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中東情勢
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イスラエル人歴史家の言葉から1954年にイスラエルで生まれたユダヤ系イスラエル人歴史家のイラン・パぺは、2006年に『パレスチナの民族浄化——イスラエル建国の暴力』を著した。2017年に邦訳が出た同書は、パレスチナ人がアラビア語で「ナクバ(大災厄)」と呼ぶ1948年前後の出来事を詳細に描く。その年にイスラエルが建国されたとき、そこに先住していたパレスチナ住民は計画的に追放され、さらには組織的な虐殺さえ被った。「シオニスト」はパレスチナにユダヤ人の民族的拠点を創設することを悲願とする人々を指すが(「シオニズム」は、そのイデオロギー)、戦後、こうした人々はそこにあった元々のパレスチナ社会を不可逆的に破壊した。パぺの本は、このナクバを一貫して「民族浄化(エスニック・クレンジング)」として解析している。 そこでパぺは読者に、こう問いかける。 「こういうことを想像してほしい。あなたのよく知る国で、少
今回標的にされたバルフォア卿(アーサー・バルフォア、イギリス元首相)は、 パレスチナで後に民族浄化を引き起こす原因のひとつとなった1917年のバルフォア宣言に外相としてサインをした人物である。当時イギリスの領土でもない、かつ当時先住のアラブ人・キリスト教徒などが人口の90%を占めていたパレスチナに、シオニストの「郷土」を建てることへの支持を約束するその宣言は、中東におけるイギリスの戦争責任を問うものとして、現在でも国際社会で物議を醸している(*4)。こうした入植行為はセトラー・コロニアリズムと呼ばれ、植民者が特定の土地を永久的に占領し、すでに存在する社会を植民者のもので置き換える行為のことを指す。 今回絵画への攻撃を通して抗議を行ったパレスチナ・アクションは、こうしたイギリスの戦争責任を追及するとともに、イスラエル最大の武器会社であるエルビット社と、エルビット社に出資をするイギリスの共犯関
ヴェネチア・ビエンナーレではパレスチナは過去にナショナル・パビリオンを設置したことがないが、2022年にはパレスチナミュージアムUSが公式の関連イベントを主催した。サンパウロ美術館の芸術監督アドリアーノ・ペドロサによってキュレーションされる2024年のビエンナーレのメイン展示では、331人の中に、ダナ・アワルタニとサミア・ハラビを含むふたりのパレスチナ人アーティストが参加する。 また、過去には2003年のビエンナーレのキューレーターを務めたフランチェスコ・ボナミはその年のフェスティバルにパレスチナ・パビリオンの展示を提案。しかし、反ユダヤ主義だと批判を受けて、パレスチナ・パビリオンの展示は行われなかった。ただし、ボナミはメインの展示にアーティストカップルであるパレスチナ人のサンディ・ヒラールとイタリア人のアレッサンドロ・ペッティによる作品を含めた。
エルヴィス・プレスリーとプリシラ・プレスリーとの出会いから結婚・離婚までを、プリシラが1985年に出版した自伝をもとにソフィア・コッポラが映画化した『プリシラ』。シェイクスピア、舞台芸術史、フェミニスト批評を専門とする批評家の北村紗衣がレビューする。4月12日、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
その「声」は誰のためにあるのか?このエッセイは、初めて自分から「掲載してほしい」と申し出たものだ。掲載を許可してくれた、編集部の福島夏子さんに謝辞を申し上げる。また、このエッセイを書くにあたり重要な情報を提供してくれた多くの友人——とくに、滝朝子さん——に感謝の意を伝える。 2023年3月11日、「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?——国立西洋美術館65年目の自問 | 現代美術家たちへの問いかけ」の内覧会が開催された。参加作家の飯山由貴と遠藤麻衣、美術家の百瀬文らが抗議のアクションを実施した。今回の報に接し、ぼく自身、恥ずかしさを覚える。この問題に対し、自分なりに知ろうとしてこなかったことについて。現代アートの領域で、「脱植民地化」を語ってきた研究者であるにもかかわらず。いまガザで起きていることに対して声をあげることは、まぎれもなく脱植民地化の問題だ(その関連性は、次
