新アルバム『Dostrotime』はサブスク配信されない。トム・ジェンキンソン自身の言によれば、その理由は以下のようなものである。 ◎時間とお金をかけてレコードを手に入れることで、その内容への関心が増すのではないか。 ◎比例モデルで収入を計算するストリーミングサービスでは、あるアーティストの収入が他のアーティストの収入に影響されるので、リスナーの注目を集めるための気の滅入る競争にさらに邪悪な側面が加わる。 ◎エクスペリメンタルな音楽は、人々に似たような音楽を聴くよう促すストリーミングのフォーマットと相性が悪い。 ◎キャリアを継続するた
スウィング・アウト・シスター(Swing Out Sister:以下、SOS)ほど、聴く人のタイプによってイメージが異なるグループも珍しい。80年代にUKチャートの最新ヒット曲を追っていた筆者にとって、彼らは “元ア・サートゥン・レイシオのキーボード奏者と元マガジンのドラマーが組み、ワーキング・ウィークのライブで歌っていた女性シンガーを迎えたグループ” であり、ポストパンクのジャンル混交の流れから出てきたユニットとして聴いていた。 1986年にリリースされて全英4位まで上昇した2枚目のシングル「Breakout」が、翌年に世界規模のビッグヒット(全米6位)になってからは、彼らの出自はあまり触れられなくなり、スタイリッシュなポップアイコンとして俄然人気を集めていく。待望の1stアルバム『It's Better To Travel』(87年)は打ち込みを併用したエレクトロ・ポップを主体としなが
2010年代は日本のヒップホップのスタイルが大きく変わった時代だ。USからのトラップの影響もあって音もラップも変わったし、YouTubeとともにMVでバズるという現象も生まれた。KOHHと髙橋良は、それまでのヒップホップをリブランディングして、新しいスタイルを作っただけではなく、映像で見せ、アート、ハイエンド志向を進め、海外にも目を向けたという活動のあり方自体も新しかったのだ。 ー高橋さんはNYに行って、そこでNYのやり方を見て、ただのビートメイカーではなく、プロデューサーとしての意識を持つようになったと言っていましたよね。SIMONの1stアルバム『SIMON SAYS』を出した2008年にはすでにそのような意識でやられていましたか? 高橋良(以下、高橋):そうですね。NYに行ってみて、トラックメイカーとプロデューサーという職業の何が違うのかがわかりました。トラックメイカーは文字通りトラ
3月13日にリリースされるAJICOのニューEP『ラヴの元型』レコーデイング終了直後にインタビューを実施。UAと浅井健一が伝説的バンドの「今」を大いに語る。最新作の完成形を想像しながら読んでみてほしい。 UA(Vo)、浅井健一(Gt、Vo)、TOKIE(Ba)、椎野恭一(Dr)。この4人で2000年に結成され、約1年間を駆け抜けて活動を止めたAJICOは、鍵盤とサウンド・プロデュースに鈴木正人を加えて2021年に再始動。EP『接続』のリリースと「Tour 接続」、それにフジロックなどのフェス出演で、時を超えて鮮やかに再生したことを印象付けた。コロナ禍真っ只中という厳しい時期ではあったが、メンバー全員がAJICOをより良いバンドにすべく結束し、その唯一無二のライブのありようからは彼らがさらに“この先”を見据えているようにも感じられたものだった。 そして「Tour 接続」のファイナルから2年と
クイーン+アダム・ランバートによる「The Rhapsody Tour」の一環として開催された、日本公演史上最大級となる4都市5公演のドームツアーが大盛況のうちに閉幕。荒野政寿(シンコーミュージック)による、最終日の2月14日・東京ドーム公演の本誌独自ライブレポートをお届けする。(※ライブ写真は2月13日撮影) SF的オープニングに見る「新たな解釈」 1992年4月20日、ウェンブリー・スタジアムで開催されたフレディ・マーキュリー追悼コンサートの映像は壮観の一語だった。クイーンの残された3人──ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコンをバックに、ロバート・プラント、ロジャー・ダルトリー、エルトン・ジョン、イアン・ハンターといった先輩たちから、ジェームス・ヘットフィールド、アクセル・ローズらクイーンの子供たち、そしてライザ・ミネリまでもがリード・ボーカルを務めた夢の一夜。中で
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