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支援いただいたみなさま, 伊藤雄馬です。 本日,開始1週間で目標額を達成いたしました! ありがとうございます!スピード達成に驚いています。 まだまだ支援募集期間は続きますので,セカンドゴールを設定したいと思います。 具体的にはまた進捗にてお知らせする予定ですが,一つはミャンマーでのムラブリ語以外の少数言語の調査(パラウン語など),そしてもう一つは独立系研究者としての活動方法の模索,この2点についてのプロジェクトを計画中です。 達成できたことで一安心しておりますが,これからが本番だと思っています。とは言っても,気負いすぎるのは柄ではないので,マイペースで進めます。そのせいで,皆さんをやきもきさせてしまうこともあるかもしれません。ご海容ください。 まずはビルマ語の勉強から少しづつ始めていきます。勉強や研究の様子についてはYoutubeなどでも発信していく予定です。そちらもまた追ってお伝えしてい
人々が”自然”だと思う食べものの色は、どのように画一化されてきたのか – 消費主義社会における五感の歴史から探る 資本主義社会と五感の歴史学 私たちが普段目にし、耳にする世界はどのように変化してきたのでしょうか。150年前の人々が路上で耳にした音は、自動車やバイクが行き交う現代の音とはまったく違うものでした。19世紀末以降、いわゆる「第二次産業革命」が進むなか、鉄道網の発達や自動車の登場で都市の風景や生活音は大きく変化してきました。また、化学産業の発展によって色や匂いを数値化したり、香りを化学的に生成することが可能となりました。 たとえば香料メーカーがラベンダーやローズなどの香りの化学合成に成功し、化粧品などに用いられるようになったのです。また、デパートの誕生やそこに陳列された多種多様な商品は、消費者の購買行動や嗜好の変化を促しただけではありません。19世紀末以降、ソースティン・ヴェブレン
空気を肥料にする「窒素固定作物」は、ハーバー・ボッシュ法を代替できるのか? – 名古屋大・藤田祐一教授インタビュー【後編】 空気中の窒素を自ら肥料に変換して生育する「窒素固定作物」。名古屋大学大学院生命農学研究科 藤田祐一教授は、そんな夢のような植物の創出を目指している。実現のカギとなるのが、一部の原核生物がもつニトロゲナーゼという酵素だ。ニトロゲナーゼは、大気中の窒素を還元してアンモニアに変換する能力をもつ。藤田教授は、葉緑体のモデルとなるシアノバクテリアや、モデル植物として広く研究に利用されているシロイヌナズナでニトロゲナーゼを作動させられるよう、研究を進める。 ニトロゲナーゼとの出会いとなった藤田教授の大学院生時代の研究について振り返った前編に続き、後編では窒素固定作物実現に向けた研究の現在地と実用化までの展望について聞いた。 ゼニゴケにはあってタバコにはない遺伝子を追求したら、10
サンゴの大規模白化によって魚類生態系サービスの経済価値はどう変化したか? – 日本最大のサンゴ礁・石西礁湖での危機 生態系から人への自然の恵み「生態系サービス」の経済価値 美しい自然の風景やそこでのレジャー体験、美味しい海や山の幸が取れる自然環境に、いくらの価値があるのでしょうか。これまで自然の価値はお金には代えられないと、その価値が十分に認識されてきませんでした。そのため、経済成長や人間活動の優先により、自然環境は人為的な影響を大きく受けてきました。 近年、生態系(自然環境と生物の集まり)から人への自然の恵みは「生態系サービス」と呼ばれるようになり、そのサービスの数値化や経済価値の評価が始まりました。そして、国内においても生態系の持続的利用につながる政策立案や企業活動に向けて、経済的側面からの生態系サービスの評価が進められています。 どのようにしてサンゴ礁魚類の生態系サービスを評価するか
