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■風呂場で頭を洗っているときに、誰かがいるような気がして不安になる。(p68) ■離れたところから自分の姿を傍観していた。(p40) ■現実との区別がつかないほどリアルな夢を見る。(p63) ■親しく会話できる想像上の友人がいる。(p128) ■「自分がここにいる」という実感がない。(p31) こうした話を聞くと、オカルトチックに感じる人がいます。一般に幽霊とか、体外離脱といった、オカルトな体験と関連付けられやすい出来事です。 しかし、医学の世界では、これらの原因が、「解離」という脳の働きにあることが明らかになっています。特に珍しい体験でもなく、精神科の医師は、繰り返しこれらの問題を見聞きし、治療にあたっているといいます。そして、健康な人でも、程度の差こそあれ「解離」を経験しているものです。 「解離」が興味深いのは、単に病気と関連しているだけでなく、芸術家の創造力と関係していると考えられる
トラウマ研究の第一人者であるベッセル・ヴァン・デア・コークは、このブログで頻繁に引用している身体はトラウマを記録するーー脳・心・体のつながりと回復のための手法の中で、ある本のことを「私にとって最も重要な本」と呼んで紹介しています。 ダマシオは一連の見事な科学論文や書物の中で、体の状態と情動と生存との間の関係を明らかにした。 神経科医として、さまざまな種類の脳の損傷を負った患者を何百人と治療してきたダマシオは、意識や、自分が何を感じているかを知るのに必要な脳領域の確認に強い関心を抱くようになった。 彼は、私たちの「自己」の経験を司るものを精密に記すことに自分の職業人生を捧げた。 彼の著書のうち、『無意識の脳 自己意識の脳ー身体と情動と感情の神秘』は私にとって最も重要な本で、それを読んだときには目を開かれる思いだった。(p155) アイオワ大学メディカル・センター神経学部のアントニオ・R・ダマ
線維筋痛症に極度の明るさ過敏「眼球使用困難症候群」が伴いやすいという記事をきっかけに、さまざまなタイプの感覚過敏の原因とメカニズムを考察してみました。 、 その一方で、冒頭で引用した身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケアのエピソードは、感覚過敏とは正反対の深刻な問題があることを物語っています。 それは、感覚鈍麻。感覚が鋭敏すぎるのではなく、逆に切り離されてしまい、何も感じられなくなってしまった人たちです。 感覚が過敏すぎて痛みにさらされるより、感覚が鈍麻して何も感じられなくなってしまうほうがまだ楽ではないか。そう考える人が多いとしたら、感覚過敏に比べて、感覚鈍麻の本質がほとんど知られていないせいでしょう。 冒頭のエピソードにあったように、感覚の鈍麻や麻痺とは、言い換えれば「生ける屍」(しかばね)になることを意味しています。 大怪我で左足の
これはどんな本? 今回参考にした本は多数ありますが、おもに以下の三冊を中心としています。 身体はトラウマを記録するーー脳・心・体のつながりと回復のための手法は、現代のトラウマ研究の第一人者ともいえる、ベッセル・ヴァン・デア・コークによる、非常に評価の高い一冊です。 とくに子ども時代に経験したトラウマは、従来のPTSDとはまったく異なる「発達性トラウマ障害」(DTD)という複雑な身体的・精神的な症状を引き起こし、治療するには身体的な経験が必要である、ということが様々な角度から書かれています。 ヴァン・デア・コークは、この本の中で、特に身体に働きかける2つの治療法に言及しています。 私の友人であり師であるパット・オグデンとピーター・リヴァインは、この問題に対処するために体に働きかける強力なセラピーをそれぞれ開発した。 感覚運動心理療法(センサリーモーター・サイコセラピー)と、ソマティック・エク
現代のトラウマ研究の第一人者である、ベッセル・ヴァン・デア・コークが、身体はトラウマを記録するーー脳・心・体のつながりと回復のための手法の中で書いている次の説明は、いささか衝撃的かもしれません。 セラピストは、話すことにはトラウマを解決する力があると考え、その力に絶対的な信頼を置いている。…残念ながら、事はそれほど単純ではない。(p379) 私たちの研究における最も重要な発見は、次の事実かもしれない。 1893年のブロイアーとフロイトの主張とは裏腹に、トラウマを、それと結びついた感情のいっさいとともに思い出しても、必ずしもトラウマは解消しないのだ。 私たちの研究は、言語が行動の代わりになりうるという考え方を支持しなかった。(p321) ハーバード大学のジョン・レイティは、GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネスの中で、ヴァン・デア・コー
