フエンテス『テラ・ノストラ』を途中で読むのをやめてしまった人(ボクもですけど!)の多くは、この『アルテミオ・クルスの死』を先に読んでいれば挫折せずにすんだのではないかと思う。 『老いぼれグリンゴ』ほど平明でなく、『テラ・ノストラ』ほど複雑難解でもない。 あらすじを言ってしまえば、私生児として生まれた少年が、混乱のメキシコ革命に参加し、詐欺まがいの手法で地主となり、政敵を消し去り、愛人を作り、巨万の富を得て経済的にのし上がるという、ラテンアメリカ特有の血なまぐさい男の一生の物語である。 その71年の一生の中の12日を、一人称(現在時制)、二人称(未来形)、三人称(過去形)という3種類の記述方法で、12日×3種類というセクション分けで語っている。 12のセクションにおいての、詳細な日付とその時点でのクルスの年齢は以下の表の通り。 掲出順位 年 年代順番号 出来事 クルスの年齢 1 1941年7