ヴェネチア・ビエンナーレやドクメンタにも参加。クスノキを素材に大理石の目をはめ込んだ、内省的で静謐な半身像で知られ、2005年からは半人半獣・両性具有の「スフィンクス・シリーズ」を手がけた
ホーム / ニュース・記事 / 美術館はこれまでも抗議活動の場であった。国立西洋美術館で起きた抗議を機に、海外の事例や理論的な積み重ねを解説(文:五野井郁夫)
ホーム / ニュース・記事 / 国立西洋美術館で飯山由貴らアーティストがパレスチナ侵攻に抗議、美術館パートナーの川崎重工に訴え。遠藤麻衣と百瀬文の抗議パフォーマンスも
東日本大震災がターニングポイント──現在開催中の「奈良美智 The Beginning Place ここから」展は、奈良さんの創作の原点を様々な角度から浮かび上がらせる展覧会です。奈良さんは、この展覧会は同じ青森出身の高橋さんが担当だったからこそできたものだとおっしゃっています。故郷が大きな鍵となるこの企画を、高橋さんはどのように発想されたのでしょうか。 青森県立美術館では、2012年から翌年にかけて奈良さんの個展「君や 僕に ちょっと似ている」が巡回開催されました。当時、10年後にまた個展を行うとしたら、ほかからの巡回企画ではなく、自分たちの企画でやれたらいいなと夢想していました。 奈良さんは、2000年のドイツからの帰国後、出身地の弘前市を会場にした展覧会を何度か行っていますが、自作への故郷の地の影響のようなことはご自身では積極的には口にしてこなかったし、周囲の人々によるそのような語り
強い父が不在のエディプス・コンプレックスフロイトの精神分析的な主体化の構図が現在では変わってしまっていることを寓意的に描く神経症コメディであり、おそらくはユダヤ民族の歴史と深く関わる寓話であろう。 フロイトの図式では、男の子は母を独占する父と対決し、象徴的に殺すことで一人前の大人として主体化する、とされてきた。その過程で、男の子は、父からの近親相姦の禁止を内面化し、法や倫理の命令の源泉として個人の中に「超自我」が形成されるとした。そこには、母親との近親相姦の欲望と、それへの懲罰としての去勢という脅迫が関わっている。これらが複合した葛藤を「エディプス・コンプレックス」と呼ぶが、本作は、まさにそのようなコンプレックスを映像化したような作品である。ただし、もはや強い父はおらず、強大な母がおり、息子も反抗や対立もしない(現代人も、そうなってきているように)。
相次ぐ「大吉原展」への批判ここ数日、「大吉原展 江戸アメイヂング」(以下、本展)がSNSを賑わせている。本展は、かつて江戸/東京にあった公娼街・吉原遊廓を取り上げたもので、今年3月から東京・上野の東京藝術大学大学美術館で開催される美術展である。本展公式サイトのステートメントには「『江戸吉原』の約250年にわたる文化・芸術を美術を通して検証(改行)仕掛けられた虚構の世界を約250件の作品で紹介する」とある。 マンガ家・瀧波ユカリ氏のX(旧Twitter)では、前述のステートメントに続く序文を指して、「ここで女性たちが何をさせられていたかがこれでもかとぼやかされた序文と概要。遊園地みたい。」と非難するコメントをポスト。ここを起点にSNS上での意見対立を生んでいたようだ。 筆者の私は遊廓を専門に扱う書店・カストリ書房を経営しているが、同店は吉原遊廓が戦後に何度か看板を掛け替えて現在は吉原ソープ街