フェリッティとアンダは、各個人のACE項目の数と成人後の病気や身体の不調に相関関係があるかどうかを調べた。その結果、両者は密接に関わっていることが判明し、アンダは「驚いた」だけでなく胸が締めつけられた。 「思わず泣いた」とアンダは語る。「どれだけ多くの人が苦しんできたかということを知って、涙が出た」。(p36) 医師ヴィンセント・J・フェリッティと疫学研究者ロバート・アンダは、自分たちが実施したACE研究(Adverse Childhood Experiences : 逆境的小児期体験)の結果を目にしたとき言い知れぬ衝撃に打たれました。 17421人もの人を対象に行われた、このかつてない大規模で画期的な研究は、それまで見逃されていた一つの事実を、疑問の余地なく明らかにしていました。 心疾患、肺疾患、肥満、がん、脳卒中、さらには原因不明とされる自己免疫疾患や、線維筋痛症のような慢性疼痛、慢性
本書で述べてきたように、「狂っている」または制御不能と思われる反応には理由がある。 問題の根本的原因、あるいは健全で満足度の人生を送ることができるかどうかを決めるのは、無意識の記憶の結び付きである。(p246) 昨年、EMDRの開発者フランシーン・シャピロによる過去をきちんと過去にする:EMDRのテクニックでトラウマから自由になる方法が翻訳されていたので読んでみることにしました。 目を左右交互に動かしながらトラウマ記憶を処理する、この不思議な治療法は、近年NHKの番組で取り上げられたこともあり、日本での知名度も上がってきました。 催眠術をイメージさせる独特な治療手法から、懐疑的な目を向けられていた時期もありましたが、現在では、記憶のメカニズムにのっとる科学的な治療法として研究が進んでいます。 この記事では、この本に推薦の辞を寄せているベッセル・ヴァン・デア・コークの 身体はトラウマを記録
これまでわたしは、睡眠の本をたくさん読んできました。まがりなりにも、このブログのテーマのひとつは睡眠であり、わたしは概日リズム睡眠障害の当事者です。わたしの主治医は睡眠専門医です。 さまざまな睡眠の医学に触れてきて、愚かにも、眠りとは何か、睡眠とは何なのか、「だいたいわかっている」気になってしまっていました。 ところが、失われた夜の歴史という本に触れたことで、これまでの睡眠の常識をいちから構築し直さなければならない、と感じるほどの衝撃を受けました。中でもわたしの曇った常識のメガネを叩き割ってくれたのは、この部分でした。 さてそうなると、根本的な疑問が残る。この興味をそそる変則的な睡眠の取り方をどう説明すればよいのか。 というよりもむしろほんとうの謎と言うべきは、現在の私たちが中断のない睡眠を取っていることであり、それはどうすれば説明がつくのだろうか。 分割型の睡眠パターンは多くの野生動物に
これらの症状は、分断され散り散りになった体験の塊なのだ。 それは未完了の身体感覚であり、過去にはその人を圧倒した。 あたかも、惨殺され、切り裂かれたオシリスの身体が、はるかに離れた違なる場所に埋められたように、これらはかい離し、意味不明の状態にある。(p235) 身体の全体に散らばった「意味不明な状態にある」さまざまな症状や身体感覚。この生々しいオシリス王の伝説のような、奇妙な身体症状に心当たりがありますか? 全身に散らばる、説明不能で、原因もわからない多種多様な症状を抱える人は、現代の医療では説明がつかないために、医者から詐病のようにみなされたり、思い込みや気のせいだと門前払いされたりすることがよくあります。 たとえばそのような病気には、慢性疲労症候群や線維筋痛症、化学物質過敏症などが含まれるでしょう。 そうした意味不明の症状は、過去の体験の「痕跡」であり、最新の記憶の科学に基づいて説明
アスペルガーは、自分の診ていた人間の創造力が数十年先の科学の発展を先どりしていることに思い至った、おそらく最初の臨床医だったのだろう。 彼らの関心が現実の世界から「かけ離れている」わけではないことにも、すでに気がついていた。(p269) あなたは「アスペルガー」について知っていますか? そう尋ねると、「聞いたことがある」とか、「わたしも当事者です」と答える方がいるかもしれません。 でも、冒頭に引用した文からわかるように、ここでいう「アスペルガー」とは、医学用語としての「アスペルガー症候群」のことではなく、その名称の由来となった人名、医師ハンス・アスペルガーのことです。 アスペルガー症候群のことはよく知っていても、その由来となったハンス・アスペルガーについは、ほとんど何も知らない、という方も多いのではないでしょうか。 わたしもこれまで、ハンス・アスペルガーの人となりや、彼が研究した事柄につい
