哺乳類の単為発生放棄 有胎盤類の哺乳動物では、受精卵はメスの体内で個体発生を遂げる。これは確実な繁殖方法で、危険が迫っても母親が避難することにより、胎児の安全が確保される。一方、体外に卵が産み落とされる生物では、環境の急変や外敵といった次世代の生命を脅かす危険に常に晒されている。 哺乳類は胎生へと進化したのと同時に、単為発生(卵子のみから個体が発生)することを完全に放棄する仕組みを獲得している。雌雄生殖細胞の遺伝情報には決定的な差異があるために、受精を介して両者が協調的に貢献することが個体発生に不可欠となっているのである。 これまでの研究成果からは、巧妙に仕組まれた遺伝子発現の制御方法と、次世代誕生に対する父母ゲノムの明確な意志が伝わってくる。 父母ゲノムの決定的な差異 哺乳類では、精子と卵子が受精して雌雄ゲノムからなる2倍体の胚となることが次世代を残すために必要だ。一見至極当然のように