『へレディタリー/継承』(2018)、『ミッドサマー』(2019)で、ホラー映画のジャンルを刷新する表現を見せ、多くの映画ファンの心を鷲掴みにしたアリ・アスター監督。その最新作『ボーはおそれている』が2月16日から全国公開される。 主人公ボーを演じるのは名優ホアキン・フェニックス。 日常のささいなことでも不安になってしまう男ボーは、母が突然怪死したことを知る。母の家へ駆けつけようとするが、奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、その道行きは夢か現実かもわからない神話的なファンタジーの様相を帯びていく。ブラックユーモアに彩られた鮮やかな場面展開、続々と登場する怪しすぎる人物たち、やがて明らかになる母親の威圧的な存在感──。母と息子における支配と服従、愛と憎しみ、帰郷と脱走、といった複雑怪奇な(そして普遍的な?)関係をめぐる壮大な“オデッセイスリラー”だ。
アーティスト・奈良美智にとっての故郷、そして「はじまりの場所」がテーマの個展「奈良美智: The Beginning Place ここから」(10月14日〜2024年2月25日)が行われる青森県立美術館でインタビューを行った。後編では、展覧会のハイライトとなる部屋と平和への思い、旅やコミュニティ、自由など、作家を貫く思想について話が及んだ。(聞き手・文:宮村周子)
──青森県立美術館は、大きな《あおもり犬》をはじめ、奈良さんの初期からの作品を170点以上も、世界一収蔵している縁の深い美術館ですね。 ここは建設される前から関わり合っていて、青木(淳)さんがどんなコンセプトで設計したかもわかるし、スペースも全部知っているからやりやすかったよ。 それに、この展覧会が特別なものになったのは、企画を担当した高橋しげみさんのおかげ! 彼女は美術館で唯一の青森県出身の学芸員で、歳下だけど同じ弘前市出身だから、俺の奥深くにある故郷というものをはっきりと見ることができるの。青森出身の写真家・小島一郎をはじめ、土地に根ざした作家の研究をずっとしてきた人で、俺のことは個の部分でも知ろうとしていただろうから、ほかの人ができないような発想が自信をもってできる。もし担当者が県外から来た人だったら、もっとサブカル寄りになったりとか、まったく違う切り口になっていたと思う。そういう、
青木淳(建築家、京都市京セラ美術館館長)(A)偶然は用意のあるところに 西澤徹夫(TOTOギャラリー・間) (B)さいたま国際芸術祭2023 メイン会場(旧市民会館おおみや) (C)空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く(多摩美術大学八王子キャンパス・アートテークギャラリー) 展覧会とは作品を見る機会であり、美術館等の展示室はそこで作品を見るのに最良の空間としてつくられる。ほとんどの展覧会はその枠組のなかにあるし、もちろん、そういうなかですばらしい体験を与えてくれた展覧会は今年も数多くあった。とはいえ、この枠組にアプリオリに乗るのではなく、この枠組の存在自体に拘った、あるいは拘らざるをえなかったものもあり、そこから大きな刺激を受けた展覧会を3つ挙げたいと思う。 「偶然は用意のあるところに 西澤徹夫」は、建築展という、作品である実際の建築を展示できるわけではない、展覧会としてそもそも矛
11日には空山自身がInstagramアカウントで本件に言及。 ビヨンセに対し、「あなたは私に“正式に”お願いすべきだった。そうすればザ・ウィークエンドのようにもっとマシな作品を提供したのに」とコメントするとともに、ビヨンセのライヴ写真と自身の作品画像を投稿した(ザ・ウィークエンドはカナダのシンガーソングライターで、空山が「Echoes of Silence」のMVを手がけるなど協働の経験がある)。 この空山の投稿について、15日に所属ギャラリーであるNANZUKAの代表 南塚真史が声明を発表した。内容は以下の通り。 空山基のInstagramにおけるBeyonceの衣装デザインに関するポストについて、 空山の主張は、シンプルです。今回のビヨンセのツアーで使用された一部の衣装デザイン、および関連するツアー商品は、「自分が手がけたものではない」ということです。その事を公表する理由は2つありま