弱い光の下でも眼痛、頭痛をはじめ全身の症状が出現するので、二重にサングラスを装用し、帽子を深くかぶり、中には、光を通しにくい布地を顔に何重にも巻いたり、袋を 被 ったりと完全防御の状態でしか通院できない症例もあります。 こうした重度の症例は、私の外来には少なくとも10例は存在し、こうした病態は決して珍しいことではないことがわかったのです。 その原因はさまざまでも、この状態を「眼球使用困難症」と呼びたいと考えています。 おそらく、大半の症例は、無理やり測れば視力などは正常に記録されるでしょうが、日常生活の上では目を当たり前に使用することは困難ですから、明確な視覚障害者です。 これは、今年2月9日付でヨミドクターに載せられた、井上眼科医院の若倉雅登先生による記事目がいいのに使えない「眼球使用困難症」の方、患者友の会に集合を! : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞) からの引用です。
「物事はポジティブに考えたほうがよい」。 読者の中にはそう思っている人が多いのではないだろうか。心理学の分野でも、「ポジティブ思考が美徳である」というのがこれまでの支配的な考え方であった。(p29) 近年、悲観主義者のなかにも、物事をネガティブに考えることで成功している適応的な悲観主義者(これを防衛的悲観主義者という)がいることがわかっている。 防衛的悲観主義とは、前にうまくいっているにもかかわらず、これから迎える状況に対して、最悪の事態を予想する認知的方略のことである。(p30) 近年、何事もポジティブに考えればうまくいく、というアドバイスがよくみられます。いえ、近年というより、これは古くからさまざまな文化に根付いてきたおまじないのようなものかもしれません。 確かに、いつも前向き、積極的で、期待に満ちている人は生き生きとして見えます。時流に乗った有名人や起業家がポジティブな発言を繰り返し
あなたは、他の人が気に留めない耳障りな音が聞こえて悩まされることがありますか? ここでいう耳障りな音とは、耳鳴りのことではありません。耳鳴りを抱える人も持続的な音に悩まされますが、それとは別に、大半の人が気に留めない高周波音が聞こえてしまう人がいます。 この現象は、モスキート音としても知られていますし、電化製品の場合は、一種のコイル鳴きとみなせるかもしれません。 大半の人は大人になるにつれ、高周波音は聞こえにくくなりますが、中には、子どものころからずっと、高周波音が聴こえ続け、耳障りに感じたり、うっとうしく思ったり、あるいはあまりにずっと聴こえるせいで慣れきってしまう人もいます。 わたしの身の回りにも そんな人がちらほらといて、どういうことなのか疑問に思っていたのですが、最近読んだ脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線という本に興味深いことが書かれていました。 それによると、高
自閉スペクトラム症(ASD)に関する研究で、表情模倣が乏しい、方言を話さないなどの、社会性に関わる特徴の傾向が見られることがニュースになっていました。 京都大学の研究グループは、2015年4月に、「自閉症スペクトラム障害で目に見える表情模倣の障害」があるという研究成果を発表していました 自閉症スペクトラム障害で目に見える表情模倣の障害 — 京都大学 自閉症スペクトラム障害者は表情模倣が少ない―社会性の障害の強さと関連 | サイエンス - 財経新聞 自閉症スペクトラム障害、目に見えるレベルでの表情模倣の頻度が低下-京大 - QLifePro 医療ニュース 表情模倣とは、会話などのコミュニケーションをしているときに、自然に相手の顔の表情をまねることです。 定型発達者の表情模倣には、相手の印象がよくなったり、自分が相手を理解しやすくなったり、といった働きがあるそうです。 研究では、ASD15人、
「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよねぇ)」 妻のこの一言で始まった研究は思わぬ展開を示すこととなりました。 …調査をすればするほど湧いてくる課題、考えれば考えるほど解けない疑問と向き合った結果、方言というローカリティそのものと考えていた問題が、私たちをASDのことばの謎へと誘っていきました。(p246-247) 自閉スペクトラム症(ASD)の人たちは方言を話さない? 弘前大学の松本敏治先生のこの不思議な研究について知ったのは、2015年のニュース報道でした。 本当だろうかと怪訝に思いつつも、身の回りのアスペルガーの人たちを思い浮かべると、たしかにあまり方言を使わないことに気づきました。 それ以来、この不思議な研究のことはずっと頭の片隅に残っていたのですが、なんと今年になって、一冊の本自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解くにまとめて出版されたの