5月12日追記 サポーターの皆さま サポーターの皆さまの手厚いご支援により、達成率が158%、ご支援総額は¥2,379,400にまで達し、チャレンジ期間を終えることが出来ました!!! これまでにたくさんのご支援と温かいお言葉を下さった127名のサポーターの皆様に、この場を借りて厚く心よりお礼申し上げます。 以降も、皆様のご支援とご期待にお応えすべく、一層気を引き締めて本研究プロジェクトを進めて参ります。 研究の様子や進捗状況は、アカデミストのウェブサイトをはじめ、私たちの活動母体である関西大学アジア・オープン・リサーチセンター(KU-ORCAS)のウェブサイトでも随時お伝えしていく予定です。 弊センターのウェブサイトでは、バチカンプロジェクトの特設ページの他、弊センターで管理するデジタルアーカイブを利用した「塗り絵 大坂画壇」など、楽しいコンテンツを多数ご用意しております。併せてご覧頂けま
人はなぜ協力できるのか? 人はなぜお互いに協力しあうのでしょうか? 一見あたりまえすぎる問いですが、その答えは容易ではありません。協力するというのは実は、自分が何らかのコストや犠牲を伴って相手に利益を与える行動です。厳しい生存競争のなかで無条件に協力していては、協力する人はやがて淘汰されてしまうはずです。 それでも人間社会は有史以来、見知らぬ者同士であってすら、これまで協力し合うことでこの社会の繁栄をもたらしてきました。人間だけでなく動物社会においても、さらには粘菌のような単純な生物種においても利他的な協力行動は観察されます。つまり、淘汰されないように協力しあっているからには、うまい仕掛けが必要なのです。 囚人のジレンマと協力の進化 協力行動の本質的な特徴を理論的に分析するために、研究者はしばしば「囚人のジレンマ」というシンプルな枠組みを考えます。これは2人の共犯者が捕まってしまい、それぞ
深海や地底は、光合成生物が誕生する前の地球環境に似ているといわれている。そうした極限環境に住む微生物の活動について研究し、生命の起源や地球初期生命の謎に迫っているのが、東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻 鈴木庸平准教授だ。これまでに、1億年前に形成された海底下深部の溶岩から微生物の細胞を発見したり、メタンをエネルギー源とする微生物生態系が地底に存在していることを明らかにしたりなど、さまざまな成果を残してきた。 一方で、鈴木准教授は、academistのクラウドファンデングにおいて、放射性粒子やPM2.5といった有害な粒子を炭酸カルシウムで包み込んで無害化する技術の研究に対して支援を募っている。将来的には、福島第一原発周辺の帰還困難区域をはじめとする放射能汚染環境の浄化に取り組んでいく考えだ。 極限環境の微生物と放射能問題——一見あまり関係なさそうにも思えるが、実はそこにはつなが
窓の開いた部屋は、開いた系 エアコンを使い始めた季節に、部屋の窓をうっかり開けたまま過ごし、思ったほどの心地よさが得られなかった経験はありませんか? これは、外界とのあいだで空気をやりとりしてしまい、室温の調節が効かなくなってしまうためです。物理学の世界では、「窓の開いた部屋」と「窓の閉じた部屋」の概念を抽象化して、外部との相互作用を通じてエネルギーや粒子が流出入するものを「開いた系」、逆に完全に遮断されたものを「閉じた系」と呼んでいます。 閉じた系と開いた系の違いが顕著に現れるのが、長時間経過した後の「定常状態」です。このことを理解するために、先ほど述べた部屋の温度について考えてみましょう。窓を「閉じた」系では、周りから遮断されることで、エアコンの効いた快適な時間を過ごすことができます。一方で、窓を「開いた」系にしてしまえば、熱や空気が流れ、やがて屋外と変わらない環境になってしまいます。
