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体力トレーニング
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ツイッターのミステリクラスタでも脳が溶ける地雷本として今、話題沸騰の本作、この流行に乗り遅れてはなるまいッ!ということで、ライトノベルなどマッタク読まないボンクラのロートルながら、手に取ってみました。まあ、要するにネタとして買ってみたのですが(爆)、結論からいうと、小説としてはその奇妙奇天烈で「脳細胞がキュンキュン」してしまうような台詞回しを除けば存外にマトモ、――というか、むしろ古くさいフォーマットに則ったその構成と展開はレトロ風味さえ感じさせる一方、作中で開陳されるミステリの技法には光るものがあり、ただの地雷本として貶めるだけでは勿体ないという一冊でありました。 収録作は、「濡れ衣体質」という、そもそも日本語としても何だか座りがよろしくない言葉で表現される奇怪な体質を持った主人公が、その名の通りに変態扱いされてしまったと殴打事件において、「あっはっはー」という脱力の空笑いをしながら、頭
昨日取り上げた竹本健治は現実世界からのずれを巧みに表現できる希有な作家だと思っているのですが、この點に関してはSF、ミステリ作家としての山田正紀もなかなかのものだと思います。以前取り上げた「サイコトパス」そして自分もお氣に入りの「エイダ」といった物語の源流が本作にはあるのではないかなと勝手に考えています。また日本人や歴史といった壯大なテーマと謎を現実の搖らぎの物語に昇華させてしまう手法は大作「ミステリ・オペラ」にも見られると思うのですがどうでしょう。 しかしこの傑作、絶版になっているんですねえ。アマゾンで見ても、單行本文庫本ともに品切れのようで。とりあえず物語の抜粋をアマゾンのサイトから引用すると、 日本人に特異的な右脳と左脳の機能差研究から、無中枢コンピュータを構想する大学助手。彼が父の遺品に石川啄木の未発表小説を発見したとき、我々の脳に刻印されていた禁忌の謎が次第に明らかに…。日本
リレー小説だけれども短編というところがミソで、例えば本格ミステリ寄りにおけるリレー小説の怪作にして傑作である「堕天使殺人事件」などとは違い、やり過ぎでハッチャけたお遊びは皆無。それぞれの作家が持ち味を存分に生かして綺麗にまとめた短編を取りそろえたという一冊ながら、やはりリレーという趣向に目をやって、その連關の技巧を愉しみたいところです。 それぞれのあらすじは敢えて割愛するとして、簡単に「お題」だけを並べておくと、北村氏から引き継いだ法月氏が「猫」、殊能氏が「コウモリ」、鳥飼氏が「芸人」、麻耶氏が「スコッチ」、竹本氏が「蜻蛉」、貫井氏が「飛び石」、歌野氏が「一千万」、トリを飾る辻村嬢が「サクラ」となっています。 「くしゅん」で見せた北村氏の猫ネタが辻村嬢の「さくら日和」で最後に美しき連關を見せるという纏め方がまず秀逸。一方、そうした最初と最後の繋がりとは対照的に、中盤の「コウモリ」から「
傑作。今年リリースされた作品の中では道尾氏の「ラットマン」、そして某御大の「完全恋愛」とともに、「仕掛けによって人間を描いた」現代の本格ミステリとして大いに評価したくなってしまう逸品で、個人的には處女作の「リロ・グラ・シスタ」以上に堪能しました。 しかし今回もジャケ帶に「今、もっともひねくれた新鋭作家」とある通り、緻密な仕掛けと本格ミステリとしての誤導の技法などなど、その全てが大いにひねくれているがゆえ、「ラットマン」や「完全恋愛」ほど世間では支持されず話題にもならないのではないか、という杞憂があるのもまた事實でありまして、このあたりは後述します。 物語は、犯罪實録ものフウに「遠海事件」なる猟奇事件を軸にして、犯人の佐藤誠なる人物の視點からこの事件の犯行を描きつつ、また警察の側からこの事件を追いかけていくパートを交錯させ、途中にはコラムを添えて佐藤の内面に踏み込んでいく、――という結構です
傳博こと島崎御大の訪日が某掲示板にて告知されていて、この情報が業界内だけのオフレコだと思っていたド素人の自分はチと吃驚、――という譯で、今日は、島崎御大の本格ミステリ大賞特別賞受賞と訪日記念、ということで「推理雜誌」281號に掲載された林佛兒御大との対談「推理小説在台湾 ――解嚴二十年後推理小説發展」から、島崎御大の発言を抜粋したものをお送りしたいと思います。 対談の方はタイトルにもある通り、台湾における推理小説の發展について論じたものながら、「幻影城」創刊のいきさつや最近の台湾における日本のミステリの出版状況などについての意見もあり、非常に興味深い内容となっているのですけど、今回は日本のミステリ讀みも関心をもってくれるであろうところを中心に取り上げてみます。結構長いので、數回に分けて、ということで。 推理小説在台湾 ――解嚴二十年後推理小説發展 2007年國家臺灣文學館週末文學對談「臺