前々から気になっていて、このブログでも何度か取り上げている問題に、発達障害と慢性疲労症候群は関係があるのか。というものがあります。 この場合の発達障害というのは、主に、高機能なタイプの自閉症スペクトラム症(たとえばアスペルガー)と、注意欠如多動症(AD/HD)です。また慢性疲労症候群というのは、生涯のある時点から突然現れる著しい疲労のことで、物心ついたときから続く疲労感は除外されます。 最初に結論を言ってしまえば、両者の関係性を指摘するような情報はごくわずかであり、一見関係なさそうです。少なくとも、大半の慢性疲労症候群と、自閉症スペクトラムは特に関係していないように思います。 発達障害側の研究を見ても、かなりいろいろ本を読みましたが、それらしい話は出てきません。まだ研究が進んでいないという見方もできますが、少なくとも現時点では関係がないようだと言わざるを得ません。 しかし、子どもの慢性疲労
夢の中に自分がいる。私はこの夢の世界にいるが、夢の中にいることに気づいていない。 次の段階にいくと、「これは夢か」みたいな感じで、その夢の外側に自分がいる。その夢に登場していながら、これは夢かなと思っている。 …さらにうしろに引いていくと、夢を見ていると思っていない最初の夢の中の私と夢を見ているとわかっている私の次に「夢の中で夢を見ているな」と感じている私が現れる。(p159) これは、解離の専門家、柴山雅俊先生の、解離の構造―私の変容と“むすび”の治療論という本に載せられている、ある解離性障害の女性が語った、子ども時代からの夢体験です。 解離しやすい人は、このような謎めいた独特な夢を頻繁に見るといいます。もちろんオカルトなどとは関係のない医学的な現象です。 じつは今朝、夢の中で夢を見ている自分が夢を見ている夢というややこしい夢を見て、「ああ、こういう夢はときどき見るなぁ」と感じました。そ
Q1 解離とは何なのか? A.解離とは感覚遮断です 解離は、感覚刺激が強すぎて処理できないときに自動的に生じる感覚遮断(感覚の切り離し)です。脳に備わる「防衛機制」と呼ばれる保護システムの一つです。 いわば脳に備わるブレーカーのようなもので、過剰な刺激に圧倒されないようシャットダウンをかけることで脳を保護します。 脳は奇跡を起こす 人には防衛機制が備わっている。耐えがたいほどの辛い考えや感情、思い出を、意識から隠してしまう反応パターンだ。 防衛機制のひとつに、解離がある。自分にとって危険な考えや感情を、ほかの精神から切り離すことで防衛するのだ。(p275) トラウマをヨーガで克服する 過覚醒は、〈耐性の窓〉を超えた強烈な感情的経験であり、麻痺と解離は〈耐性の窓〉を超えた、感情的経験の遮断である。(P147) 身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウ
HSCにさまざまなタイプがある第2の理由は、脳内の「行動抑制システム」にヒントがあります。 このシステムは、どの人の脳にもありますが、人一倍敏感な人の場合、特に強力で活発に働いていると考えられ、敏感性の原因を示す科学モデルにもなっています。 このシステムは、脳の右半球(前頭部皮質という思考をつかさどる部分)と関係しており、右脳の電気活動が活発な赤ん坊が、HSCになりやすいといわれています。(p52) HSPの提唱者のエレイン・アーロンは、ひといちばい敏感な子の中でこのように書いています。 HSC(ひといちばい敏感な子ども)になりやすいのは、「右脳の電気活動が活発な赤ん坊」である、ということは、実に興味深い事実です。 かつて「論理的な左脳人間」「芸術的な右脳人間」、「左脳は男性脳」「右脳は女性脳」といったステレオタイプがメディアでもてはやされました。現在ではこれらは極端すぎる神経神話であり、