複雑な運動をするときの脳とは? 料理番組を観てプロの料理人の流れるような手際の良さに驚いたり、一流の音楽家の演奏を聴いて、なんでこんなに長くて難しい曲を間違えずに演奏できるんだろう? と不思議に思ったりしたことは、誰でも一度くらいはありますよね。このようなことを可能にしている脳の情報処理の仕組みのひとつとして提案されているのが、「階層的情報表現」です。 長くて複雑な運動でも、単純な部分の組合せに分割することを繰り返すことで、効率良く覚えたり実行できたりするようになります(もちろん練習も必要ですが)。 今回、私たちは機能的磁気共鳴画像法(fMRI)と呼ばれる非侵襲脳イメージング手法を用いて、ヒトの脳が階層的に運動情報を表現する様子を可視化することに成功しました。 系列運動の階層的運動情報表現 A: 学習前は系列中のすべての要素運動(図中x印)を意識的に選択・実行する必要があるため、認知的負荷
原子の物理的・化学的な性質は元素によってさまざまに変化しますが、完全にばらばらなわけではなく、原子番号(原子核に含まれる陽子の数)に従ってある一定の周期で変化することが知られています。この周期に沿って元素を並べたものが「元素周期表」で、1869年にロシアの化学者、ドミトリ・メンデレーエフにより提案されて以来、元素の性質を予測したり、未発見の元素を探索したりするのに大きな役割を果たしてきました。 2016年には、理化学研究所により原子番号113の「ニホニウム」が合成され、日本初の新元素発見として大きなニュースになりました。現在では118種類もの元素が表の中に並び、今もなお新しい元素を発見する試みが続けられています。2019年は、この「元素周期表」の発見から150周年の記念すべき年にあたり、UNESCOにより「国際周期表年(IYPT2019)」として宣言されました。 このように、自然科学の発展
大塚美穂 2016年の離婚件数がおよそ21万組にものぼるなか、親の離婚を経験する子どもが多くいます。子の権利・福祉の観点から面会交流の取り決めが推奨されていますが、多くの場合、その取り決めは行われていません。理由のひとつとして、子どもが同居親の思いと病的に同一化し別居親を拒絶する「片親疎外症候群」が提唱されていますが、この概念に対する実証的な研究は進んでおらず、子どもに必要な支援の提供までは至っていないのが現状です。今回のプロジェクトでは実証的な研究の第一歩として、片親疎外症候群の程度を把握するアセスメントツールの作成を目指します! 同居親の思いと病的に同一化し、別居親を拒絶してしまう子どもたち 厚生労働省『平成30年 我が国の人口動態』によると平成28年(2016年)の離婚件数は21万6798組で、離婚件数及び離婚率は平成14年(2002年)以降減少傾向にあります。このうち、12万654
表情研究における「普遍的な表情」への疑問 表情は他者とコミュニケーションをはかるうえで重要な社会的信号です。感情と表情に関する研究をいち早く行ったエクマン博士のグループは、西洋文化圏から隔絶された文化圏の人々が、西洋文化圏の人の表出する表情の意図を読み取ることができること、そして彼らの表出する表情もまた西洋文化圏で表出される表情と共通であることを見出すなど、多様な文化における表情研究に基づいて、基本的な6つの感情(怒り・嫌悪・恐怖・喜び・悲しみ・驚き)を表す普遍的な表情があるという理論を提案しました。 この理論は世界的に普及し、多くの表情研究がそのような普遍的な表情があることを前提として行われています。また、エクマン博士がモデルとなった米国テレビドラマ『ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間』などをとおして、一般的にも広く知られるようになりました。 しかし、その後に行われた表情表出を実証的に調べた研究
