市場対国家 ダニエル・ヤーギン&ジョゼフ・スタニスロー 日本経済新聞社 1998 Daniel Yergin [訳]山岡洋一 1990年代を日本の「失われた10年」というらしい。そのわりに何が失われたのか、まったくはっきりしていない。答えを出した者もいない。そのあいだに小泉純一郎政権が強化され、「なんでも民」になり、地域格差が埋めがたくなり、六本木ヒルズが建設されてそこに三木谷浩史や堀江貴文が入ることになったというほうが、わかりやすい。21世紀日本の最初の5年間は「失われた10年」が鳴り物入りで用意した民間金融主義に席巻されているだけなのである。 本書はべつだん日本の低迷の打開のためや株主自由主義に歯止めをかけるために書かれたものではないが(そんなお節介はしていないが)、読みようによっては多少のヒントが見えてくる。それがどういうものかはあとでのべるとして、邦題が『市場対国家』という今日の根