ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏が海外メディアの取材の中で、「日本の通貨当局がなぜ円安にパニックになるか分からない」と、岸田文雄政権と日銀の円安への姿勢を批判した。政府がゴールデンウイーク中に実施した為替介入や、植田和男総裁の円安を懸念した利上げの可能性について発言したことが念頭にあるのだろう。 クルーグマン氏は、円安は日本経済にプラスに働くとし、データをみると日本が持続的なインフレを達成できるか自信がない、とも指摘した。これらの認識は私も大いに同意するところだ。 ワイドショーなどで「悪い円安」を指摘するコメンテーターも多い。それを信じている人たちもいるだろう。だが、実際はどうだろうか。 PwCコンサルティングの片岡剛士チーフエコノミストは、最近の円安は交易条件を悪化させていないと指摘している。 交易条件とは、自国にとって貿易を行うことがどのくらい有利か、あるいは不利かを示す