昭和40年、自分は心臓の手術をして長いこと入院していた。今と違って、あの当時の心臓手術はものすごく危険でたいへんなことだったから、病院には半年くらいいて、その後一年近く自宅で療養していた。療養生活では時間がたっぷりあったので、ひたすら読書で時間をつぶしていた。読むにしてもなるべく時間のかかる大著がいいと、わざと分厚い本ばかり撰んで読みまくったものである。その時のことが今の自分の考え方の基盤を作っているといってもいいくらい、この時期は沢山の本を読んだのである。 そうした本の中で印象に残っているのはアーノルド・トインビー(1889- 1975年)が書いた「歴史の研究」(1934-1961年)だ。この超有名な本は全12巻からなる膨大なもので、小生が読んだ時期にはまだ日本語訳は完成していなかった。確か東京電力の会長であった松長安左ェ門氏がライフワークとしてその後しばらくして全巻の翻訳を完成させたは