ゾウやイルカ、キツネザルが信じられないぐらいにお互いにとてもよく援助しあうことから、こうした傾向が多くの哺乳類によく発達していることはすぐ理解できます。世話を焼いたり同情したりする性質は、類人猿--人間の系統より遥かずっと昔に溯るのです。 こころが遺伝的基盤をもっているということは、それが人類と霊長類の歴史の刻印を受けているということでもあります。 ここでは、私たち自身のこころの内面(感情や本能の動き)が、人類の系統に至る霊長類の社会進化と密接に関係していることについて考察します。私は、この社会進化(したがって、こころの進化)の起動力が育児負担の増大であるとする川村俊蔵の仮説が、最も合理的な説明であろうと考えます。 人類進化の系統(系列)で、社会構造がどのように進化してきたかを探る一つの試みが、今西錦司をリーダーとして始められた日本の霊長類学であろうと思われます。私は霊長類学者ではありませ