子供観の変化 少子化の現代に暮らす私たちにとって、おそらく、子供はかわいく大切な存在です。ですが、もっと昔、たとえば江戸時代に、子供は社会のなかでどのような存在だったのでしょうか? 現代と同じく大切にされ十分な教育を与えられていたのか、それとも「小さな大人」とみなされて労働などでこき使われていたのか。こうした「子供観」は時代や地域によって変化します。昔の子供観を復元するうえで、歴史学や考古学は大きな役割を果たしてきました。 歴史学や考古学の成果によって、江戸時代の前半、17世紀から18世紀にかけて、庶民の子供観に変化があったことが明らかにされています。経済が安定し文化が成熟したことで、相続をともなう家意識が庶民にも広まり、子供の教育や健全な発達により細やかな注意が向けられるようになりました。その結果、18世紀以降には、たくさんの育児書が広く庶民に向けて出版されるようになりました。また、家意
遺跡からは、数百年からときには数百万年もの長い時間を経た、さまざまなモノが発掘されます。そうした昔のモノには、DNAやタンパク質などの古代分子が意外にも残っていることが、最近の研究によって明らかにされつつあります。ここで紹介するのは、最先端の分析によってどこまで微量の古代分子を検出できるか、という限界を押し広げた研究事例です。生後2週間で死亡した1000年以上昔の仔犬の骨から、驚くべきことに、死亡直前に摂取した母犬の乳に由来すると考えられるタンパク質が検出できたのです。 イメージ画像(東京都文京区の牛天神・北野神社にて撮影) 古代分子の研究の発展 遺跡から発掘された昔のもの(遺物)を最先端の手法で分析することによって、当時生きていた人びとのことやその生活環境を明らかにできます。近年そうした研究が大きく発展しています。古代ゲノミクスはそうした発展の最たるものでしょう。古人骨から解読されたゲノ
近年注目を集める「分子ナノカーボン科学」 グラフェンやカーボンナノチューブなどのナノメートルサイズの周期性をもつ炭素物質は「ナノカーボン」と呼ばれ、軽量で高機能な次世代材料として期待されている物質です。構造によって電子的・機械的性質に大きな違いがあるため、望みの性質をもつナノカーボン構造のみを狙って精密に合成する方法が求められています。 そのなかで、ナノカーボンの部分構造をもつ分子を有機合成によって精密に合成する「分子ナノカーボン科学」が近年注目され、世界中で研究されています。これまでに、フラーレン、グラフェン、カーボンナノチューブの部分構造となる分子(分子ナノカーボン)が多く合成されてきました。 代表的なナノカーボン3種類(上)およびそれらの部分構造をもつ分子(下) たとえば、カーボンナノチューブを輪切りにした構造の分子であるカーボンナノリングやカーボンナノベルトは、1930年代から理論
日向坂46と絶対音感 今年リリースされた日向坂46の『ドレミソラシド』という曲が、絶対音感を持つ人のあいだで話題になっています。「ド、レ、ミ」という歌詞なのに、メロディーの音高が「ミ♭、ファ、ソ」なので、合っていなくて気持ち悪いというのです。こんなことにすぐに気付いてしまう彼らの脳の仕組みは、いったいどうなっているのでしょう? 絶対音感は、“参照音がなくても音高(ピッチ)の音名を答えられる能力”と定義されています。「ド」などの基準音を先に聞いてから次の音の音名を答えるのは、音高を“相対的”に判断するので、相対音感です。それに対して、自らの長期記憶を使い、基準音を参照することなく “絶対的”に音高を同定するのが、絶対音感です。 研究で、絶対音感があるかどうかを調べるには、相対音感を使えないようにするために、音階のようなわかりやすい順番ではなくでたらめに音を聞かせて、音名を答えてもらいます。そ
賞の健康効果 「芥川賞を受賞すると、受賞しなかった候補者に比べて、余命が1.7年延びる。一方で、直木賞を受賞すると余命が5.3年縮まる」 私たちの研究チーム(佐々木周作・京都大学大学院特定講師、黒川博文・兵庫県立大学講師、大竹文雄・大阪大学大学院教授)は、そんな研究成果をJournal of the Japanese and International Economiesという経済学系の英文学術雑誌に発表しました。この研究は、学会で初期的な分析結果を報告していたころから注目を集め、朝日新聞・日本経済新聞などの全国メディアで取り上げられました。 SNSでも、専門内外のたくさんの方々に話題にしてもらいました。おもしろい研究だ、という声が上がる一方で、どうしてこういう研究が必要なのか理解できない、という声もありました。かくいう私自身、全国紙に記事が掲載されることを両親に報告した際、記事を見た両親