アート界の影響力ランキング「Power 100」毎年恒例のアート界でもっとも影響力のある100組をランキングで発表する「Power 100」の2023年版が発表された。イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』が2002年から毎年発表しており、全世界のアート界の識者から匿名で寄せられた意見をもとに、この12ヶ月間に現代アートの発展に貢献した100組をリストアップする。 1位はナン・ゴールディン2023年の1位には、アメリカのアーティスト、ナン・ゴールディンが選ばれた。 ここ数年の1位を振り返ると、2022年は「ドクメンタ15」で芸術監督を務めたインドネシアのアート・コレクティヴ「ルアンルパ」、2021年は「ERC-721」(NFT[非代替トークン]の取り扱いをするための規格)、2020年は「Black Lives Matter」、2019年はグレン・D・ロウリー(ニューヨーク近代美術館館
写真家、安井仲治(1903〜42)の20年ぶりとなる大個展「生誕120年 安井仲治」が、2023〜24年にかけて3館で開催される。会期は10月6日〜11月27日に愛知県美術館、12月16日〜2024年2月12日に兵庫県立美術館、2024年2月23日〜4月14日に東京ステーションギャラリー。 大正デモクラシーの時代を若者として過ごし、10代から関西の写真界で頭角を現した安井。わずか38年の人生で残した写真は、日本の写真史の流れとも符合する。本展では戦災を免れたヴィンテージプリント140点に加えモダンプリント60点の合計約200点を展示し、安井の歩みの全貌を紹介する。 今回は本展の企画を担当した中村史子(愛知県美術館学芸員)、小林公(兵庫県立美術館学芸員)、若山満大(東京ステーションギャラリー学芸員)に、安井の魅力と本展の見どころについて聞いた。100年前に活躍した写真家だが、3人の視点を通し
11月14日、『The Art Newspaper(アート・ニュースペーパー)』が艾未未(アイ・ウェイウェイ)のロンドンでの個展が事実上中止になったと報じた。 アイは1957年中国生まれで、国際的にもっとも影響力のある現代アーティストのひとり。個展はロンドンのリッソン・ギャラリーで今週から開催予定だったが、直前に無期限の延期が決定された。これに対しアイは「事実上の中止」だと語っている。 リッソン・ギャラリーは、アイがSNSで投稿したパレスチナとイスラエルの情勢をめぐる発言を理由に、作家と話し合いの末、いまは新作を展示するのに適切な時期ではないと結論付けたと発表。「イスラエルとパレスチナの領土、そして国際的なコミュニティにおける悲劇の苦しみを終わらせることに全力を注ぐべきときであり、反ユダヤ主義やイスラム嫌悪とみなされるような議論の余地はない。アイ・ウェイウェイは表現の自由を支持し、虐げられ
現代美術家による「創造の体感」東京・京橋のアーティゾン美術館で、展覧会「ジャム・セッション 石橋財団×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」が開催されている。石橋財団コレクションと現代美術家が共演する「ジャム・セッション」の第4弾。会期は9月9日から11月19日まで。 「ジャム・セッション」は、アーティゾン美術館のコンセプト「創造の体感」を体現する展覧会としてアーティストと学芸員が共同するもので、2020年は鴻池朋子、2021年は森村泰昌、昨年は写真家の柴田敏雄と鈴木理策が招かれた。 今回招かれた画家の山口晃は1969年生まれ。鳥の目で描く鳥瞰図といった日本の伝統的絵画の様式を取り入れて油絵の技法で描く絵画をはじめ、立体やマンガ、インスタレーションなど多岐にわたる表現を行っている。最近では東京2020パラリンピック公式アートポスターや、東京メトロ日本橋のパブリックアートなども手
