慰安婦の実状をベースにした論説の部分であるが、事実認識のお粗末さに驚くとともに、慰安婦に対する同情心のひとかけらもないことに唖然とする。 もちろん、慰安婦になった女性の中には、貧困な農村から親に売られた女性もいたわけで、残酷で不幸な体験だったことは間違いない。年端もいかぬ若い娘が見知らぬ男に体を売ることを強制させられるというのは、筆舌に尽くし難い苦しみだったはずである。 ただ、もしその仕事がなかったらどうなっていたかを想像してみることも必要だ。一家全員が餓死していたかもしれないのである。女性が大金を稼げる仕事は当時、そうそうなかった。 昭和初期は冷害が続発し、東北地方では食に事欠き、収入が途絶した農民が多数いた。しかし、普通の親ならば手塩にかけて育てた娘をすすんで売りに出すはず はない。親が自ら売り払ったというよりは貧困家庭を見出だしては商売にしようとするひとたちに食い物にされたのである。