生活に大きく影響する長周期気候変動 地球の気候はさまざまな周期で変動しています。特に、太平洋においては数十年規模の周期で自然に変動する太平洋十年規模変動などが知られています。太平洋十年規模変動は海流や気圧などさまざまな要素が複雑に影響しているのですが、そのメカニズムはよくわかっていません。そのため、地球温暖化によってどのように変動特性が変化するかを理解することはとても重要です。また、北西太平洋は世界でも有数の豊かな漁場ですが、その漁業資源は太平洋十年規模変動などの気候変動に応答して大きく変動することが知られており、水産資源の変動メカニズムの理解と持続的な資源利用という観点からも重要です。しかし、観測機器による気温などの環境記録は古くても1850年代以降に限られており、さらに海洋の観測データは1950年以降に限られているという問題があります。 観測記録の無い時代の環境を調べる方法として、環境
川に潜って生きものを見る 水中メガネをつけて川に潜ると、地上からは見えない生きものたちのさまざまな営みを見ることができます。人影に驚いて大きな岩の隙間に我先に隠れようとするウグイの群れ、コツコツと音をたてながら石の表面の小さな虫をついばむムギツク、浅瀬で喧嘩する今年生まれの小さなカワヨシノボリたち。 魚たちの営みは夜になっても続きます。川底をライトで照らすと昼間は砂の中に隠れていたカマツカが川底でジッとしている横を、アカザが数匹ひょろひょろと通り過ぎ、少し視点を移すと1m近いオオサンショウウオが隠れ家から身を乗り出して獲物が来るのを待ち構えています。 冬の川では魚はほとんど動きませんが、たくさんの水生昆虫たちが活動しています。急な流れの岩の表面では、アミメカワゲラの一種がブユの幼虫に襲いかかり、ブユの幼虫はお尻の吸盤を岩からはなし、岩にくっつけた糸にぶら下がることで難を逃れます。岸近くの浅
現在は過去の上に 我々が生きる現在・未来は、過去の出来事を礎に成り立っています。壊滅したアイヌ文化のその先を見ることができぬように、絶滅したニホンオオカミの生態を二度と観ることができぬように、過去は現在を縛る枷といえるでしょう。 海外に留学中の身の上である私が、未だに靴を履いたまま他所の家に上がるのに抵抗を覚るのも、わざわざ日本から持ち込んだ愛用の電気機器を許容電圧の確認もせずに使用して爆発させたりするのも、これまでに経た過去の経験や環境を私が今も引きずって生きているからといえます。 我々の生きるこの世界を意識して見渡せば、人類の社会構造のほか、生きものや自然環境、いうなればこの世界そのものが、すべて過去の上に現在の姿を見せていることに気づくはずです。 過去は森林の底に もちろん森林の生態系もその例に漏れません。たとえば、一見手付かずに見える日本の森林も、そのほとんどが長い歴史のなかで、我
分析哲学という分野をご存知だろうか。アメリカやイギリスなどの英米圏では、哲学といえば分析哲学のことを指すほどメジャーな分野になっている。日本でも研究が盛んに行われており、3年前には若い世代の研究者が中心となり「分析哲学と文化をつなぐ」をコンセプトとした『フィルカル』という雑誌も創刊された。編集長を務める長田怜氏に、分析哲学とは一般的に思い浮かべる哲学とはどのように違うのか、『フィルカル』とはどのような雑誌なのか、お話を伺った。 分析哲学ってどんな学問? ——まずはじめに分析哲学とはどんな分野か、他の哲学との違いについて教えてください。 おそらく、日本人が思い描く哲学者のイメージというのはドイツやフランスの「大陸哲学」の哲学者だと思います。ハイデガーやデリダなどの大家の哲学者がたくさんいて、彼らが主張していることを丹念に読み解くのが哲学であるというイメージを抱いている方は多いのではないでしょ