「わるさ」が意味するもの──はじめに本書のテーマについてお伺いします。本書で掲げられる4つのテーマ「コピー」「パロディ」「キッチュ」「悪」はどのように生まれてきたのでしょう? この本は僕が学芸員をやってきた10年分ぐらいの仕事の主要なところをまとめたものです。僕のなかで軸になっているものを探したときに、まず「コピー」「パロディ」「キッチュ」の3本柱が立ってきた。これらはすべて「複製」にまつわるテーマなので、そのまま「複製芸術論」に仕立てることもできたんですが、それでは的を絞れていない気がして。そこで、全体の底に流れる観点として「悪」が加わっていきました。 ──それが書名『芸術のわるさ』の「わるさ」につながっていったわけですね。その「悪」は芸術分野ではあまり見慣れないテーマかと思いますが、これにはどのような思いが込められているのでしょうか。 本書の冒頭には、柳田國男が書いた『不幸なる芸術』に
ピクセルアート界で独自の作風を確立した「豊井」 コンピューターやデジタルゲームの性能が現在ほど高くなかった時代のグラフィック表現である「ピクセルアート」は、2000年代の半ば以降インターネット上で広がりを見せ、ゲームのみならず、アニメーションやデザイン、アートといったビジュアルカルチャー全般にその表現が見られるようになっている。日本では「ドット絵」という呼称でも親しまれてきたこれらのイメージは、ゲームグラフィックの向上により技術的には最新のものではなくなったにもかかわらず、現在もその裾野を広げている。 表現の水準に視点を移してみてもそのスタイルは様々で、ピクセルのドットらしさを若干残しつつも精緻に対象を描く場合もあれば、アイコンのような表現を得意とする描き手もいる。そんなピクセルアートの世界で、都市や自然といった日常的な風景を描く存在として支持を集めているのが豊井祐太である。ゲームのUIや
10月19日、現代アートを専門とする国際的メディアArtforumがアーティストやアート関係者らに呼びかけ、民間人への暴力と殺害の停止やパレスチナ解放と即時停戦、ガザへの人道的支援等を求める内容のオープンレターを公開。しかし、このことを受けてArtforum編集長のデイヴィッド・ヴェラスコ(David Velasco)がArforum社を解雇されたことをARTnewsが伝えている。この後、4名の編集者も辞職したこともわかった。 Artforumの公式サイトを見ると、同社はパブリッシャーのダニエル・マコーネル(Danielle McConnell)、アソシエイトパブリッシャーのケイト・コザ(Kate Koza)、そして今回解雇されたヴェラスコがリーダーシップを取って運営してきたことがわかる。 しかし10月26日にArtforum上で発表されたステートメントでは、マコーネルとコザが連名でヴェラ
6人のチームで実現した「女性と抽象」展現在、東京国立近代美術館のコレクションを展示するギャラリー4で小企画展「女性と抽象」(9月20日〜12月3日)が開催されている。戦後すぐから現代まで、抽象的な表現と向き合ってきた女性作家たちによる作品の数々を、同館のコレクションから紹介する意欲的な展示だ。 これまで紹介される機会が少なかった作家から、急速に再評価が進む注目作家、草間彌生、田中敦子らすでに国際的な評価を確立した作家たちまで、その所蔵作品を再調査し、キュレーションした本展。こうした取り組みを立ち上げた経緯や、調査をしていくなかで知った女性作家たちの苦難、国立美術館のジェンダーバランスに対する意識の現況など、同館の企画メンバー6人から小川綾子、横山由季子、小林紗由里の3人に話を聞いた。 コレクションの再発見と再評価 ──昨今、女性のアーティストによる抽象表現への再評価が国際的に進んでいます。
1920年代を迎えたフランスの首都パリでは、第一次世界大戦からの復興によって急速に工業化が進み、「機械時代」(マシン・エイジ)と呼ばれる華やかでダイナミックな時代を迎えました。本展覧会は、1920-1930年代のパリを中心に、ヨーロッパやアメリカ、日本における機械と人間との関係をめぐる様相を紹介します。特にパリ現代産業装飾芸術国際博覧会(アール・デコ博)が開催された1925年は、変容する価値観の分水嶺となり、工業生産品と調和する幾何学的な「アール・デコ」様式の流行が絶頂を迎えました。日本では1923年(大正12)に起きた関東大震災以降、急速に「モダン」な都市へと再構築が進むなど、戦間期という繁栄と閉塞の狭間に、機械や合理性をめぐる人々の価値観は大きく変化していきました。 コンピューターやインターネットが高度に発達し、AI(人工知能)が生活を大きく変えようとする現在において、約100年前の機
