タミル・セルバンは29歳。「黄金の四角形(GQ)」と呼ばれる新しい高速道路のおかげで人生が変わった。インド南部タミルナードゥ州の村で育ったセルバンは、父親の自転車に乗って数km離れた大きい村の学校に通えるようになったのだ。その後、近くの町の技術訓練校で学び、現在は州都チェンナイにある韓国の自動車メーカー、現代(ヒュンダイ)自動車の工場で働いている。GQがなかったら、いまごろまだ、村でココナツ栽培をしていたことだろう。GQ沿いに建つ工場で主任技術者を務めるセルバンは、組み立てラインに乗って流れてくる金属製の車体を点検し、傷があれば補修する。一つの工程にかかる時間は平均64秒。完成した自動車は、塗装と仕上げを施され、トラックに積まれる。 トラックに積まれた自動車は、GQを通ってチェンナイの港に運ばれ、世界中に出荷されていく。セルバンはこの仕事に就いて10年になるが、いまでも感慨にふけることがあ