境界性パーソナリティ障害の場合、うつや不安障害、睡眠障害といった問題だけでなく、ADHD(注意欠如・多動性障害)や依存症、摂食障害、解離性障害といった診断がつくことも珍しくありません。 診断名ばかりが、ずらっと並ぶわけです。その治療を別々の医者から受けているというケースもあります。 …結局、大本で何が起きているのかということをトータルでみる視点が必要なのです。そして、それを可能にしたのが、先に述べた愛着障害という視点です。(p89) 激しい気分の波があり、ささいな言動に傷つきパニックになり、いつも頑張りすぎてしまう。激しい嵐のさなかで荒れ狂う波に揺られる船のような日常生活を送っている人たち。 そのような人たちは、これまで、病院ごとにさまざまな診断名を下されることがありました。たとえば、ADHD、全般性不安障害、強迫性障害、パニック障害、うつ病、双極性障害などです。 しかし決してそれらの症状
PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対して、新たな薬物療法のアプローチが開発されているというニュースが、ここ数ヶ月の間に何度か報道されていました。 2016年8月のニュースでは、トラウマ記憶を短期間思い出させたあと、海馬の神経新生を刺激する薬物であるメマンチンを用いることで、記憶を修正できる可能性があるということ。 2016年11月のニュースでは、PTSDの患者では、脳のミクログリア細胞に炎症がみられ、炎症を抑える薬物であるミノサイクリンを投与することでトラウマに伴う行動の異常が少なくなること。 マウスでの実験成果をそのまま人間に当てはめるわけにはいきませんが、PTSDが脳の炎症という生化学的な一面を持っていることを明らかにした興味深い研究で、被災者を対象に臨床試験計画も進められているそうです。 そのほかにも、VRやニューロフィードバックを用いた治療など、近年のPTSDやトラウマ記憶に関す
「ほとんどの人は」とラヴィーンが指摘するように、「トラウマを〈精神的な〉問題、さらには〈脳の病気〉だと考えている。しかし、トラウマはからだの中にも生じる何かなのである」。 実際に、トラウマが最初に、真っ先にからだに生じることをピーターは示している。トラウマに関連している精神状態は重要ではあるけれども、二次的なものである。からだから始まり、こころが後に続くのだ、と彼は言う。 したがって、知性や情動さえも関与させる「対話による療法」では十分に深いところまで到達しないのである。(p xii) これは、身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケアのまえがきに寄せられたカナダのサイコセラピスト ガボール・マテの言葉です。 ガボール・マテはわたしにとって重要な気づきをくれた医師でした。彼のことを知ったのは、慢性疲労症候群(CFS)の専門医である三浦一樹先生
はじめにー原因はさまざま 最初に注意点として書いておきたいのは、不登校の原因は多様だということです。この記事では、前回の記事に基づき、生物学的な不動状態として不登校を捉えています。おそらく感受性の強い敏感な子などに多いタイプです。 しかし、たとえば交通事故による髄液漏れや、食生活の偏りによる低血糖症のような、異なる原因で起こる不登校もあります。何かしら未診断の難病がひそんでいることもあります。不登校の原因を探るとき、さまざまな可能性を念頭に置くのは大切です。 「行きたいのに行けない」―ドーパミン不足 こころではどうしても行きたいのに、からだはどうあがいても動かなくなる。 これは、単刀直入に言えば、ドーパミン不足の症状です。 近年、小児型慢性疲労症候群ではドーパミン異常が生じていることが確認されています。 疲労と回復の科学 (おもしろサイエンス)にはこう書かれています。 また、CCFS患児に
このブログを、常時SSL(暗号化通信)に対応しました。SSL(Secure Sockets Layer)とは、インターネットの安全な接続のことで、URLの最初がhttpからhttps (sはsecure[安全]の意味)へと変わります。 使っているサーバーでSSLが無料化されたので、気軽な気持ちで対応してみようとやり始めただけでしたが、やってみるとけっこう大変な作業でした。 全部のページでhttpがhttpsになるだけだから、機能をオンにしたらそれでOK、というくらいに考えていましたが、ところがどっこい、httpとhttpsは、別のページとして認識されるため、これまでのリンクを書き直したり、各種サービスに新しくサイトを登録しなおしたりしなければなりませんでした。 それでも、常時SSL化は、これからサイト運営している人はどこかで取り組まなければいけない課題なので、これからやってみる人にも役立つ