クチバシってどんな動物が持っているどんな器官? クチバシとは、固い角質の鞘(さや)で口の骨を覆っている器官です。現生動物ではトリとカメがクチバシを持っており、摂食に使用しているほか、人間の手のように物を掴んだり毛繕いしたりすることに使っています。また、クチバシにはさまざまな形態があり、それに応じて機能も多岐に渡っているため、クチバシを持つ動物の食性や行動生態を考察する際に、クチバシの形態や機能に注目することは非常に重要です。 そしてこのクチバシ、実は現生動物だけではなく、トリケラトプス(恐竜)やプテラノドン(翼竜)など一部の絶滅動物も持っていたと考えられています。絶滅動物にとってもクチバシは非常に重要な器官であったことが予想されるため、彼らの生活の様子を復元するためには、彼らのクチバシの形態と機能を正しく把握することが必要です。 しかし、化石になる過程で角質は分解されてなくなってしまうこと
「人工細胞」とは? – 細胞を”丸ごと”再構築する合成生物学の挑戦 合成生物学は、遺伝子や分子を人工的に組み合わせることで、生物システムを再構築し理解しようとする学問分野です。合成生物学では、生物システムをデザイン、操作、作製することを目的としています。なかでも、細胞を丸ごと人工的に組み立てようとする「人工細胞」の研究が、今世界的に進められており、日本の研究者はその大きなフラッグシップのひとつとして頑張っています。 なぜ人工細胞を作るのか? という質問をよく聞かれますが、その答え(学術的な意義)は、生命がシステムとして成立する仕組みや条件を完全に理解するためです。生物は非生物である分子や遺伝情報を組み合わせてできているので、何がどれくらい必要かがわかれば、理論的には人間が生物を作ることができるわけです。 もちろん、最初からヒト細胞のような高度な細胞は作れません。作れるのは、きっとラボの中の
物質の分解と組立 子供のとき、ドライバーを手に、時計をバラバラにして壊してしまい親に叱られた、そんな経験をお持ちの方も多いと思います。しかし、大人である我々も同じことをやっています。物質を細かく分解していったら最後は何になるんだろう? という疑問を、人類は紀元前の遥か昔から追い求めてきました。 やがて原子という単位に至り、20世紀に入ると、その原子が電子と原子核から構成されていることを知ります。さらに、原子核は陽子と中性子の集合体であり、その陽子と中性子もクォークとグルーオンが結合したものだと考えられています。そして、物質を細かく分解することで、それまで知られていなかった自然法則を発見し、新しい理論を構築してきました。 親はなぜ時計を分解した子供を叱るのでしょう? それは、バラバラにした部品から時計を組み立てて再び動かすことが難しいからです。発見した物理の法則・理論に従って、クォーク・グル
屋久島でニホンザルの生態調査を行っているグループ「ヤクザル調査隊」が、academistのクラウドファンディングで調査費用を募っている。 ヤクザル調査隊は、1989年に数十人の研究者によって結成された。それから30年間、多数のボランティア調査員の協力を得ながら、屋久島にすむニホンザルの生態や自然環境の移り変わりを調査することで、ニホンザルの社会が長期にわたってどのように変動しているのか、世界的にも貴重なデータが蓄積されつつあるという。 ヤクザル調査隊の調査では、電気・ガス・水道のない屋久島の山の上で、数十人が1週間以上キャンプをしながら生活し、そこに生息しているサルの追跡を行う。今回は、こうしたフィールドワークを実施する意義について、ゴリラ研究の第一人者であり、かつてヤクザル調査隊の一員でもあった京都大学 山極寿一総長に聞いた。 【関連記事】大学というジャングルでフィールドワークをするため