傑作。とはいえこれも最近讀了した有栖川氏の最新作「女王国の城」と同様、閉鎖状況でジャカスカ人が死んでいくところはどうにもノれず、何度も溜息をつきながら讀み進めていったのですけど、主人公のどうにも冴えないボーイが探偵となって推理を開陳してからの展開が素晴らしすぎます。 高額の譯ありバイトにつられて集まった連中が、その名も暗鬼館なんてミステリマニアの心をくすぐる名前の館の地下室に押し込められて殺人ゲームを敢行、というトンデモな物語で、それぞれの個室のおもちゃ箱に入っているメモにはさりげなく名作のタイトルが添えられていたり、マニアにはお馴染みの「十戒」も見せてと本格原理主義者に對して「どうです?どうです?」とアピールしてみせる風格に、何だか米澤らしくないなア、なんて感じて讀み進めていくと最後にはスッカリ騙されてしまいます。 とはいえ自分は、このおもちゃ箱のメモに添えられている名作のあることや、或
「CRITICA」第二号をようやく手に入れて讀むことが出来ましたよ。今回は創刊号を遙かに凌ぐ充実ぶりで、巻頭の第一特集「続・第三の波の帰趨をめぐって」からしてもう、こちらの期待通りというかそれ以上というか、本格理解「派系」作家の宿敵でありまた天敵でもある千街、千野両氏の言葉の激しさにタジタジとなってしまいます。 個人的には第二特集である横溝正史論を期待して購入したのですけど、何だかヘタをすると千街氏の激烈に過ぎる一編「崩壊後の風景をめぐる四つの断章」を取り上げるだけでもかなりの長文になってしまいそうなので、とりあえず今日はこれだけを紹介してみたいと思います。 タイトルに断章とある通り、何か一貫した主張を持ってアジテートするという形式ではなく、その内容を簡単に纏めてしまえば、本格理解「派系」作家の首領を批判するとともにつずみ綾嬢の「教養貴族」ぶりを晒しあげ、最後に件の「X騒動」における評論家
これ、自分は文藝別册のKAWADE夢ブックとして最近リリースされた半村良のアレみたいなものだと思っていましたよ。内容の方は相當に充実した一册で、單行本未收録作品として小説を七編、さらには遺稿「怨」、詩「棘」を冒頭に配し、三浦しをん女史と本多正一氏との妄想對談や、戸川、東両氏の特別對談など、中井英夫の信奉者であればマストといえる内容に仕上がっています。 収録されている小説はいずれも掌編といえるものながら、個人的にツボだったのは、バカミスにしてエロミスとでもいうべき「人魚姫」で、作品解題に本多氏曰く「モチーフもトリック(?)もいまひとつと云わざるを得ない」とありながら、自分のようなキワモノマニアにとってはまさに珠玉の一編とでもいうべきハジケっぷり。 女學院を舞台に、學内ではお姫樣のような扱いを受けている女生徒が近くの農家の娘っ子を部屋に呼びこんでは、夜毎エロいことをしているという噂をききつけた
Filed under: 雜誌, 台湾ミステリ, 台湾ミステリ情報 — taipeimonochrome @ 10:00 「Mystery」に續いて新たに創刊された「謎詭」は、ジャケに「台灣第一本絶對不能錯過的日本推理情報誌」とある通り、日本のミステリの情報をドシドシ提供していこうというコンセプトです。 創刊號となる本作、とにかく内容が盛り沢山で、藍霄氏がミステリー文学賞の授賞式に参加した時のレポートや宮部みゆき氏訪談後記、さらには宮部氏の特集では樣々な豆知識をズラリと並べてみせるという宮部みゆき氏の大特集が目をひきます。また日本の樣々なミステリ賞の解説から、推理ドラマ(古畑任三郎など)、漫画(「月館の殺人」も)も含めて、當に日本、日本、日本づくしの一册といえるでしょう。 その中で、もっとも頁数がさかれているのが「「好看」、「必看」の日本推理六十作」と題して、日本のミステリの中から「好看(
ジャケ帶の惹句は「たたみかける恐怖、仕掛けられた伏線の数々。三津田マジック、ここにあり!」。確かに伏線もあって、マジックもあるのですけど、この眞相が何というか「十三の呪 死相学探偵」にも通じるような、脱力を誘うこじつけぶりでありまして、これがまた自分のようなキワモノマニアにはタマりません。 物語はおマセな小学生の一家がとある家に越してくるや、奇妙なことが起こり始めて、――という家ものホラーの定番を忠実にトレースした結構ながら、まずもって主人公である小学生ボーイのおマセぶりが明らかに異常。冒頭、東京駅から新幹線に乗り込んだボーイがひとりごつ台詞が、 未知なる地に向かって、自分は進んでいる――。 四年生にして末は詩人が哲学者か、とでもいわんばかりの大人っぽい件のボーイはいわゆる「見える」人で、件の家に入るやイヤーな雰囲気をビンビンに感じるものの、その正体が判然としない。そんな中、ボーイの妹はそ
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