石橋財団コレクションと共演東京・京橋のアーティゾン美術館で、展覧会「ジャム・セッション 石橋財団×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」が開催されている。石橋財団コレクションと現代美術家が共演する「ジャム・セッション」の第4弾。会期は9月9日から11月19日まで。 「ジャム・セッション」は、アーティゾン美術館のコンセプト「創造の体感」を体現する展覧会としてアーティストと学芸員が共同するもので、2020年は鴻池朋子、2021年は森村泰昌、昨年は写真家の柴田敏雄と鈴木理策が招かれた。 今回招かれた画家の山口晃は1969年生まれ。鳥の目で描く鳥瞰図といった日本の伝統的絵画の様式を取り入れて油絵の技法で描く絵画をはじめ、立体やマンガ、インスタレーションなど多岐にわたる表現を行っている。最近では東京2020パラリンピック公式アートポスターや、東京メトロ日本橋のパブリックアートなども手掛け
世界初の原子爆弾を開発した「原爆の父」として知られる理論物理学者ロバート・オッペンハイマー(1904~67)を主人公とする伝記映画『オッペンハイマー』が、世界中で大ヒットしている。監督は『ダークナイト』『インセプション』『インターステラー』『ダンケルク』『TENET テネット』などで斬新な視覚描写を開拓してきたクリストファー・ノーラン。日本でも公開を求める声があるものの、現在まで公開未定となっている。 そんな本作を、ニューヨーク在住のアーティストである蔦谷楽(つたや・がく)がレビュー。戦争や核時代において抑圧されてきた現代にまで至る事実や記憶を、寓話的要素を用い国境を越えた問題として再解釈、再構築する作品を制作・発表している作家の視点から、本作がはらむ問題について論じる。【Tokyo Art Beat】 蔦谷楽のインタビューはこちら 核と戦争の歴史的悲劇に取り組む在米作家、蔦谷楽。原爆の図
2023年でもっとも注目を集める展覧会のひとつ、「デイヴィッド・ホックニー展」が東京都現代美術館で11月5日まで開催されている。60年以上にわたり、絵画、ドローイング、版画、写真、舞台芸術といった分野で多彩な作品を発表してきたホックニー。誰もが認める巨匠の作品を目の前に、美術家の梅津庸一は何を考えたか。画家としてのホックニーの手法、そして「美術の魔法」が解けた現代の美術を取り囲む諸種の事情を交 錯的に読み解く。【Tokyo Art Beat】 ※画像の無断複製・転載・流用禁止 *展覧会レポートはこちら 前置きとして、「展覧会レビュー」を取り巻く状況を考えるTokyo Art Beatからデイヴィッド・ホックニー展の展覧会レビュー依頼があり一瞬戸惑った。というのも僕は久しく「展覧会レビュー」を書いていなかったからだ。ちなみに僕がホックニー展の内覧会を見に行った7月14日は宮﨑駿監督の映画『君
トム・ハンクス、スカーレット・ヨハンソン、ジェイソン・シュワルツマンほか豪華スターが大集結する、ウェス・アンダーソン監督最新作『アステロイド・シティ』。人々が豊かな日々を謳歌し、アメリカがもっとも輝いていたと言われる1950年代を舞台にした本作は、モノクロで描かれる同時代のテレビ番組と、カラフルに描かれる番組内の劇《アステロイド・シティ》が交差する、入り組んだ構成を持つ作品だ。劇《アステロイド・シティ》では、人口わずか87人の砂漠の街アステロイド・シティで開かれるジュニア宇宙科学賞の祭典に集まった人々が、群像劇を繰り広げる。 本稿では、舞台、映画、ラジオで上演されるアメリカン・ミュージカルの劇作法について研究する辻󠄀佐保子が、舞台となる1950年代アメリカの状況、とくに演劇界出身者が多く活躍した「テレビ」をめぐるメディア環境や演技の在り方を軸に本作を論じる。【Tokyo Art Beat
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