佐野岳人 理化学研究所・数理創造プログラム (iTHEMS) 基礎科学特別研究員。トポロジー専門。22歳で東京大学理学部数学科を卒業し、その後9年間ソフトウェアエンジニアとして民間企業で勤務。31歳にして再び数学を志すため、東京大学大学院・理科学研究科修士課程に進学。3年かけて修士課程を修了し、続けて同研究科の博士課程に進学。37歳で博士号(数理科学)取得。数学が与えてくれる喜びを、できるだけ多くの人と共有したいと願っています。(2022年4月更新) 三角形と四角形は同じもの? 「トポロジー」という数学 「トポロジー」は数学の一分野で「柔らかい幾何学」と呼ばれることもあります。小学校や中学校では三角形と四角形は異なるものとして扱いますが、トポロジーではこれらを「同じもの」とみなします。対象の図形をグニャグニャと動かして移し合えるものは同じということにするのです。 奇妙に感じられるでしょうか
音の見える化 これまでの音の評価は、主として1本の無指向性マイクロホンを備えたサウンドレベルメーターを用いて行われてきました。サウンドレベルメーターは、その環境の音の強さを計測できますが、その音がどの方向からどのくらいの強さでやって来るかを測ることはできません。環境騒音の対策として音を遮蔽したり吸収させたりする方法がありますが、サウンドレベルメーターを用いる音の評価では、どこにそれらの対策を施せば良いかわからないため、効率的な騒音対策が行えませんでした。 また、これまでにも音源の方向を可視化するシステムはありましたが、非常に高価で、マイクロホンアレーなどの多数のマイクロホンが必要なため大規模であり、可視化範囲も180度程度と狭いなどの理由から、日常的に現場で使えるシステムではありませんでした。そのため、簡易に安価で360度全方向にある音源の方向を可視化できるシステムが求められていました。特
【研究キャリアの生かし方 #5】「アカデミアと民間企業を行き来するキャリアがあってもいい」 – 情報通信研究機構研究員・湯村翼氏 今回、連載「研究キャリアの生かし方」に登場していただく方は、情報通信研究機構(NICT)北陸StarBED技術センターおよび北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)で研究員として働く湯村翼さんです。 湯村さんは、宇宙プラズマ物理の研究で博士前期課程を修了後、新卒採用で東芝に入社。その後、民間企業で働きながらJAISTの博士後期課程(社会人コース)に進学して研究を進めてきました。複数回の転職や独立、起業も経験され、現在は多様なキャリア経験を生かしつつ、無線ネットワークエミュレーションの研究に取り組んでいます。今回は、湯村さんのこれまでのキャリアと現在の研究内容、専門を変えていくことのメリット・デメリットなどについて伺いました。 湯村翼氏プロフィール 情報科学研究者
インタビュー前編では、東京大学・仁平典宏准教授がボランティア言説の歴史を研究するにいたった経緯と明治から戦中までのボランティア言説の歴史についてお聞きした。続く後編ではさらに戦後から現在までのボランティア言説の変化をお聞きする。最後には、ボランティアと似た境遇にある寄付行為、さらにはクラウドファンディングという仕組みへの期待についてもお話を伺った。 【インタビュー前編はこちら】「冷笑的な私」はどこから?ボランティアの歴史からたどる ー 東京大学・仁平典宏准教授【前編】 戦後、ボランティアはどう語られてきたか ——前編では、明治に誕生した「ボランティア」言説の系譜を第二次世界大戦中までお話いただきました。続けて戦後の歴史についてもお聞きしたいです。 戦後はしばらくのあいだ、戦争という究極のマイナス(反贈与)にいたった戦前への反省が、ボランティア論の中心を占めます。いくら良いことをしているつも
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