捏造された福沢諭吉像―今も進行する『東日流外三郡誌』汚染― 原田 実 ◎福沢諭吉は侵略主義者? 福沢諭吉(1835〜1901)といえば、読者はどのような人物を思い浮かべるだろうか。日本に民主主義・啓蒙主義の種をまき、近代化への道を切り開いた思想家。『学問のすすめ』を著し、慶応義塾大学を開いた教育家。『時事新報』を創刊し、新聞界に「不偏不党」の精神をもたらしたジャーナリスト・・・・現在、彼の肖像が一万円札に用いられているのも「偉人」としての肯定的評価が定着していればこそだろう。 しかし、1970年代から現在にかけての思想史学界では、福沢に対して、まったく逆の方向での評価が流行している。すなわち朝鮮・中国に対する侵略主義者、日本人以外のアジア人を蔑視した民族差別主義者といったものだ。 その観点から福沢を批判してきた論客の代表として安川寿之輔氏(現・名古屋大学名誉教授)があげられる。安川氏は福沢