あなたが今まで「人生でいちばん恥ずかしい」という思いをしたのはいつですか? そう問われると、思い出したくもない記憶がいくつも頭をよぎって、思わず顔をしかめたり、思考を追い払ったりしてしまう人もいるでしょう。 「恥」という感情は、ひときわ耐えがたいものの一つです。痛みに強く、怒りをコントロールでき、悲しみにも呑み込まれない屈強な人でも、恥ずかしさだけは耐えることができないかもしれません。 恥ずかしさは、わたしたちにとって身近なものですが、度を越えた恥ずかしさは、人を殺すことさえあります。ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち (光文社新書)という本で取材された、精神分析学者ジェームズ・ギリガンはこう語ります。 あらゆる暴力は、その被害者から自尊心を奪い、代わりに恥の感情を植えつける。 それは事実上、その人を殺すのと同じだ。(424) 「恥」が人を殺すとはどういうことでしょうか。 「恥」は、
一般人のイメージでは、声の幻聴は統合失調症とほぼ同義語である―声が聞こえる人の大半は統合失調症ではないので、これは大きな誤解だ。(p76) これは、有名な脳神経科医、オリヴァー・サックス先生の見てしまう人びと:幻覚の脳科学という本からの引用です。 日本でもアメリカでも、精神科医の中には、今だに、患者に幻聴があると知ると、安易に統合失調症と診断してしまう人が少なくないようです。 しかしオリヴァー・サックス先生の言葉が示すように、幻聴がある人の大半は統合失調症ではありません。 幻聴を伴い、統合失調症と間違われやすいものの代表例は、解離性障害とアスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)だと言われています。 この記事では、特に、統合失調症と解離性障害の違いについて、解離の専門家の本を参考にまとめてみました。アスペルガー症候群との違いについても少しだけ取り上げています。 これはどんな本? 今回おもに参
ある若い男性が自らの暗い経験を次のように記述している。 「人類から切り離されて、宇宙でひとりぼっちのように感じる……自分が存在しているのかどうかさえわからない……みんなは花の一部なのに、僕は未だに根っこの一部だ」(p133) 先日、わたしは とある講演の中で、性的虐待のサバイバーである女性のエピソードについて話されるのを聞き、戸惑いと違和感を覚えました。 講師は、その女性が自殺衝動と闘いながらひたむきに生き抜いていることに触れ、わたしたちはみな、こうした憂鬱な気分や苦悩に見舞われるとしても、それを乗り越えていくことができる、と聴衆を励ましていました。 確かに勇気づけられるエピソードかもしれません。しかし、わたしはその話に困惑して、同意も共感もできませんでした。 性的虐待をはじめ、子ども虐待のサバイバーが感じる苦悩は、多くの人がふだんの生活の中で感じる憂うつさや不安とは、あまりに異質で種類の
重要なのは、ただ単にある特定の性格特性を身にまとうだけでは創造性の衣鉢を受け継ぐことはできないということである。 人は僧侶のように生きても、身体を酷使して無理をして生きても、創造的であり得る。 ミケランジェロは女性にそれほど興味を示さなかったが、ピカソは常に女性を求めていた。彼らの性格に共通点はほとんどないが、しかし、両者は絵画の領域を変えたのである。(p64) 創造的な人に「ある特定の性格特性」などない。 自信を持って、そう言い切ってしまえるのは、創造性について、豊富な調査と研究を積み重ねてきた第一人者、ミハイ・チクセントミハイをおいてほかにはいないでしょう。 今日、さまざまなメディアで、創造性、クリエティビティについて、ありとあらゆることが取り上げられています。 創造的な人は外向的だとする記事もあれば、内向性人間の時代が来たとする学者もいますし、朝型人間のほうが、あるいは夜型人間のほう
溜め込み障害は強迫関連障害に属し、DSM-5で新たに登場した項目である。 これは子どもにないではないが、一般的には成人の問題である。それをあえてなぜ取り上げるのかというと、われわれ児童精神科医が遭遇することが稀ではないからである。 …われわれの経験では圧倒的にAD/HD(片付けられない)よりASD(捨てられない)のほうが目立つのであるが。(p55-56) これは、臨床家のためのDSM-5 虎の巻という本で、児童精神科医の杉山登志郎が書いておられる「溜め込み障害」(Hoarding Disorder)についての一文です。 発達障害かどうかにかかわらず、部屋が散らかって片付けられないことに悩んでいる人は多いでしょう。本人よりも家族が頭を抱えることが多いかもしれません。 片付けられないことそれ自体は、病気や障害というほどではありませんが、ときどきメディアで報道されるゴミ屋敷のような、明らかに健康
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