好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天井に蛇を吊して、いま私を殺したように立派な仕事をして……(夜長姫と耳男より) まっすぐ家に帰りたくない夜が、ときどきある。 何か帰りたくない明確な理由があるわけではない。帰ってみても、誰もいない。わずらわしいものなどいないのに、何となくまっすぐ帰りたくない夜がある。 夜がそうさせるのだろうか。普段忘れようとしている心の底の深い部分を、夜が闇と共に沸き起こすのだろうか。忘れたいことや、考えたくないことがありすぎて、だからこそ忙しく何かしていたいのだが、それでも隙を見つけ奴等はわさわさと目を覚まし、不安と悲しみと怒りを思い出させる。 まっすぐに家に帰りたくなかったある夜に、鬱屈とした気分で私はいつもと違う駅で降りて、ある本屋に向かった。駅前にあるショ